第15話
なんで………
俺は最初にこの一言が出てしまった。
だってそれは、この世界のどんな人間も魔力を持ち合わせているのに……
俺だけ魔力を持っていない?新たな世界で生きようと思った俺にまた、苦難がのしかかるのか?
「う、嘘だろ?もう一回よーく見てみろよ。微弱ながら魔力が………」
「無い。無いんだよ、君には。本当に。」
寂しく、呟くように俺に話をした。
「魔術に関しては知らなそうだから詳しく言わせてもらう。魔力はこの世界の必須能力と言ってもいい。家がない時、食い物がない時、死にかけた時。これら全ては魔術を使い次第どうにでもできるんだ。もちろん誰もがという訳では無い。」
「じゃ、じゃあ別に終わった訳じゃないのか?」
マキは溜め息をついた。その溜め息には呆れる溜め息というよりも、哀れんでいるようだった。
「魔術はこの世界の基礎教養でもあるの。最低でも1つの魔術は覚える。それは、劫炎焔って言うの。」
「何だ、その劫炎焔?ってやつは。」
俺は何故か急いでいるような怒っているような口調で問い詰めるように聞いた。
「魔術を習得する上で一番基礎になるものなんだ。 そして、世界で一番使われている魔法と言われている。」
「なんでだ。」
「それは劫炎焔の効果が関係してるんだが、まあ簡単に言うと劫炎焔は火の属性なんだ。火は私生活の中で一番使うものだからな。」
少しの沈黙が生まれ、その後
「君は劫炎焔が使えるか?」
と質問が来たが、俺は答えることはなく下を向き、立ち尽くしていた。
「使えないだろう?だから君には魔力がないんだ。」
「…いや……でも………」
何も言うことは出来ない。俺は現実を突きつけられて必死に現実から逃れようとしている。
「君は僕の後ろについていてくれ。このまま上に出る。君には死んでもらいたくない。まだ、君には話したいことが沢山あるんだ。」
また沈黙が生まれ、マキは無言で壁を掘り始めた。