第13話
彼女はこちらを向くことなく、ただ淡々と先を進んでいき、
「何でこんな所に突っ込んできたの?」
突然の質問に動揺を少し隠しつつ俺は答えた。
「ん?ああ、そうだなぁ。突っ込んできたって言うよりかは助けに来たって感じだな。」
「あら、あなたも反逆軍だと思ってたのに。ちょっとガッカリしちゃった。」
連合軍?なんだそれは。まあ、そうなるのも無理はないだろう。俺はまだここに来て一週間も経っていないんだから。
「反逆軍って何の?」
「そりゃあもちろん。マクベスのよ。それ以外何があるのよ。」
しまった。俺は旅人でこの街の住人ではない。旅人ってことがばれたら、もう一貫の終わりだ。
これ以上のリスクは欲しくはない。空気のような存在感でなければリスクは増大待ったナシだ。
「あ、ああ。そうだったな。俺、あんましそういうの詳しくねぇんだ。」
「ふぅーん。そうなんだ。」
「ああ、そうさ。」
はっきりしない返しをしたら彼女はまた前を向き、進んでいく。
廊下にはカーペットが敷かれており、一定間隔にランプが置かれているだけ。所々に壺や花瓶、絵が飾られてあって、唯一の飾り気だ。
ただ、ひとつ気にかかることがあって。
この廊下にはドアは無いので、同じような光景がずっと続いている。
なんだか、自分の思っていることが的中しそうで怖くなってきて、助け舟を求めるように彼女にはなしかける。
「なあ、俺たちずっと同じ道進んでないか?」
「そんな訳…な………い……あれ?」
「ど、どうかしたのか?」
「同じ道進んでるわよね。どう考えても。」
やっぱり。助け舟ではなく、同意が来てしまったからさあ大変。
ここには2人しかいなくて、その2人とも同じことを述べている以上、同じ道を進んでいるという事の可能性が高い。
ということは
「俺たちどこを走ってるんだ?もしかして、迷った?」
「いや、そんなわけないわよ。」
なんか小声で多分って聞こえたけど聞き間違いだよな。
もうこれ以上走ってもしょうがないので、俺と彼女は立ち止まった。
「俺たちどうすればいいんだ?」
「と、とりあえず、自己紹介しましょ。」
いやいや、動揺が丸見え。というかもう自分が何言っているか分かってないだろ。
「ワタシノ名前はユニバス・マキナ。マキって呼んで!」
なんかもう片言が入ってたりして、ここまで来ると俺も少し不安になってしまう。
まあ、一応相手に合わせて
「俺は坂崎亮太。リョウタでいい。」
簡単に自己紹介を済ますとマキはなんだか、ソワソワしていて落ち着きがなかった。
「なあ、一旦落ち着こうぜ。」
「落ち着いてるわよ!落ち着いて……る。」
やばい。そろそろしっかり落ち着かせないと、もしかしたら俺の頭を潰したいとか言い出すかもしれない。あいつの力だったら出来るからな。
そんなことになったらマリアを助けるも何もないので、俺はマキの肩をがっしり掴んで
「落ち着くんだ!息をしっかり吸って、しっかり吐いて!」
俺が少し声を張って言い聞かせると、最初はビクッとしていたが、俺の言うとおりに深呼吸をし始めた。深呼吸の度に服が動いて、何かが見えそうになったりしているのを見れなくなるのは残念だが。
やがて、落ち着いてさっき見た時と同じような余裕を見せてくれた。
「さて、どうしたもんかなぁ。」
「そうわねぇ。どうしようかしら。」
数十秒経ってから俺は妙案を思いついた。