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漆黒騎士の異世界召喚  作者: 岸本組
4/4

ダンジョン

 異世界召喚された勇者である高木裕也は漆黒騎士との実力の差を思い知った。いや、正確には漆黒騎士は実力のほんの一部すら見せていない。しかし、差がありすぎることだけは確かな事実だった。


「高木裕也君、君はまだまだ強くなれるはずだ。頑張りたまえ。これは参加賞だ」


 と言い、黒い片手剣を投げた。高木裕也の目の前の地面にその剣は刺さる。その剣は、とくに豪華な装飾はされていないが、たしかな存在感があった。


「ブラック・レイヴンズ、伝説級(レジェンド)武器ではないが、そこそこ役に立つだろう」

「あ、ありがとうございます」


 恐る恐る高木裕也はその片手剣を地面から抜き、持つとすぐさまそのステータスの高さに驚いた。


「いいんですか⁉︎こんな凄い剣もらってしまって」

「構わない、好きに使ってくれ。では、そろそろ私は行く。もし次に会うことがあったら、強くなったところを見せてくれたまえ」

「は、はい!先程は失礼なことを言ってしまいすいませんでした。次会う機会までに僕も精一杯頑張って強くなっておきます!」

「わ、私もすいませんでした。失礼を言ってしまい」


 水木由奈も頭を下げる。その顔は恐怖に染まっており、恐る恐るな態度だったが敵意はもう無かった。

 次元の違う強さには、敵意すら抱けないのかもしれない。


 エーミル・ルーデは、ただ放心していた。彼女は自らの力を過信していたわけではないが、勇者一行の仲間として、ある程度の誇りを持っていた。世界を救うのだという信念を持っていた。しかし、漆黒騎士を見て揺らいでしまったのだ。疑問を持ってしまったのだ。「本当に魔王を倒せるのか」と。

 彼女が立ち直るのに、果たしてどれぐらいの時間が必要なのだろうか。しかしそれは漆黒騎士の知るところではない。


「いい、私は気にしていない。最後に忠告しておくが、今の君達では魔王の配下である7魔神にすら足元にも及ばない。最低でもレベルが70を超えない限り、出会っても戦わない方が長生きできるはずだ。ではそろそろ失礼する。エルシュア、行くぞ」

「了解しました、マスター」


 そのままエルシュアを連れ、近くにあった宿屋に入った。あの勇者一行は、あと2か月ほどすればレベル70ほどにはなっているだろう。まあ、レベル100からがレベルが上がりにくくなるんだが。それは俺のやっていたゲームの話であり、こっちでは通用するかは知らない。


 宿屋の店員に二部屋か?と尋ねられたが、エルシュアはまあ部下だし資金もほとんどないので一部屋を二人で使うことにした。ちなみに宿屋の資金はエルシュアの手持ち金から出した。またしてもエルシュアを部下にしたメリットが大きいことがわかった。


「マスター、今日はこれからダンジョンにいくのですか?」

「そうだ。エルシュア、地図は持っているか?」

「ございます」


 エルシュアは机の上に、アイテムストレージから出した地図を広げた。そこには王国を中心とした周辺の国々の地理がのっていた。


「ダンジョンはどのへんだ?」

「この辺です」


 エルシュアは王国から少し離れた森の中を指差した。『カングルムの森』という名前の森のちょうど真ん中らへんにあるようだ。


 とりあえずこのダンジョンで、エルシュアのレベリングと、俺の戦闘感を取り戻すとしよう。


「ゲートでその森の中心近くに移動する。細かい場所は分かるか?」

「もちろんでございます」

「よし、では早速行くぞ。転移門(ゲート)


 黒い空間の歪みが生まれ、すぐにエルシュアと共にその中へと入った。

 一瞬でカングルムの森に移動した後、エルシュアに連れられダンジョンの入口へとたどり着いた。



◇◇◇


「ここがダンジョン『暗闇の洞窟』か。案外入り口は狭いんだな」

「中はだいぶ広くなっておりますので、戦闘での不利はないかと」


 小言のように呟いたつもりだったが、エルシュアはそれに返した。


「まあとりあえず入ってみるとするか」


 ダンジョンの入り口を潜り、少し奥に行くと二人の兵士がいた。そこは関所のようになっており、どうやらここで冒険者カードを見せ奥に行くらしい。関所には灯りがあり、その奥からは暗闇が広がっている。


「ほい、お二人さんね。冒険者カードはあるかい?」

「こちらに」


 エルシュアが自分と私の分の冒険者カードを見せた。そのカードをみた兵士の一人は漆黒騎士の圧倒的存在感を気にせず、馬鹿にしたように鼻で笑う。どうやら漆黒騎士のことを、装備だけ一級品のぼんぼんだと思い込んでいるようだ。


「へー、新米さんか。まあ1階層だったら死ぬことはないと思うから、せいぜい頑張りな」

「あなた、死にたいのですか?マスターに」


 いかにも殺しそうな勢いのエルシュアの肩を掴み止める。

 でも、と言いたげなエルシュアだったが、やがて諦め顔を伏せた。

 時間の無駄は省くべきだ。こんなところで油を売っていては、ダンジョン攻略にかける時間が減ってしまう。


「ご忠告、感謝する」


 漆黒騎士は心にもない言葉を言い、兵士の顔を見すらせず横を通り抜けた。その時、兵士二人はガチガチと身震いをする。

 寒気と言うにはあまりにもヌルすぎるそれは、兵士二人の顔を真っ青にさせた。


 その時、一方通行だったダンジョンの奥へと向かう入り口から、半径2メートルもありそうな太い一匹の大蛇が向かって来た。ドガガガと巨体を地面に擦らせ大きな音を立てながら、あまり広くない道を狭そうにやってくる。


 道は一方通行、逃げるか倒すしか術は無い。


「な、なんでこんなところにホラースネークが⁉︎こいつは10階層のモンスターのはず……」

「そもそも、入り口にモンスターなんてほとんどがこないんだぞ……くっそ、こんなことならダンジョン入り口での仕事なんて引き受けるんじゃなかった。新米も逃げた方がいいぞ!」


 兵士が二人とも死にものぐるいで逃げようとした途端、ホラースネークが鳴らす地面の音が消えた。

 なんで?と兵士二人は後ろを振り向いた。


 目の前にあった光景は、異様だった。


 あんなに大きかったホラースネークが、縦に一刀両断されていたのだ。一体どうやったのかは兵士には分からなかったが、これを漆黒騎士がやったことだけは理解できた。

 

「この死体は君たちが掃除でもしておいてくれ」


 漆黒騎士は兵士にそう言った後、ホラースネークの体内に腕を突っ込みコアである魔石を取り出した後、エルシュアと呼ばれていた金髪の美女を連れダンジョンの奥へと消えていった。


「は、はは……ホラースネークを一刀両断かよ。なにが新米だ。こんなこと、S級でもないとできない芸当だぞ…」

「あ、ああ。俺たちはどうやら、とんでもないやつを相手していたのかもな…」

「未来のS級冒険者か……」


 と漆黒騎士の話題で盛り上がりながら、二人の兵士は巨大なホラースネークの死体を掃除し始めた。



「とりあえず20階層までやってきたが、敵が弱すぎて相手にならんな。生身での戦闘をもっとこなしたいのだが、一撃で死んでしまっては戦いにもならん」


 漆黒騎士はつまらなそうに呟いた。魔剣エクスカリバーを肩にかけてある鞘に入れ、周りを見た。

 そこは大きな空間になっており、漆黒騎士の横には巨大なゴーレムの死体が転がっていた。

 その光景を、小さな光の小球が照らしている。その小さな光球は漆黒騎士とエルシュアの頭上にふわふわ浮いていた。


 下位魔法ー照明ー。これはこの世界の冒険者なら必ず覚えている魔法なのだが、漆黒騎士はそれを使えなかった。ゲームでは使う必要が無かったからだ。ゲームでは暗闇のダンジョンだろうと明るく、ただ周りを明るくするだけの魔法などシステム上でも必要なかった。しかし、現実のダンジョンに潜ってみると、そのただ明るくするだけの魔法が大切なことが分かった。

 現状、エルシュアが照明を使い、漆黒騎士と自らを照らしている。エルシュアの照明は光球が小さいが、広範囲を明るく照らしていた。

 

「エルシュアこのレベルならまだ楽勝か?」

「はい、まだあと15階層以上はいけます」


 20階層で敵のレベル平均は

 

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