10年
プロローグ 冬。
小さい頃から普通に憧れていた。
普通に友達を作って、恋をして。
よく少女漫画で言う、普通の女の子というのに私はなってみたかったのだ。
「清水さん、まだ残っていくの?」
「あ、はい。仕事が残っていて……」
オフィス全体が暗くなっていて、先輩の人が気にかけてくれて。
「あんま無理しないでね」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ、お疲れ~」
「お疲れ様です」
一般企業に入社して。
それなりに仕事もこなしていて。
次のプロジェクトリーダーを任されていて。
きっと今の生活を人は普通というのかもしれない。
そして今、一人。残って仕事をしているのは、何もしないで一人で家にいると、考えてしまいそうだから。
明日ある高校の同窓会のことを。
後悔ばかりが残った高校生活。
本当は行く気がなかったのだが、あの人に何が何でも連れて行くと言われたら、従うしかない。
私は辛い役回りを頼んでしまったのだから。
それでも、私が彼らに会っていいとは思えない。
卒業と同時に姿を消した私をどう思っているのだろうか。
あの日、せっかく話をしてくれていたというのに。
彼も彼女も、そして幼馴染の大切な人も。
私と会いたいと思ってくれているんだろうか。