送別会!
事件から暫くしたある日の事、ヤマさんの定年退職の送別会が開かれ、夜遅くまで宴会は続いた。
招かれた新田と丹。酔い潰れたヤマさんの介抱は他の人に任せて、一足先に帰宅する事に。
夜道を並んで歩く二人。先に口を開いたのは新田の方であった。
「先日はご指導頂き、有難うございました」
ペコリと頭を下げる新田に、丹も心なしか嬉しそうに笑みを浮かべる。
本来であれば未解決事件になり得る今回の完全犯罪。それを犯人逮捕へと漕ぎ着けたのは、丹の力によるものが大きい。
そして丹、自身は最初から犯人逮捕への道筋は見えていた。それをあえて直ぐに示さなかったのは、新米刑事である新田の教育を含めて考察していたからである。
事件が解決し、落ち着いて事件の流れを振り返ってみれば、丹の行動理念を客観的に見ることができる。ああ、それに比べて本当に自身の未熟さが恥ずかしいと、新田は悔しそうに項垂れるのであった。
そんな新田に、丹は熱く正義感を語る。
「ふっ!あの名作ロリアニメ、オジャマンガ㌦美をアリバイ作りに利用した時点で、刑務所入りは免れまい!この丹 貞太がいる限りな!完全犯罪など勧善懲悪に…そう、完全超悪なだけにな!」
双子はオジャマンガ㌦美を穢した。それだけで丹にとっては超悪であり、罰するべき存在。
しかし、丹は双子の気持ちを分からなくもないとも思っていた。
幼少期の双子は、オジャマンガシリーズの記念すべき第1作「オジャマンガ㌣美」をテレビで観たがっていた。それがテレビの無いケチな家庭だった為に、叶わず。
名作である㌣美をリアルタイムで観れなかった哀しさ。丹にもそれは痛い程、よく分かる。でも犯罪は犯罪。罪はちゃんと償い、更生する事を切に願うばかりである。
今回、双子が完全犯罪を崩してしまったのは共犯だったから。もし、実行犯と共犯だと立証出来なければ、犯人逮捕は一郎のみだった筈。
しかし、二郎が共犯として逮捕されたのは犯人のミス…などでは無い。二郎が一郎のみに罪を背負わせたく無いから、敢えて共犯の道を選んだそうな。
丹の推理では、二郎が一郎を売るかも知れないから、一郎が二郎と共犯となる様に仕向けた、と推理。だがそれは間違い。オジャマンガシリーズを愛する二人の絆は、丹の想像を超えるものであった。
オジャマンガシリーズ…何とも素晴らしいアニメである!
新田の呆れ顔などそっちのけで、オジャマンガを熱く語る丹。その言葉が不意に静止した。
二人が歩く夜道の先に、人影が見えたのだ。