2000%!
容疑者の一郎と二郎、その二人の顔写真も再び撮影した。その数、およそ三千枚。
被写体の顔の角度を0.1度でずらしながら撮影できる特殊なカメラ「スベテトレ〜ル」を利用し、容疑者二人の顔を微妙な角度の違いで三千枚づつ撮影。
三時間に渡る監視カメラの映像と容疑者の三千枚の写真。この二つをパソコンにセットして、丹が犯人を追い詰める為の説明を始めた。
「まず、この防犯カメラに映った映像。カメラによって差はあるが、およそ一秒間に7コマの映像がある。映像のブレなども考慮して一秒間を五コマとする。さて問題だ。三時間の防犯カメラの映像、何コマになると思う?」
三時間は百八十分。秒にすれば一万八百。つまり五万四千コマになる。
丹はその五万四千コマの映像と容疑者の三千枚の角度を撮った写真、これを顔認証システム「カオミクラベ〜ル」で照合すると言うのだ。
だが、それに対して新田が反論。
「ちょっと待ってよ!前に一枚の写真で適合率を確認したところ、0.2%の誤差の範囲内だったじゃない!こんなに写真を用意したっていいとこ1%前後の誤差とかでしょ!?数を集めたからって証拠には…」
「おいおい、数の力を舐めるなよ?例え0.2%とは言え一万枚あれば一万倍に…そう、2000%に!」
「いや、それは無いから!」
「冗談だ。本気にされても困る」
「だったら…」
「まあ、黙って結果を見てみるといい。ほら、こうやってセットした画像とそれに合う角度の写真をカオミクラベ〜ルで一斉照合して…五万四千コマの照合が終了。そしてこれが結果だ」
新田の前にあるモニターに、映し出された照合結果は…。
五万四千コマの映像中。
二郎よりも一郎の適合率が高い画像は33480枚で62%。
逆に一郎よりも二郎の適合率が高い画像は18360で34%。
全く同じ適合率は2160枚で4%。
二人の顔写真からの誤差は0.2%だったはず。しかし、五万四千コマもの画像からその僅かばかりの誤差を拡げて考える…それが丹の出した答えだった。
「0.2%だから見分けがつかない…では無く、その0.2%の証拠をどうやって活かすかが鍵なんだよ」