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えぴろーぐ

――エピローグ――




 バレンタインイベントを無事に終え、獅堂謹製のキャンプファイヤーがグラウンドを彩る。

 みんなが楽しげに談笑する姿を、私は一人、石垣の上に座って眺めていた。


「あ、師匠! そんなところに居たんですね!」

「鈴理さん? 夢さんたちと一緒にいなくて良いんですか?」


 鈴理さんは猫又衣装から着替えて、いつもの黒い制服に戻っていた。

 そういえば、猫又衣装、ちゃんと見てあげられなかったなぁ。埋め合わせはまた今度、で良いかな。


「ご機嫌ね、鈴理さん」

「えへへー、なんていったってほら! 日替わり定食三ヶ月分!」

「ふふ、デザート、ではないのですね」

「そりゃあ、そうですよ! デザートは自分で作れば良いんです!」


 そう、なんと今回のイベント、優勝は鈴理さんの所属するチーム紅蓮となった。

 なんでもメアちゃん――ファリーメアが鈴理と一緒にけっこうなポイントを稼いでいて、その上でけっこうな人数を返り討ちにしていた私たちチーム魔女と僅差だったのを、運良く越えることが出来た。

 その運良く、というのが、鈴理さんが胸に抱えるチョコレートの袋だ。あのとき、上空に昇る最中に落としてしまった袋を、契約によって気がついたファリーメアが回収。鈴理さんに渡したのだという。それが切っ掛けで一部の人間が戦意喪失。

 チーム魔女もその流れで多くが討ち取られ、チーム紅蓮の一位が確定したのだという。チーム紅蓮のメンバー全員から胴上げを受けていた鈴理さんの姿が、実に印象的だった。


「あ、そうだ師匠! これ、どうぞ」

「えっと、これは?」

「えへへ、わたしから師匠にチョコレートです!」


 ラッピングを手渡されて、開けてみる。

 中には可愛らしい、☆マークのチョコレートクッキーが入っていた。


「――ありがとう、大切に食べるね」

「はいっ!」


 朗らかに笑う鈴理さんに、笑い返す。

 すると鈴理さんは、頬を赤らめてはにかんだ。その笑顔に何かを言わなければ、なんてガラにも無く焦って。


「鈴理ーっ!」


 行き場の無い感情は、響いた声にあっけなく消される。


「夢ちゃん?」

「……と、水守さんとアリュシカさんと、それからイクセンリュートさんね」


 遠くから歩いてくるのは、何故か水守さんを取り囲むように立つ三人の姿だ。

 いや、水守さんの後に立つイクセンリュートさんも、捕まった側かな? 頭を抱えている。その様子に首を傾げた鈴理さんは、わたしにぺこりと一礼してから四人の元へ走っていった。


「ちょっと鈴理、聞いてよ! あんまり距離詰めると引かれると思ったからじわじわやってたのに、静音、イクセンリュートさんのことはいきなり呼び捨てにしてるのよ!!」

「まったく。シズネ、ほら、リュシーだ。言ってごらん?」

「あわ、あわわ、ええっと、みんなはそ、その、大事な友達だけど、ど、同時に恩人で、そのあのあわわわ」

「私は帰って良いのよね?」

「何言ってるの? 友達の友達は友達でしょう? ほらイクセンリュートさん、友達修羅の鈴理が来たわよ」

「夢ちゃん? へんな渾名をつけないでよ、もう! 静音ちゃんも言って良いんだよ? “夢の変態”って!」

「はっはっはっ、名前呼び出来ない静音がそんなこと言える訳ないでしょ――」

「ゆめのへんたい」

「――ぐはっ」

「やっぱりこれ、私は帰っても良いよね?」

「イクセンリュートさん、ルナちゃんって呼んでも良い?」

「はいはい、良いから帰して」

「みんな、良いって!」

「えっ、みんな? ――ああ、もう、ふふっ、好きにして!」


 わいわいと騒がしく、離れていく五人の姿。

 その背中を手を振って見送ると、不意に、空白の時間が生まれた。


 いつの間にかいなくなっていたファリーメア。

 流石に疲れた表情を隠さなかった時子さん。

 したり顔でバレンタインを満喫した瀬戸先生。

 そんな瀬戸先生を、「チョコレートの件で」と引きずってどこかに消えた獅堂と七。


「ふふっ、もう」


 楽しかった。

 うん、楽しかった。












 手元に残った招待状を見る。

 日時は一週間後。二月半ば。雪の降る季節。


「だめだなぁ、私はまだ、だめだめだよ」


 空を見上げる。

 雲晴れ、美しい月と星が見えていた。

 呼ばれたような気がする。視線を戻すと、獅堂と七に挟まれてげっそりした瀬戸先生。そんな瀬戸先生を笑っている陸奥先生。

 集団の最後尾で、私に手を振ってくれる時子姉を見つけて、手を振り返した。


 今、この時だけは、全て忘れて彼女たちとともに在ろう。

 そのあとには、色々と準備が必要だ。


 だから、ひとまず、頭の片隅に置いておく。

 招待状の日付。二月二十一日。大魔王を退けた日。




 そして、その日は――お父さんとお母さんの、命日だった。










――To Be Continued――


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