そのろく
――6――
ジャックに連れてこられたのは、河のほとりだった。
穏やかに流れる川辺に佇むナイフの男。その姿は、いっそ異様だと言っても良いだろう。切り裂きジャックと呼ばれた、世紀の殺人者。悪意を呑み込み、悪意に満ちた、“染蝕者”だというこの男は一度、未知の魔法によって粉々に砕かれている、はずなのだが。
「良いのかい? 僕を水辺に誘って」
「構わないよ。対策さえ取っていれば、君はただの変わった魔術師でしかない」
「魔術師、か。特専教師の皮を被っていた割に、ずいぶんと古風な言い方じゃないか」
「あの皮は残念ながら吹き飛ばされてね。まったく、魔狼王を味方につけているとは思わなかったよ。参考までに聞かせて欲しいんだが、私の“僕”だった頃の皮を吹き飛ばしたのは、やはり大狼雅か?」
――未知のことは、覚えていない?
そして、そうか、被っていた皮、姿によって性格や記憶も齟齬が出る。そんなところかな。なら、余計な情報は渡さないのが吉か。
「いや? あの場にいなかった僕には、君がポチの餌になったことしか知らなくてね」
「餌? ――っなるほど、獄門召喚か! ははっ、それなら魂すら残らないのも頷ける。だが光栄だね。かの魔狼王に百年に一度しか使えないとされる“大狼極”を出させるなんて、ね」
……ポチ、君はいったい何が使用可能なんだい?
ま、まぁそれは良いか。このまま勘違いさせておこう。そしてその危険そうな技は使わせないように、未知に言い含めておこう。
「――で? ジャック・ヴァン・リストレック。時間稼ぎはもう良いのか?」
「ああ、付き合ってくれてありがとう。君の真摯な姿勢に感謝して、亡骸は河に流してあげよう。なに、痛みも過ぎれば快楽になるさ。幾人もの“羊”で、練習してきたからね」
「良かったじゃないか。今日この場で君は、羊たちの慟哭をその身で理解できるのだろう? 疾く、神に感謝を捧げると良い」
「神になら毎朝祈りを捧げているよ。悲鳴で彩られる朝食は、いつだって心地よい。おお、神よ、あなたの施しに感謝を捧げます、とね」
「そうか。なら君は神を鞍替えした方が良い。邪神に踊らされている、憐れなマリオネットを見続けるのは忍びないからね」
「なら、その目を抉ってやろう。そうすれば、不快な者を見る必要はなくなる」
「それには及ばないよ。神の元に召される君を見れば、僕の心にも平穏が訪れるからね」
距離を測り合い。
互いに隙を見て。
祈るように、笑う。
そして。
「“蝕む水”!!」
「【我に遮る壁はなく】」
河が鳴動し、水がナイフに変化して僕に襲いかかる、よりも、僅かに早くジャックの背に転移した。
「【水精の鞭】!!」
「ちぃッ!」
その背に振るった水の鞭を、ナイフで切り払われる。一撃、二撃、三撃と繰り返す全てを切り払われたが、僕の得意な距離――中距離まで、引きはがした。
水に干渉はできない。そういう異能だろうか。獅堂に聞いてたモノとは違うということは、複数種類を保持しているのか、染蝕者として扱う妖術か。いずれにせよ、警戒するのには変わりない!
「ナイフよ、踊れ! 味わうが良い! これぞ、ジャック・ザ・リッパーの原初の異能!」
ジャックの手に持つナイフが、ぶれる。
――と、同時に、危機感に従って身体を傾けた。すると、目前に迫っていたナイフが僕の後ろへ通り過ぎて、木に刺さり、木が“内部から”破裂する。
女性の腹を切り裂いたというジャック・ザ・リッパーの、原初の異能とはこういうことか!
「“殺人鬼の回帰”――初見で避けるとは流石、英雄。だが、この数はどうかな?」
水が、ナイフに転ずる。
河から飛び出したナイフ。宙に浮き上がるその数は、百を優に越える。
「――最初に母さんを殺した。男漁りしか能のない低脳な女だった。私に暴力を振るう彼女を切り裂いたとき、彼女が知りもしなかった異能を手に入れた。私は、異能で殺した相手の異能を、奪い取ることが出来るのさ。さぁ、君の腹の内を見せてくれ。君の異能で、君が守りたかった人たちを切り刻もう。霧に踊れ、嘆きの歌を奏でておくれ。くふっ、はははっ、あはははははははははっ!!」
趣味の悪い男だ。
ああ、それから、思うよ。君たちはいつだってそうだ。同じ人間同士なのに殺し合い、奪い合い、血に酔う。もう人間でなくなったのかも知れないが、人間だった頃のまま、そうして奪っていたおまえのような人間が居るから。
――いつまで経っても、世界に平穏が訪れない。
「虫唾が走るよ。さっさといなくなれ――【我が手は切り裂く】」
“特性”――“精霊術”。
世界に満ちる精霊に、霊力を渡し、“力ある言葉”を詠唱することにより現象を発現させる、精霊たちの術。
渡した命令は実に単純だ。“五指の先にあるモノを切り裂け”。両手を広げ、交差させながら振り下ろす。それだけで、僕の指の直線上に存在する全てが、ばらばらに引き裂かれる。
「なっ」
「運良く避けたか。でも、いつまで避けられるかな?」
仲間が居ると全力が出せない。僕と獅堂はそのタイプの異能を持つ。どんな状況でも手札を変えられるのが未知と時子。サポートされると威力が跳ね上がるのが拓斗と仙衛門。未だになんだかよくわからないのが、クロック。
故に、仲間がいない状況。“誰も巻き込まなくても良い”という条件は、僕の力を跳ね上げさせる。相性は悪い相手だが――それを覆す手札は、ある!
「はっ、だがこちらの方が数が上だよ!」
ジャックはそう、ナイフを放射状に放つ。自分とナイフの射線を決して重ねずに、僕に迎撃だけに専念させる腹づもりだろう。
解っているのであれば、対処はいくらでもできる。
「【天帝の嘆き】」
「“蝕む水”!」
僕の眼前に浮き上がった光球が、高速でジャックに放たれる。
水で防ぎ、けれどそれで僕には近づけない。僕もまた迎撃を余儀なくされているが、僕の判断力は、疲労では鈍らない。
「接近戦なら!」
「させないよ【精霊は怒りに倣う】」
風を圧縮した“面”での攻撃が、ジャックを弾く。
悪いが、百戦錬磨の殺人鬼にナイフで挑むつもりはない。接近戦が不利ならば、近づけさせずに削り取る!
僕の種族――“精霊”に霊力切れはほぼない。ならば、長期戦に持ち込めば、有利になるのは僕だ。このまま、削らせて貰うよ!
「ははっ、千日手狙いかい? く、ははははっ――舐めるなよ、小僧」
「なに――づっ?!」
突然、足に覚える痛み。
足にまるで噛みつくように突き刺さるのは、木の破片。さっき、爆発した木?!
「戸惑っている暇はないぞ! “蝕む水”!!」
「ッ【我が手は切り裂く】!」
術によってナイフを切り裂きながら、後方を警戒。
だが、足の傷がズキリと痛み、僕の行動を鈍らせる。注意して後ろを観察すれば、爆散した木片に、水が纏わり付いていた。
異能によって干渉した物体を、操る異能か! 蝕む水、とはそういうことか。爆散させる毒と、操る毒。二つの効果。おそらく、手っ取り早く木片が刺さった僕の足を爆散させていないところを見るに、三度目の干渉はできない、ということだろうが。
「厄介な――つぅッ【痛苦に救いを】」
木片を抜き、治癒の術を使用。
淡い光とともに傷が治るが、警戒は解けない。後方への警戒が必要。なら、ああ、認めよう。僕では相性が悪い。得意な距離で、似たような戦法で、仕組まれた相手の舞台で、先手を許した。この状況を覆すために必要なモノは――。
「接近戦が得意な僕、か。ははっ」
「気でも狂ったかい?」
「ああ、いや、気にしないでくれ。直ぐに気にならなくなるだろうけれど、ね」
「まだ手があるか? 良いだろう、全て切り裂いてあげるよ!」
――使いたくなかった。だが、これが僕の油断が招いたことならば、使わなければならない。
本当に思うよ。未知が風邪で、この場に居なくて、本当に良かった。心から、そう思うよ。
「【土小人の城】【巨人の砦】【風乙女の盾】【怨嗟は鏡に】【魔を祓え】【まやかしの霧】」
自分の周囲を分厚い鉄壁で覆い。
その上から物理結界を展開し。
更に被せて流動結界を展開し。
おまけに反射結界をつけて。
念のため抗呪結界も上乗せ。
それらがなんだかわからなくなるように、認識阻害用の幻覚結界も被せておく。
「ひ、引きこもっただと?!」
驚きの声が聞こえるが、無視。彼の異能は結界と相性が良い。破られる前に、“使わなければ”ならないのだから。
はぁ、うぅ、胃が痛い。
「我が身に宿りし精霊の王よ。我が祈りに答えてその身を呪え」
――いつだったか、疑問に思ったことがある。
異能者は、自分の異能に呑み込まれるとその存在基盤が反転し、堕ちる。その現象を見た未知は、ステッキの力で“闇堕ち魔法少女”という能力を会得した。人間の、異能の力でそれが可能であるというのなら、僕は、高次元生命体である精霊は、何故“それ”ができないのだろうか。
疑問に思い、上位存在……母の監督の下、“やってみた”ことがある。その結果は、結果だけ見るのなら成功だった。根底とする“大切なモノ”はそのままに、もう一つの人格、真逆の性質を持つ存在を生み出した、の、だけれども。“真逆”である彼が、僕の行動倫理に沿うはずがないことを、その時の浅はかな僕は想像もしていなかった。だから、“成功”した後もよくわからずにみんなの前で使って、後悔に苛まれたのだから。
けれど。
もう、“それ”しかないのなら。
「転心――」
心が軋む。
魂が疼く。
身体が、熱く、燃えるようで。
「づっあ」
悲鳴が漏れる。
痛みとは違う。
むしろこれは、快楽に似ている。
ああ、嫌だ、いやだ、イヤだ。
だけど。
「く」
ああ、だから。
「は、はは」
僕がこんなにも、苦しいから。
「はは、はははっ」
こんなにも、気持ちが良いんだろう?
――なぁ、“七”?
「はっ、ははははははははっ!!」
空がひび割れる。
違う。己で張った結界だ。引きこもりの“もう一人”に相応しい、惨めったらしい結界だ。だからおまえはいつまでたっても、シスコンむっつり野郎の称号を拭えないんだよ。
「な、なんだ、よ、それ」
「あ? ああ、居たのか。悪いな、久々の“解放”だったんでな」
ああ、最高だぜ、七。
黒く染まった己を見る。目に掛かる髪は黒。きっと瞳は、灰銀から黄金に変化していることだろう。何もかもが、“真逆”な存在。ただ、愛した人間だけが変わらない、それだけの反転属性。
「誰、だ、おまえ」
「オレか? オレは――」
そう、人はオレを、こんな風に呼ぶ。
“魔人”、と。
「――セブン。エスト・セプテム・セブンだ。セブンと呼べ」
幸運を呼ぶ名前だぜ?
オレに屠られることの幸運を、噛みしめながら逝かせてやろう。
なに、お代は命で良い。楽だろう?
「はっ、色違いになったところで――」
「おい、そこ、踏み込むと危ないぜ?」
忠告をしてやると、ジャックはびくりと踏みとどまる。
だが、ああ、悪い。“退かないと危ない”の方が良かったか。
「【毒蛇の牙】」
「ぐがっ?!」
地面から突き出た毒の牙が、ジャックの足を貫く。
たまらず踏鞴をふみながらも、ジャックは果敢に手を振り上げて、剣軍に飛びかかるよう指令を出した、が。
「【闘士の鏡】――ははっ」
身体強化。
一足飛びにジャックの懐に潜り込み、腹に膝をたたき込む。
「ぐはっ」
「おいおい、反撃はどうした?」
「舐めるな、よ!」
「ははっ、いいぜ、その調子だ!」
ナイフを振るその動きは、“人殺し”の為に洗練された動きだ。
それを美しく思いながらも、培った力を踏みにじる快楽を求める心が、早く打ち倒せと疼く。
――ナイフを避け、ナイフを握る指に拳をたたき込み。
「あぎっ、このッ」
――踏み込もうとする身体を止めるために、足を踏みつけ。
「がっ」
――こめかみに肘をたたき込んで。
「づっ」
――吹き飛ぶ前に胸ぐらを掴み、頭突きをお見舞いしてやる。
「あがッ」
「あっ、ははははははっ」
紙切れのように吹っ飛ぶジャックを指さして笑ってやると、ジャックは鼻血を拭って、憤怒に満ちた眼を向けてきた。
「ぎざま! 水よ!」
「【影は光に溶ける】【女王の尖兵】」
距離を離さない。
悪いが、七と同じ失敗をするつもりはない。水のナイフが空中から襲いかかるが、体術で躱しながらジャック自身が盾になるように動いてやると、簡単に避けることが出来る。
その上で、“仕込み”をちょいと操ってやれば。
「ならば、近づいたことを後悔させてやるよ! 全身硬化【魔じ――ぎぅッ?!」
なにか、術を使おうとしたジャックの腹から突き出る、透明の刃。
七の適性では扱えない、“氷”と“闇”の精霊術。
「女王に付き従う兵は、その命を疾く全うする。感じるだろう? おまえが今まで“誰か”に味合わせてきた、冷たき刃の洗礼だよ」
つまるところ、氷の刃を闇の力で隠して仕込んでおいた。
たったそれだけのことだ。
「あ、が。嘘だろ、この、魔塵王たるこの私が、こん、な」
「ああ、それ。その王ってヤツ、おまえが名乗るのはおかしいだろう? おまえはただの雑兵だ。ただ、弱い者イジメが得意で、生き方がちょっとばかり上手かっただけの“ニンゲン”に過ぎない」
「は? な、に?」
王ってのは何かを統べる存在だ。あのダビドですら、“種”持ちを統べる存在であるように。だが、“コレ”は違う。粋がった大魔王に王の称号を与えられた、たったそれだけの男だ。人を殺すのが上手くて、生き抜くことが上手くて、人に紛れ込むのが上手かった。
我慢が下手で、自意識過剰で、自尊心だけの男。たまたま妙な異能を持っただけのニンゲンが、“種”で人間以下に成り下がった。
ああ、本当に、仙衛門の言葉がよくわかる。
だが、仙衛門の、あのときの思想に乗ろうとは、オレも七も思わない。
根本で、オレと七は同じだから。だから、わかっているんだ。
“ニンゲン”は、信ずるに値しないということを。
未知っていう特別がいなければ、オレとて魔界の側に立っていたかも知れない。今は獅堂の馬鹿野郎たちがいるから、ニンゲンの敵に回ろうとは思わんがな。
「う、うそだ、私は、私は、ぁああああああああぁッ!! 全身硬化【魔刃装】ォォッ!!」
身体の表面で刃を叩き折りながら、刃の鎧を身につけるジャック。
本当に、王たるものなら“こう”はならなかったことだろう。だからこそ、その幕切れはあっけないものになった。
「おいおい、良いのか? オレが“女王の尖兵”をどうやって、おまえに上手く突き刺さるようにしたと思ってんだ」
「死ぃねぇええええええええええええええッ!!!!!!」
「はぁ、聞いちゃいねえか。まあいい、じゃあな。薄汚いドブネズミ」
パチンッと指を鳴らす。
すると、ジャックの“身体の中”に残った氷の刃が、硬い鎧の下で暴れ回ったのだろう。
「ぐぎぁあぎゃあああああああッ!? ――ゴフッ」
血を吐き出して、倒れるジャック。
心を折られ、命をはき出したジャックの身体が、端からさらさらと砂になって消えていく。本当の意味で息絶えた“染蝕者”や“種蝕者”の、正しい最後だ。
「つまんねぇ戦いだったよ、ニンゲン。――さて」
まだ、“七”に戻るには時間がある、か。
「【我に遮る壁はなく】」
意識を向ける先は、獅堂だ。
木陰に佇むアイツの元に転移をすると、獅堂は目を瞠り、けれど直ぐにオレを歓迎した。
「よォ、セブンじゃねーか。久しぶりだな」
「おう。へたれの七には厳しい相手だったからな」
「っつうことは、楽勝か?」
「否定はしないぜ」
獅堂の馬鹿は、こいつは本当に馬鹿だが、未知以外では唯一近しいニンゲンだとも思っている。シスコンの七は時子に関心を寄せているが、アイツは節操なしなだけだ。
「先生ー……って、鏡先生が黒い?!」
「あわわ、あわ、あわわわ」
『む? 弟殿よ、我カラーにいめちぇんか? うむ、良し』
わらわらと来たのは、未知の弟子の鈴理と、その背に負われた静音。
それから、満足げに頷く犬、ポチだ。
「オレはエスト・セプテム・セブン。セブンと呼べ」
「せ、せぶん、さん?」
「呼び捨てで良い」
ニンゲンが好んで扱う敬称なんぞを、使う気も使われる気も無い。
「終わったんですか?」
「ああ。殺人鬼なら心を折ってから仕留めてやったぞ。嬉しいか? 静音」
「あわわわ、う、嬉しいですぅ」
「正直だな、オマエ。気に入ったぞ、七の姉にしてやる」
「ふぇ、い、いらないです」
「おいおい、セブン。七と水守をイジメんな」
笑いながら言っても仕方がないんじゃないか? 獅堂。
「九條先生も?」
「おう。土塊になったダビドを見張り中だ」
何言ってんだ?
土塊?
「獅堂、土塊なんかどこにある?」
「あ? そこにあんだろ――って、ない?」
どこをどう見ても、そんなものはない。
代わりに置かれているのは、なんだアレ、クリスタルか?
「あっ、あのクリスタル! あれに、ゼノが封印されていたんです!」
「ゼノ? そのゼノも気になるが、ありゃあ、まさか」
クリスタルがひび割れ、砕ける。
中から出てきたのは、黒い靄だ。靄は瞬く間に大きくなり、そして。
『オォオオオオオオオオオオ』
見上げるほど巨大な、枝蝕者のゴーレムが現れた。
「獅堂、おまえなぁ」
「あー。七魔王トレーダー、どうなってる?」
「七に預けたのか。まぁ、おまえが持つと燃えるか――映ってないな。こりゃ、完全に逃げたな」
「はっ、はっ、はっ」
「く、九條先生? どうしましょうっ」
鈴理が混乱する気持ちも、まぁわかる。
このサイズの相手となると、勝敗の前に大きな問題がある。
「獅堂? どうだ?」
「地形が変わっても良いなら。ポチ、おまえは?」
『右に同じく。ニュー弟殿、貴殿は?』
「セブンと呼べ――ま、一緒だ」
オレは構わないんだが、未知が泣くからな。
ゴーレムは、充電でもしてんのか、ちょっとずつしか動かない。
ならこの間になんとかしたいんだが……対策でも練るか。面倒だが、まぁ、未知のためなら仕方ない、か。
「おい、集まれ。相談するぞ」
最悪、周辺一帯の地盤沈下くらいは覚悟して貰わないと、倒せるサイズじゃないんだが……。
大きくため息を吐くと、白い煙が空に消える。はぁ、まったく、どうなることやら。




