悪意を撃ち込もう3
南部の戦況は激しくなる一方だ。
高位の回復薬が出回らない状況なので応急処置に毛が生えたレベルの治療を受けたらまた戦場へと狩りだされる。
善良な村人たちが今では憎悪を露わに殺し合いをしている姿なんて、ただの一般人の俺では怖くて直視なんてできそうにない。戦況把握と引っ掻き回しは獣人の皆さんにお任せしよう。
東西の戦場だが、最初に矢面に立っていたのは当然エルフ・ドワーフといった奴隷たちだ。
だが、いつの間にか彼ら奴隷は姿を消し、奴隷たちの主人や東西の街の住人達が戦っていた。
きっと亜人奴隷が鎮圧軍に皆殺しにされたのだろう。死んでしまったら戦えないのだから姿がなくて当然だ。
東は森林を利用したゲリラ戦で鎮圧軍に地獄を見せているらしい。ベトコンとかのあれだ。
西はいつの間にか建造されていた砦の守備力を利用し、過酷な消耗戦を強いているとか。
元一般人がいっぱしの軍を相手に善戦しているというのだから、この世界の人間は本当に恐ろしい。
まあ、当然俺の仕込みなのだけど。
彼らにはこのままジリジリと人間同士で潰し合いをしてもらうつもりだ。
残念なことに、北方は勇者様が奮闘している。
ほとんど補給も届いていないはずなのだが、北方の荒野を抜けて中心部の農村地帯に近づいたせいで近隣の住人から支援を受けているらしい。
地元の支援というのは本当にありがたいものだ。
勇者と言うネームバリュー、女神の使徒、人類の希望という存在だからこその離れ業と言えるだろう。
補給を受けた勇者に正面から当たるのはいくらの精強な魔族の軍勢でも厳しい。
だから支援者から削ることにしよう。
勇者に支援をした村の場所を確認して……、と。よし。
まだまだ、先は長いな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
反乱軍との戦いは過酷を極めていた。
最初に反旗を翻した南部のみならず、東西の街も反乱を起こし、中央に宣戦を布告したのだ。
聖地の居城にてその報を聞いた国王は心労のあまり倒れてしまった。
病床の国王に代わり、ついこの前新しく宰相になったばかりの若い男が指揮を執ろうとするが、国王のにらみという後ろ盾をなくした彼の言葉を聞く者は少なかった。
「今回の反乱は宰相殿が提案した『勇者税』に対する反発から始まったと聞くが……この責任を、宰相殿はどうお考えで?」
「それは……っ、今は、そのようなことを論じている場合では――!」
「いやいや、これは重大なことですぞ。宰相殿にこの難事を乗り越えられるだけの力量があるのか、陛下の代わりを務めるだけの器があるのか。この国の命運がかかっているのですからな」
「然り然り。宰相殿には荷が重いとなれば……はて、どなたに任せるのが適任でしょうか」
「くっ……」
国王が居ない今だからこそ、自分たちが主導権を握ろうとする者も現れる。
彼らの指摘にも一理ある。宰相について日が浅いうえにこの反乱のきっかけを作ってしまった。実績というものが彼にはない。
それに、まだ若いのに国王のお気に入りである青年への嫉妬も多分に含まれているのだろう。
混乱する上層部をまとめることもできず、いたずらに時間と犠牲ばかりが増えていく。
こんな状況になっても彼らは信じているのだ。
女神様が自分たちを見捨てるはずがないと。
今は多少劣勢に立っているが、最後にこの地上を支配するのは自分たち人間なのだと。
実際、人類がこの地上に誕生してから、一度たりとも危機に陥ることはなかった。
常に女神の助けがあったからだ。
《聖女》、《聖騎士》、《大魔導士》の加護。
人間だけに与えられた《召喚魔法》、《隷属の首輪》、そして《聖地》。
女神の加護がある限り人間たちに敗北はない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
北方の最前線。
――聞こえ……すか、《聖女》よ……
「……え? 今のは……」
――あなたたちに……たな……を……
この地を中心に、大きく戦況が動き出した。
「……女神……様……?」
残念ながら疫病とかはコントロールできないので無理でした
もしも空気感染の凶悪な疫病などが疫病などが発生したら?と考えて保身のためにお蔵入りです
対処法や治療法などの専門的な知識もないので封印が解けることはないと思います
まあ、主人公の与り知らないところで勝手に発生したりはしているかも?




