はい、こちらモンスター取締局 #2
筋肉男ジョセフと肉団子カレンは本部に帰還した後、署長に怒られていた。
「無断でモンスターを射殺したとはどういう事だ!」
唾を撒き散らして憤激している。
「申し訳ない。しかし、相手が先に攻撃してきたのです」
「ジョセフが射殺しなければ、今頃俺達は焼肉になっていました」
カレンはジョセフの失態をフォローする。
「ええい、言い訳はたくさんだ。刑事なら態度で見せろ!」
「態度ですか?」
「ああ、先程チェルシーの結婚会場で花嫁が連れ去られたそうだ。しかも連れ去った相手はケンタウロスだと言う」
ケンタウロスは、上半身が人間で下半身が馬のモンスターだ。
「またケンタウロスが暴れたのか」
「一年に一回は花嫁を誘拐するよな」
「まったく、ご先祖様の血筋なのか」
二人は不平不満を漏らす。
「二人共、今度は馬刺しにしないでくれよ」
「分かってますって」
揃って敬礼をした後、二人はパトカーのサイレンを鳴らしながらチェルシーに向かった。チェルシーの道路はケンタウロスが出没した事により、車の通行がストップしてクラクションが鳴り響いていた。
「うるせーな。クラクションを鳴らしても渋滞は解消されねーぞ」
「苛立ってるし、仕方ないよ」
その時だ。公園で動く影が見えた。影は公園を移動して、歩道に出た。
「あれは!」
影の正体は、まさしくケンタウロスだった。ケンタウロスの背中には花嫁が乗っており「ヘルプヘルプ」と叫んでいるのが聞こえる。
「追いかけるぞ」
運転席に座っているジョセフがハンドルを切って、歩道に入って行った。歩道には人がいるため、クラクションを鳴らしながら突っ切る。
「そこのケンタウロス止まりなさーい」
スピーカーから制止の合図を出すが、ケンタウロスは一向に動きを止めない。
「ダメだ。返事をしねー」
ジョセフは舌打ちをして苛立つ。
「モンスターが人間様の言語が分かるのかよ」
「……分からねーだろうな」
「だったら、馬刺しにするしかないよな?」
カレンがニヤリと笑う。
「そうだな、カレン」
二人は署長の意見を無視して、ケンタウロスの息の根を止めようとする。
「今回はどうする?」
「こんな事もあろうかと、後部座席にショットガンを用意してあるぜ」
ジョセフが後部座席に親指を向ける。
「ナイスだぜ相棒!」
ハンバーガーを口に咥えたカレンが、後部座席からソードオフショットガンを取り出した。銃身が短く、片手で扱える。
「ぶっぱなしてやれ」
ジョセフが車一台分の距離まで詰める。
「逝っちまいな」
ソードオフの銃口から二連発の弾丸が火を噴いた。弾丸はケンタウロスの脚に当たって、ケンタウロスは転げてしまった。
「危ない!」
花嫁を轢かないように、ブレーキを踏んで急停止した。二人はパトカーから降りて、怪我をしたケンタウロスを車体に縄で縛り、拘束した。
「十五時二十一分。逮捕だ」
観念したのか、ケンタウロスは縄で縛られると大人しくなった。
「大丈夫か、御嬢さん」
ジョセフが花嫁に話しかけた。
「大丈夫です」
花嫁の無事を確認すると、ジョセフは携帯電話を取り出して誰かと喋った後に、携帯電話をポケットの中に締まった。
「タクシーを呼んだから」
そう言うと、ジョセフは財布から二十ドルを出して花嫁に渡した。
「あ、ありがとうございます」
花嫁は素直にタクシー代を手に取る。
「おい、ジョセフ。人妻に手を出すなよ」
「はいはい、分かってるよ」
二人はケンタウロスを検挙し、本部に帰って行った。