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序、終の杜で
あつい。
周囲の木を舐めるように燃やす炎は何時かの再現のようで、でもどこかが違っていて、それが随分と可笑しく思えた。
「どうして――どうして、どう言うこと!? ねぇ! なんで!」
動揺を色濃く写している声が嘆いている。
これも随分と見覚えがある。やはり似ている。でも違う。あの時は、今とは違う。
手を見る。
ぬらぬらと炎に照らされ、赤い血がどす黒く乾いていく。一緒だ。あの時と。
熱風に煽られ、髪が視界を遮った。
黒い。血臭がする。一緒……いや、違う。あの時とは決定的に違っている。
似ていて、違う。
あの時の加害者は奴等で、被害者は我等。
今は、違う。
逆転した関係はなんとも言えない感情を運んでくる。
滑稽だった。とても滑稽で、悲しかった。
「どうして殺したの! 私達が何をしたの! どうして、どうして!」
嘆きが聞こえる。
血を吐くような叫び声は、ああ、似てる、けど違う。
「答えて! どうして、どうして殺したの! 答えてよおぉぉおおおおぉお!」
あつい。