7月28日 ―5―
旅行に行くかのような荷物を持って、店の前で待ってくれていた二人と合流する。
「ごめん。待たせ、た」
「待ってないよ、兄ちゃん」
「そうね。それにしても、さっきも見てて思ったのだけれど、凄い荷物ね」
「ああ、うん。えと、つい」
「ついって。太郎さん、何かあるの?」
「それは、後でいいよ。早く行こ! 兄ちゃん、大変そうだからあたしも荷物持つよ!」
アリアちゃんがそう言って手を差し出してくる。とはいえ、どれも重いのでアリアちゃんに預けられるものはない。
「いや、えっと、いいよ」
「やだ。持つ!」
やだって、そんなこと言われたって。しかし、アリアちゃんは手を差し出したまま、頑として動かない。
「太郎さん。私と二人で持つから、手に持っている荷物を渡して」
「あ、いや、でも、えと、重いよ?」
「なら、なおさら、あたしに持たせてよ、兄ちゃん。重いんでしょ?」
「面倒だから、持たせちゃって」
「……、ありがとう。でも、辛くなったら、すぐ、言って」
「ええ、そうするわね。太郎さんこそ、辛かったら私に預けていいからね」
そうして、日用品やら家に残っていた野菜やらを詰め込んだ袋を、手を差し出したままのアリアちゃんにゆっくりと渡す。袋がアリアちゃんの手に掛ったのを確認して手を離すと、アリアちゃんがそのまま前に傾いた。
「あれ?」
とっさに支える。
「大丈夫?」
「うん、兄ちゃん、ありがと。ホントに重いね、これ」
アリアちゃんを支える手を離すと、今度はフラフラしながらも倒れるようなことはなかった。
「やっぱり、持つのは――」
「止めないよ。こんなに重いんだもん、兄ちゃんが大変じゃん」
「ほら、アリア。フラフラしてないで」
彩さんが手を出すと、アリアちゃんが持っていた袋の取っ手を片方渡す。
彩さんが居てくれてよかった。アリアちゃんだけだったら、そもそも任せられなかったし、そうすると諦めさせるのに苦労しそうだ。その点、彩さんならアリアちゃんの様子を見ながら何とでもしてくれると思える。
「さて、行きましょうか」
駅へ三人で向い、電車に一時間弱揺られて俺の実家の最寄り駅に着いた。幸い、車内に人は少なく、重い荷物を持って立っていることにならずに済んだ。電車に乗っている間、二人は貸した本を黙々と読んでいたので、俺も読書をして過ごすことにした。人もまばらな静かな電車の中、俺、アリアちゃん、彩さんと並んで座って、黙々と読書にふける。
正直アリアちゃんが大人しく本を読んでいるのは意外に思ったのだが、そのことが本人にばれてしまい、「兄ちゃんはあたしをどんな目で見てるのかな? 電車の中で静かにしているくらいの良識はあるよ」と怒られてしまった。
駅から出ると見慣れた地元の景色が広がる。閑散とした駅で、駅前には居酒屋が一軒とコンビニが一軒、あとは交番があるくらいで、それ以外には森と畑が広がっている。ちなみに、驚くほど街灯が少ないので、建物が少ないのも相まって夜は恐ろしく暗い。今日も暗くなる前に帰る予定だ。
俺が先立って、家に向かって歩き出す。だが、すぐにタクシーが目に付いた。いつもはここから二十分ほど歩いて帰るのだが、今日は二人に重い荷物を運ばせてしまった。
タクシー、――使うか。
こんな閑散とした駅でも必ず一台は待機しているのはありがたい。客が来たらラッキー程度にしか考えていないんだろうか……。
「兄ちゃん、何してるの? 早く行こうよ」
アリアちゃんは歩く気満々だった。
「いや、タクシー、使おう、かと」
「太郎さんの家まで、どれくらいの距離なの?」
「えと、歩いて、二十分、くらい、かな」
「じゃあ、歩こうよ。大した距離じゃないよ。お金もったいないじゃん」
「いや、俺、出すから」
「太郎さんのお金だって同じことよ。どうせ、いつも歩いてるんでしょ?」
「何で? そう、思うの?」
「太郎さん、駅を出てからタクシーになんて見向きもしないで歩きだそうとしたじゃない。タクシーが目に入って考えるように立ち止ったし。私達の事なんて気にしなくていいのよ」
「でも――」
「でも禁止。兄ちゃん、どうしてもタクシー乗りたいのかな? 嘘ついたら怒るよ?」
正直乗りたくなかった、一人なら。どう考えたって高い。たった二十分程度歩くだけでカラオケ代が一日分は浮く。俺の考えが読める人がいたら、きっとどれだけ重要な事かわかってもらえるだろう。
でも、ついて来てもらった二人をこれ以上歩かせる訳にはいかない。なんだか、意地になってきている気もするけど、俺はタクシーを使ってみせる。
「いや、タクシー、使いたい、かな」
「言ったよね、嘘ついたら怒るって。もういい。兄ちゃんが歩くって言うまでここから動かない」
アリアちゃんはそう言うと、駅前に座りこんでしまった。
7時分です。
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まだまだ未熟ですが、精進あるのみ。
微修正をしつつの投稿で、投稿ペースが上がり切りませんが、
皆さま今後もよろしくお付き合い願います。




