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4月 ―2―

引き続き、地の文が多いです。

話も盛り上がらないです。

無理やりな理由付けですが、何で彼がヒトカラに行くのかという話です。

 翌日、カラオケは滞りなく進んで終了した。カラオケが終わり、男女八人程でぞろぞろと駅前のカラオケボックスから出てくる。会長の女性が今日の集りを閉めようとしたところで、別の女性が声を上げた――俺を見ながら。

「ねえ、どうして彼、呼んだの?」

「えっと、それは……」

 会長さんが言い淀んでいる。彼女の言い分だと俺はこの会に相応しくないようだった。

「だって、一人だけノリ悪いし、やたら暗い歌ばっか歌うし、自重しないし。どう考えても、主旨を理解してないよね。歌は確かに上手いけど、そんなのやりたいなら一人で行けよって感じ」

 酷い言われ様だと思ったが、周りを見るとそれぞれ思うところはあるようだ。人の顔色を窺うのもあまり得意ではないが、それでも彼らがどう思っているのか、はっきりとわかった。会長さんも申し訳なさそうにしながらも思っていることは同じようだ。

 なるほど。俺はどうやら大きな失敗をしていたようだ。そういえば、このサークルの目的は“みんなで騒ぎながら楽しくカラオケ”だった。確かに俺は、はしゃいでいる人達を横目に、騒ぎ方がわからずに大人しくしていたし、選曲は俺の好きな重い感じのバラードばかりだった。そう考えると、俺はこのサークルの目的に合わないことをしたのだろう。

「そこまで言うことじゃないだろ? もうよくね? 今回はちょっと慣れてなかっただけだよな?」

 会長さんの横に居た長身の男性が助け舟を出してくれた。確かに、慣れていなかった。そのせいだけじゃないが、主旨に沿わないことをしていたのは素直に悪いと思う。だがそれと同時に、しかし、とも思う。

 あんなに険のある物言いをされることだろうか?

 そう思ったら、素直に頷けなかった。先程の女性の言葉が意味するところは、気を使え、空気読めってことだろう。遊びに来ているのに気の使い方覚えることを強要されるなんて――そんなことしていたら、自分が楽しめない。気遣いっていうのは、自分で好き好んでするから楽しい。それとも彼らに教えを請えば気を使いながらも楽しむ方法が教えてもらえるのだろうか?

 しかし、頷けないのと同様に教えを請う気持ちも湧いてこない。楽しく過ごすことが、俺の最重要課題だ。俺がここで空気の読み方を学ぶ気が無い以上、ここでの活動が楽しいものになるだろうか。

「黙ってないで、返事したらどうなの?」

 彼女は相当にご立腹のようだ。随分な言われ様だったが彼女の言葉はここに居る誰もが少なからず思っていること。本当に悪いとは思っている。

 だから俺は答えを告げて、ここでのことはお終いにすることにした。急にはっきりと返事が来たからか、皆驚いたようだった。そんな彼らと話すことも、もう無い。俺は一人、踵を返した。皆あっけに取られて、俺を呼び止めることも出来なかったようだ。

「よくわかんないこと言ってたけど。どうするの?」

「辞めるって言ったのはわかったよ、いーんじゃねーの?」

「お前よく聞き取れたな。そっか、辞めたいんなら引き留める理由も無いな」

「問題解決じゃん。二次会いこーぜ、二次会!」

 何か聞こえたが、もう俺には関わりの無いことだ。活動一日目にしてサークルを辞めることになったが収穫もあった。

 歌うこと自体はとても楽しいのだということ。そのためか、俺の思考はカラオケに囚われていた。怒っていた女性の言い様は酷かったと思うが、言われたことから二つヒントを貰った。一人で行けと言わたことから、それなら誰にも気兼ねせずにカラオケを楽しめると思った。さらに、主旨が違うと言われたことを思い出す。つまり、カラオケの楽しみ方は一通りではないのだと。だから、俺なりの楽しみ方を模索するのは面白そうだと思った。

 その日は、家に帰ってから実家に大学生活を楽しむためにやることを見つけたと連絡を入れた。それ以降、俺の大学生活はカラオケ一色だ。家の近くにあるカラオケボックスにほぼ毎日通うようになり、俺はカラオケと講義と家事から成り立つ充実な毎日を送り始めた。


 さて少し長い話だったが、これで俺が充実した毎日を送っており、寂しくて可哀そうな奴だなんていう誤解は綺麗さっぱり無くなったことと思う。さらに、俺がどういう人物なのかも少しだけわかってもらえたかもしれない。

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