第1話『片時の言葉』
ルーマ563年、アリアは旅に出た。
“アリア、世界を救いなさい。あなたの手で救いなさい。いいわね?”
「はい。お母様。」
一人の少女がふと、つぶやいた。
漆黒の夜、一人でベランダに立っていた。こんな夜の中、空を見つめていた。深い深い、今までに見たこともないような深い黒い空。見つめていると吸い込まれそうなほどだ。
「・・・」
少女は無言で立ち去り、部屋に戻った。
彼女の名はアリア。アリア・ファリスという。歳は15。早くにも父親をモンスターに殺され、立った今、母親を病気で亡くした一国の王女だ。
その国はファリス国という。これからは自分一人で国を支えて行かなければならない。
それよりも、母が死ぬ間際にアリアに伝えた言葉。
“アリア、世界を救いなさい。あなたの手で救いなさい。いいわね?”
世界を救えというのはこの世界にいる、モンスターの中心、母体である魔王を救うことだろう。
アリアは、母に言われた言葉をやり遂げようとしていた。
先ほどからガサガサしているのはそのせいだ。旅のしたくをしているのだった。
「お母様、あたし、頑張ります。」
手の甲で瞳の端にたまった涙をぬぐい、そう言った。
そして、目立たぬ服装で日が出る前に城を出た。
その時彼女は知りもしなかっただろう。
この旅がとてつもなく長い旅になるとは・・。
この作品は【一人旅。】を読めば分かるでしょうが、ルシア達の世界と同じなんです。くわしく言ってしまいますと、つまり、ルシアの故郷が500年、そんでもってリアンの時代が600年なわけです。つまり、ルシアとリアンの間の世界で戦ってきた少女の話です。




