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3話

 五種類のコインがテーブルの上に並んでいる。ナタリーさんが小袋から出したコイン達だ。私はゲームセンターで使うコインと、同じ大きさだと思った。


 五種類のコインには、それぞれ彫刻されている模様がある。


 白金貨はフェニックス

 金貨はドラゴン

 銀貨はペガサス

 銅貨はグリフィン

 鉄貨はユニコーン


「これがお金ですか?」


 私は五種類のコインに目をやりながら聞いた。


「そうよ。お金の単位はガレットで鉄貨一枚が1ガレット。鉄貨十枚で銅貨一枚分になり10ガレットになるわ。だから、銅貨十枚で銀貨一枚分になり100ガレット。銀貨十枚で金貨一枚分になり1000ガレット。そして金貨十枚で白金貨一枚分になり10000ガレットよ」


 私は1ガレットが、どのくらいの価値かわからなかった。だから率直に、この国の物価を聞いてみることにする。


「あの、この国の物価ってどのくらいですか?」


「物価は町によって違うわよ。そうね、このカーリス町ならランチ一人分の平均的値段は5〜8ガレットかしら」


 そうか、ならランチ一人分が五百円とすると、1ガレットは日本円で百円くらいかな。


「この後、町で買い物をするからその時に物の値段が安いか高いかわかると思うわ」


「なるほど……」


 確かに実際に買い物してみないと、わからないと思った。


 なので、貨幣の確認が終わると、私の生活用品を揃える為に買い物に行く準備を始めたのだ。




             ***




 カーリス町は小さな町だと思う。だけど町の中央広場には露天が多くとても賑わっている。私は色々な物に目移りしながらも、通る人々を観察すると人間にエルフにドワーフとさまざまな種族がいることに気付く。

 

 この光景を見てしまえば、ここがファンタジー的な異世界だと改めて感じさせられる。


「露天がとても多いのですね?」


 私は周りに視線を走らせながら、ナタリーさんに尋ねた。


「そうね。カーリスの町の周辺には小さな村が数カ所あるのよ。だから、その村人達の露天も多く立っているわ。だからここの露天市は、面白い物や掘り出し物も多いのよ」


 この話を聞くと、掘り出し物を是非買いたいと思う。バーゲンセールと、同じ気持ちになってくるから不思議だ。


「まずは最初に服をみましょう?」


 ひとつの露天を指差して、ナタリーさんは楽しそうに言う。遠目に指差した方の露天を見ると、ふくよかなおばちゃんがワンピースを掲げながら大声で呼び込みをしている。


 その露天に近づくと、すぐさま呼び込みをしていたおばちゃんに声をかけられた。


「いらっしゃい!! いいもの揃っているから、見ていってちょうだい」


 掘り出し物を見つけるべく、嬉々として私達は服の山を壊しにかかったのだ。服はどれも新品で物が良く、ナタリーさんは楽しそうに服を選んでいる。


 数着の服が私の目の前にある、すべてナタリーさんが選んだ服だ。


「これも似合うし、この可愛い服もルティアに似合うわ」


 そうです。ナタリーさんは自分の服ではなく、私の服を選んでいたのだ。せっかくなので、ナタリーさんが見つけ出した掘り出し物の、ピンクの花柄刺繍のふんわりワンピースを選ぶ。そのほかにも数着の服と、忘れてはいけない下着も選び終えた。


 今はナタリーさんが露天のおばちゃんと値引き交渉をしている。


「全部で420ガレットだよ」


「お姉さん、400ガレットまで安くして!!」


「それはじゃあ採算がとれないよ。そうだね415ガレットでどうだい?」


「キレイなお姉様、もう一声!!」


「わかったよ。沢山買ってくれたから410ガレット!! もう1ガレットだってまけられないよ」


「ありがとう。お姉様」


 ペガサス模様の銀貨四枚とグリフィン模様の銅貨一枚、合わせて410ガレットをナタリーさんは小袋から取り出し露天のおばちゃんに渡す。


「まいどあり!! また来ておくれよ!!」


 お金を受け取ると露天のおばちゃんは元気よく言って、さっそく次のお客の対応をしている。


 衣服をナタリーさんから受け取ると、バッグに詰めた。無一文の私の為に、ナタリーさんは全てお金を出してくれる。


「ありがとうごさいます」


 少しでも感謝の気持ちが伝わると嬉しいなと思い、私は御礼の言葉を言う。


「あらいいのよ。弟子の面倒は師匠がみるものです」


 ナタリーさんには、一生頭が上がらなくなりそうだ。


 その後も靴を売っている露天でブーツを選んで買い、昼あたりまで目に留まる露天を見て回った。


「そろそろ、お腹空いたわね?」


「そうですね」


 私は思わず、お腹を押さえていた。そこは良い匂いがする露天の前だった。香ばしい匂いに釣られて、肉の串焼きを買って食べてみる。肉は噛めば噛むほど味がして、甘辛のタレと合いとても美味しい。


 この肉と野菜をトルティーヤのような薄焼きパンで巻いたものも売られている。もちろん買って、美味しく頂いた。


「さて、もう買う物は無いわね?」


「はい」


 二人とも今日の買い物の収穫に大満足して、笑顔で家に帰る。


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