レンブラント的 世界 ~光と影の魔術師~
光と闇に魅せられる、主人公、沙良。
作者が2013年に制作した作品です。
2013年に出来た作品
アメリカの女優、ジョディー・フォスターが、精子バンクを利用して、子供を授かった。
私は、それ以来、彼女を不思議な人だと思っていた。
私は彼女を賢い人だと思っていたけれど、彼女はズレているのか、それともズレているのは私なのか。
はたまた、赤道の様にずっとズレないはずなのか。よくわからない。
私たちの根本は。
考えられない、止めなければ。爆発する。
噴火の如く。しめったリネンをかぶせる誰かが必要になる。
精子バンクがあるなら、その逆も・・・。
私の推測は正しかった。
子宮バンクも実はひっそりとあった。
何らかの事情で、みなそれを利用していた。
私はそこに登録するだけで、月一万円の収入が得られる事を、悪友の麻帆から教えてもらった。
実際にある男の子供を出産した場合は、いくらくらいとか、その類の相場を知らなかったけれど、仕方ない。知る術がない。
しかし、いくら仕事といっても、自分が産んだ赤ん坊を手放すのは、つらいのではないかと、内心、複雑な気持ちだった。
だが、父親がリストラにあい、このまま学生生活を続けるには、並みのアルバイトでは、
到底まかなえなかった。
覚悟するしかないと腹をすえて、いつ仕事が入っても大丈夫な様に体調を整えていた。
私は、まだ処女だったが、芸能人が枕営業をしなければいけなかったりするように、(全員とは言わないが)仕方が無い事だと思った。
仕事として割り切るべきだと思った。
それが、オトナになった証だと自分を自分でうぬぼれさせた。
ヤル気が出るように・・・。
初仕事の相手は、すごく細くて色白の、いかにも、もろそうな30半ばの男性だった。
なぜか、私がリードし、しかし全然たたなくて、彼は気まずそうに顔を赤らめて、
帰って行った。
一人取り残されたラブホテルは、なんだか妙に広く感じて、約束の時間より前に終了したため、まだ一時間半近く余っていた。
私は冷蔵庫を漁り、入る前に買って冷やしておいた缶チューハイを取り出して、一気にのどに流し込んだ。
精液の味と混じって、変な風味がしたが、特に気にはならなかった。
処女だったのに、全く動じなかった自分がおかしくて、一人で爆笑していた。
ホテルに入る時、男性が『サングラスとかしなくて大丈夫?』と気遣ってくれたが、
即座に『平気』と返答した。
処女を喪失した今と、さっきと、全く変わっていなかった。
鏡に映る私は、冷めた瞳でこっちをにらんでいた。
なぜか、一粒、涙が頬をつたった。
私は、急いで指で拭って笑顔を戻した。
子宮バンクは、精子バンクと違って、闇の商売だったため、人工的な方法がとれない事が最大の弱点だった。
なぜ、精子バンクだけ明るみに出て、子宮バンクは隠されて存在するものであるのかがわからなかった。
理解に苦しんだ。
初日の男性は、体調不良のため、キャンセルしたそうで、キャンセル代込みで50万近く通帳に入っていた事が、私のヤル気を刺激した。
だけど、麻帆から、はじめは、この仕事に定着させるために、多く払うと聞いて、私の気持ちは下がった。
麻帆から耳よりな情報があると聞いて、カフェで会った。
カフェの一番奥のテーブルで、荷物を置き、コーヒーを注文した。
「麻薬が入ったビニールを、ティッシュにぬいつける仕事?」
「そう。どう?やってみない?」
「や、それはかなりヤバくない?私はいい」
即座に断った。
麻帆はヤル気満々で、若干ひいた。
「もしかして、その麻薬、密売するの?」
私は、おそるおそる聞いた。
「うん。らしいよ。ティッシュをクシャクシャにして、使用後みたいにして、関門を通ろうとしているみたい」
「ふーん」
なんだか、驚いてしまった。
急に麻薬が身近になった気がして。
コーヒーにミルクを入れて、かき混ぜると、まるで世界だ。
陰と陽が混じっている。
綺麗なだけじゃない。
互いに引き立て合って・・・。存在する。
一色にならない、そのもどかしさが、人の心の隙間を濡らす。
涙が孤独を彩る音を、どこかで感じている。
「麻帆は、どうして闇に惹かれるの?」
麻帆の髪は、サラサラのロングで、真っ黒で、赤い口紅が光って、白い肌が美しく・・・。
「闇が私を呼ぶのよ。寂しいって」
麻帆は、そう言って笑った。
あまりに綺麗な瞳が、私の涙を誘うんだ。
「沙良は、どうして私と付き合っているの?真面目に優等生やってるのもストレスとか?」
ふふっと麻帆は笑った。耳に光るピンクゴールドのピアスが、麻帆をいっそう魅力的に見せていた。
「んー。何でも、少しかじってみたいっていうのは、根底にあるの。ただ、今はとにかく、沢山稼がないと学べないから。まだ言えないけれど、目指すものがあるのよ。それ以外は手段」
「じゃあ、私も?」
私はそう聞かれて、頷いた。
「男も?」
また私は頷いた。
麻帆は、それを聞いてのけぞって大笑いした。
「素直ね。ハッキリし過ぎでウケる。いいんじゃない?手段でけっこうよ。ただし・・・」
「何?」
「私は沙良の事が好きで、付き合っているっていう事を忘れないでちょうだい。いわゆる、片思いってやつね。変な意味ではないけれど・・・」
「え?」
私はビックリし過ぎて立ち上がってしまった。
「いつか、ふり向かせるわよ」
麻帆は、フフフッと風の様に笑った。
帰宅してから、自室のベッドに横たわった。
しかし、不思議だなぁ。
あの、アメリカ大統領のオバマ氏は、昔、大麻を吸った事があると公表している。
それでも、なんのブーイングも出ない。
これが日本だったら、大変な事だ。
やはり、文化の違いだろうか。
そんな事を考えていたら、明日になりそうだったので、まだ返せていないメールを打とうと、携帯をとりだした。
彼氏の橘 光とは、告白されてなんとなく付き合っていたけれど、世論に詳しい事を話ているうちに知り、私はそれを吸収し、前進するための駒としていた。
光の方は、優等生である女と付き合っているという優越感を味わうがためらしかった。
私たちは互いを利用していた。
そこには、もちろん肉体関係などなく、恋も愛もなかったが、私たちは満足していた。
まわりは、いぶかしがったけれど、まわりがどう思おうとどうでも良かった。
私たちが互いに了承した上での事なのだから。
文句を言われる筋合いはどこにもなかった。
ギブアンドテイクの行き過ぎたものだと理解して欲しい気持ちはあるにはあった。
深夜2時を過ぎても、私の頭は調子よく回転して、麻薬は末期のガン患者の鎮痛剤にだってなるし、大声で悪いとは言えない。
結局は使い方次第。などと正論を答えにした。
という事は、精子バンクや子宮バンクも同様か。
クローン、遺伝子組み換えも・・・。と、どこまでも広がった。
眠ろうとすればするほど、頭は冴えに冴えて、考えが止まらなかった。
今日の授業が午後からなのが幸いだった。
私は、光からもらったクロスのペンダントをドレッサーから取り出した。
つけてみたが、すぐにはずしてしまった。
私は宗教的な香りがする物、事を避けていた。
多種の宗教がある事で、人類は、いがみ合い、幾度も血を流して来た。
その歴史の上にある宗教を、どうしても愛せなかった。
確かに宗教的な戦い以外にも、私たち、人類は殺し合いをしてきた。
つまり、私たちは宗教的な戦いから目をそらしても、やはり血塗られた歴史の上に存在していた。それが現実だ。
しかし、宗教には、それだけではない何かが潜んでいる気がした。
だが、物事には長所と短所があり、私は宗教から良い面だけを吸収しようとしていた。
ただ、全てを受け入れることは出来ない、というのが正直な思いだった。
今日の法学の講義は、1954年制作の「12人の怒れる男」という映画の鑑賞だった。
12人の陪審員が、17歳の少年を有罪か無罪か決めるというストーリーで、はじめは1人以外は全員有罪という所から、どんどんアリバイが増えて行き、ラストは無罪になった。
名前も年齢も知らない12人の男達が、最後雨の中、散って行く場面が強く印象に残った。
日本でも、陪審員制度が導入された今、みな、食い入るように観ていた。
この様な、綺麗なものに触れる事と、負が強いものに触れる事、両方で私の思考は保たれていた。心もそうだ。
どっちかが転ぶとバランスが悪くなるのが、自分で分かっていたのだ。
まわりは、恋愛ムードが漂っていたが、私の中では、それほどでもなく、特に恋だとか、愛だとかを望んでいるわけではなかった。
私には、それより、ひきつけられるものが今あったし、そういうものに触れさえしなければ性的欲求も、まるで感じなかった。
麻帆以外の友達からは、変だ、変わっていると言われて、まるで天然記念物の様な扱いだった。
その事に対して、腹を立てるわけでも、喜ぶわけでもなかった。
そう思うならば、そう思えばいいと。
また次の日、午前の大学の授業が終わると、また考えが湧き、私の心は踊った。
薬は毒になる。毒は薬になる。
ならば、幸福は不幸になる。不幸は幸福になる。
そうだ。
メビウスの輪だ。世界は。
長所は短所になる。短所は長所になる。
その結論に至った。
もしや、裏表がない性格というのは、この理論に反している。
だからこそ、裏表がある性格の方がこの世界に適しているのだろうか。
私の思考は、回転を速めた。
しかし、理論は所詮、理論だ。
現実と理論はリンクしない。
そこで、止まった。
ランチのサンドイッチの綺麗な歯型を誰かに見せたかった。
今日は、珍しく一人で食べていた。
コーラの炭酸は骨を溶かすらしいけれど、どうしてもやめられなかった。
煙草がガン細胞を誘発すると分かっていながら、吸う、喫煙者みたいに。
軽い中毒は誰にだってある。
それに飲まれるか、飲まれないかが病気との境目だ。
ふいに、いけにえにされた、インカ帝国の少女を思い出した。
少女は、まるで眠っているようで・・・。
いくら神様のため、人のためとはいえ、
こんなに幼い子供を捧げるなんて。
とりあえず、今の日本には、人をいけにえにするという風習はない。
ただ、動物をそれと似た形で捧げる事はあると言う。
こんなに綺麗な形で残っているなんて。
アンデス山脈が、いかに厳しい寒さの中にあるかが、よくわかる。
ここには、四季がない。
この様な、厳しい場所では干ばつがよく起こったので、いけにえが必要だったそうだが、やはり、今と違って昔は、神を生活の大本としてとらえていたのだろう。
また、神は動物にも人にも罪な存在である部分が往々にしてある。
日本では、オウム真理教が邪悪な宗教となる。
しかし、神ではなく、ナチス・ドイツ、ヒトラーの様に、人を神格化して、人々の心を握り、大惨事を招いたケースもある。
神は善でもあり、悪でもあるのだ。
この世界の様に、私たちの様に・・・。
授業中に居眠りしながら、こんな事を考えていたら、後ろの席の子に肩をたたかれた。
急いで前を見ると、教授と目が合ってしまい、気まずくて、黒板の文字をノートに写し出した。らしくない・・・。
授業の後、呼び出されたが、なんとか上手くごまかして、優等生を保てた。ホッとした。
胸をなでおろして、廊下を歩いていると、美術教授の安藤と出くわした。
安藤は学年主任で、まだ40半ばだが、落ち着いているため、50歳ぐらいに見えた。
「水川、今からどう?先週のとこ」
安藤は、私に耳打ちした。
「いいですよ。じゃあまた。後で」
私たちは、別々の方角から、一緒の場所に向かった。
安藤は、私のパトロンだったが、それでもまだ不足するというのが現状だった。
学費の他に、自分の生活費、小遣い、実家への仕送りもあったからだ。
DVD鑑賞室の暗闇の中で、交わった。
安藤は、その姿からは似合わずシャイでハグしたり、手を握り合ったりするだけというのを1年以上続けていたが、ちょうど、子宮バンクに登録した頃から、大きく進展していた。
これも生活のためと割り切っていた。
後で、後悔するかもしれない。
それでも、今は、こうするしかない。
声がもれそうになるのを必死でこらえて、だんだん、立っていられなくなるまで、
するのが最近のケースだった。
へとへとになって、部屋を出た、
携帯をチェックすると、麻帆からメールが来ていた。
『ピアスに麻薬をいれるバイトやらない?』
すぐさま、断りのメールを送った。
今度はピアス。
そんなに麻薬を密売すると儲かるのか・・・。
私は眉をひそめた。
歴史上の麻薬というと、アヘンが思い浮かんだ。
けしの実からとれる・・・。
麻薬所持などで逮捕される有名人や有名人の子弟が後をたたない・・・。
それほど、マヒしてきてしまうものなのだろうか。この業界は・・・。
それほどストレスが強いという事だ。
快感の強さより、やはりそれが勝つのか。
それが芸能界に身を置く者の宿命なのかもしれない。
それをコントロール出来てこそだ。
しかし、それでもどこかで無理がくる場合もあるのだろう。
なんという切ない話だ。
芸能人と麻薬は切っても切り離せない関係・・・。
彼氏、橘 光とスタバでコーヒーを飲みながら、核兵器について、議論していた。
光はブラックを、私はカフェラテをちびちび飲んでいた。
窓からは、だんだんと外が暗くなっていくのがわかって、私は麻帆を思った。
いつもそうだ。麻帆は闇と共にある。
そして、麻帆がいない闇はない。
まるで恋人の様に一緒なのが当然の如く・・・。
光が、何考えてる?とでも言いたげに私の瞳を覗き込んだ。
光はクオーターで片目の3分の2が青かった。
本人は特に気にしていないようだったが、その変わった瞳は、いつも注目の的だった。4
前と後ろ、斜めに座っているカップルや、親子連れが、ちらちらとこちらを見ていた。
それもそのはずだ。それは、グラデーションの様になっていて、とても綺麗だった。
そこには、麻帆の漆黒の瞳とは、また違った魅力があった。
コーヒーを飲み終わりそうな時、ちょうど、議論も終着点に行きついた。
核兵器は、攻撃性と防御性をはらんでいるという所で落ち着いた。
席を立ちかけた光を呼び止めた。
「何?」
光はバッグを肩から下ろした。
「話、変わるんだけど・・・」
「ああ。いいよ。んで?」
また、光は席に着いた。
「なんで神は麻薬を作ったのかしら?なんで、ウイルスを作ったのかしら?」
光は、私の質問を聞いて、ちょっと眉をひそめて、考えていた。
それが、ポーズだと言う事はわかっていた。
私は、まるで親にどうやって子供が出来るのかと聞いている、小さな女の子の様に、瞳をキラキラとさせていた。
光は、さんざん間を置いたあげく、答えた。
「なんで作っちゃいけないの?」
私は予測を大きく裏切る光の発言に、しばらく口をあんぐり開けていた。
「それって、病気全般を含むの?」
逆に光に聞き返された。
私は小さく頷いた。
「だって、それって、人類とかにとって、致命傷でしょう?なければ、平和じゃない。戦争みたいに」
「だけど、完全に平和だったら、地球上の循環が悪くなるんじゃない?幸せがあるからこそ、不幸がある。不幸があるからこそ、幸せがある。みたいに。平和ばかりでも、不幸ばかりでも地球は衰退していくと、僕は思う」
「そのためなら、犠牲はやむをえないって事?本当にそうなら、皮肉ね」
私は、ため息をついた。
久々に帰省した。そしたら、父が帰って来た。
「今日は残業なかったんだ?」
私が聞くと、ネクタイを緩めながら、父は頷いた。
リストラされてからというもの、父は派遣社員として働いていたが、給料はわびしいものだった。だから、私からの仕送りが必要だった。
家族間は、冷え切っていた。
父からは、入浴剤の様な香りが漂ってきたが、私はそれを受け流した。
この歩き方は・・・と思っていると、やはり母で、父を一瞥すると
「泡ぶろの様なにおいね」
と、捨て台詞を吐いて、家をあとにした。
父は何も言わず、まだ無言は続いていた。
私は、たまらなくなって、自室に戻った。
母の化粧が、日に日に濃くなっているのが、気になった。
もしや、危険な風俗でもしているのではないかと、心配になった。
不倫ならまだしも、もしそうだったらどうやって母を引きとめよう・・・。
頭痛がした。
頭痛薬に手を伸ばそうとしたが、あまりの眠気に勝てなかった。
麻帆が夢に出てきた。
麻帆は、特定の恋人を作らなかった。
その代わり、バースデーの男、クリスマスの男、ニューイヤーの男、バレンタインの男、ホワイトデーの男がいた。
私は、そんなクレイジーな麻帆を案じたが、麻帆は、大丈夫、大丈夫と言って、いつもの笑みを浮かべた。
その笑顔が返って痛かった。
麻帆には何か、こうさせるような、トラウマがあるのではないかと思ったが、下手に聞いて傷つけてしまったら、元も子もないと思って、言うのを我慢していた。
久しぶりに麻帆の家に泊まった。
麻帆の父親は大手広告代理店の幹部で、家を出たがった麻帆を、何度にも渡って説得したらしいが、気持ちは変わらず、今の状態になったと言う。
私が目指すものは、コピーライターで、麻帆と仲良くしていれば、やがて私の夢を知った時、麻帆が紹介してくれる可能性があると目論んでいた。
つまり、コネ入社実現のためもあって、麻帆と付き合っているのだ。
けれど、麻帆は薄々とそれに気づいている気がした。
それが、つらくもあって私の心をチクチクと刺した。
麻帆が、一緒にお風呂に入らない?と、言ってきたので、そうする事にした。
麻帆は脱衣所で、さっと服を脱いだ。
黒い繊細なレースの下着が、よく似合っていて、オトナっぽくて、私はドキッとしてしまった。
それに、ガーターにティーバック。
私はと言うと、オレンジの花とピンクの蝶々が刺繍してあるいかにも、お子様といった感じで、あまりの違いに一瞬、肩の力が抜けた。
泊まりに来たのは、何度もあったけど、一緒にお風呂に入るのははじめてだった。
それに、麻帆の身体はとても色っぽくて、私は見惚れてしまった。。
キュッとくびれたウェスト、豊かな胸、雪の様に白くて透明感のある肌・・・。
私はというと、幼児体型で麻帆の隣りにいるのが恥ずかしかった。
麻帆は、バスタブに入り、私は髪を洗った。
すると、麻帆が口を開いた。
「ねぇ。沙良は、文章書くの得意よね?要約なんかも。キャッチフレーズ考えてみる気ない?父からの指名なんだけど」
私は、嬉しさと驚きと緊張のため、しばし固まっていた。
麻帆は、言葉を継ぎ足す事はせず、私の返答を待っていた。
「やる!やりたい!!」
私の声が、バスルームに響き渡った。
「じゃあ話は、はやいわね。化粧品会社から香水が出るの。それを・・・」
麻帆が言いかけた時に、私は口をはさんだ。
「デステニーパフュームは?運命の香り・・・」
私は、うっとりしながら言った。
「いいわね!父に報告するわ!!もちろん、給与も出るわよ。それが売れるほど、沙良にも、お金が入るし。ちなみにラストノートはブルーローズよ」
麻帆は、すごく嬉しそうだった。
ニコニコしていた。
「なんで、そんな嬉しそうなの?」
私は、思わず尋ねた。
「沙良が、危ない仕事から足を洗ってくれたらなって思うから」
麻帆は、真剣な瞳で私を見つめた。
「自分はいいの?」
「うん。私はいいの」
「なんで?」
「知っても何も面白くないわよ?」
「それでもいい。知りたい」
今度は私が真剣な瞳で麻帆を見つめた。
「まだ、その時期じゃない」
麻帆はポツリとそう言って、私と変わってバスタブから出て、体を洗いだした。
ボディーソープの、蠱惑的な香りがバスルームに広がった。
私のイノセントな香りは、たちまちのうちに消えた。
「好きな女が出来た」
光に言われた。
呼び出されて、いきなり。
あいている教室。隣から生徒の笑い声。
「誰?・・・って聞いていいのかな?」
私は、おそるおそる尋ねた。
光はスラスラと台本を読む役者の様にこたえた。
「佐久間麻帆」
私は、それを聞いて、かなり動揺した。
麻帆?
なんで、よりによって。
「別れるって事?」
私は、なぜか涙声だった。
いつのまにか、愛着でもわいたのか。
「まあ、そうだね・・・。それで、きみから僕をふってほしい」
胸が苦しかった。
おかしい。こんなの。
いや、きっと条件反射みたいなものだ。
私は自分を落ち着かせた。
「なんで?」
「じゃないと、麻帆が気にする」
「麻帆も光を好きなの?」
「よくわからないけど、勝手に、瞳が耳が僕を探すらしい。あれでいて、実はうといんだよ」
もう、お手上げだと思った。
ふたりの間に、愛と言う名の橋がかかった事が、これ以上ないくらいのスピードで伝わった。
「別れよう」
私は、満面の笑みで言った。
そして、教室から出ようとして、戸をひいた。
そこには麻帆がいた。
「ごめんなさい!!あれは、あのキャッチフレーズの仕事は、せめてもの、罪滅ぼしだったの!わかって?」
麻帆は、泣きじゃくりながら叫んだ。
「ありがとう。気にしないで」
私は、笑おうと頑張った。
でも、やはりつらくて、走ってその場を去った。
私は、キャッチフレーズの仕事を辞退した。
また、私の中には闇が増えた気がした。
PCを開き、明日、発表する、光と影の魔術師、画家レンブラントについって、下調べが終わり、印がついた資料を見直していた。
私は闇を消したいのか。
自問した。
いや、闇と上手に付き合う術を知りたいのだ。
光あれば闇ありけり。
そうだ。光と闇は対。
どちらかだけあり、どちらかだけない事は、ありえない。
光を望むなら、闇を受け入れなければならない。
認めなければならない。
本当に、それが出来た時、光は差し込むのではないか。
出来ないが故に、私は闇を彷徨う。
私の消化器官は、果たして上手く作動するのか。
疑念は残るが、今の状態から脱出する,キーワードを一つ得た感があった。
神様は、自分が作った世界をみな、どう生きるのか、見守っているのかもしれない。
そして、誰よりも苦悩しているのではないか。
今、私の心の中にいる神様に少し寄り添える自分が居る。
終
ここまで読んで下さってありがとうございました。




