6話 姫と獣人と、ちょっと本気の模擬戦!〜セラの勝ちっぽい一日〜
王都騎士学院・訓練場。
その日、翔也は訓練用の槍を手に、とても嫌な予感しかしない対面に立っていた。
「なあセラ、ほんとにこの“模擬戦”やる必要ある……?」
木陰で日傘を差しながら、微笑んでいたのは巫女・セラ。
「ええ。心身の鍛錬と、チームワークの確認。大会の勝率に関わりますから」
「いやでもこれ、チームワーク以前に“俺vs女子二人”って構図がもうさあ……」
「――模擬戦、開始です」
「聞いてねぇぇぇ!!」
地面を蹴って迫るのは、金髪ツインロールのツンデレお姫様・リュシエル!
「さあ、覚悟なさいっ!」
「ちょっ、姫さま槍の先マジで当てに来てる!?これ模擬戦!!」
続けざまに、ミナが低く構えて斜めから突進!
「……隙あり」
「うおっ!? 速っ!ていうか連携よすぎん!?」
その場にいたセラは、微笑みながら小さなプレートに淡々と記録していた。
「翔也さん、開幕30秒で完全包囲されてます。これは──評価Bですね」
3分後――
「はぁ……はぁっ……っずるい!グリュンが飛ぶのずるいわ!」
「でも、私たちの地上連携もかなり精度上がってたはず」
ミナが息を整えながら言い、翔也も軽く笑う。
「いやマジで油断した……姫の突きが意外と鋭いし、ミナの踏み込み速すぎ。てか二人の連携、もうペア組めば?」
「なっ……/// ちょ、ちょっと! そ、それは……っ!」
「私は別にいいけど」
「だめっ!!」
セラは記録を締めながら、静かに一言。
「ふむ。やはり翔也さんの身の回りには、熱量の高い女性が多いようですね」
その口調は穏やかだったが、笑顔の裏で何かがピキッと音を立てた気がした。
模擬戦後、日陰のテーブルでアイスを食べる3人+セラ。
「……やっぱり、戦ったあとの甘いものは最高よね!」
「……このチョコミント、悪くない」
「俺は抹茶かな……てかセラは?」
「私は……翔也さんが食べかけてたそれを、ちょっといただいてもいいですか?」
「え、えっ!? ちょ、間接……あっ、あーもう食べられた!?」
翔也が慌ててる横で、セラはいつも通り微笑んでいた。
ただ、その微笑みはどこかほんの少しだけ、勝ち誇っていた。
──今日も、戦場は槍の上だけではなかったらしい。