活気づく王都、騎馬戦大会を前にして
王都の大通りは、かつてないほどの活気に包まれていた。 街を彩る無数の旗には、それぞれ異なる紋章が刻まれており、今にも開幕せんとする騎馬戦大会の熱気を物語っていた。
「ずいぶんとにぎわってるな……翔也はグリュンの背にまたがったまま、大通りを見渡した。人々の目が、自分たちに向けられているのを感じる。
「見て、あれ騎士学院の子たちじゃない?」
「ほら、金のたてがみの馬だ……間違いない!」
リュシエル、ミナ、セラがそれぞれの馬にまたがって並ぶ姿に、群衆はざわめき、好奇と期待に満ちた視線が集中した。
「……なんだか、ちょっと恥ずかしいわね」リュシエルが小声で言うと、ミナが尻尾をピクリと揺らしながら呟く。
「この雰囲気、なんか落ち着かない」
翔也は笑って、グリュンのたてがみを軽く撫でた。
「みんな、見られて当然だよ。俺たち……帰ってきたんだ」
騎馬戦大会の告知が町中に貼られ、王都の広場では露店が所狭しと並び、観客たちがあふれていた。 甘い焼き菓子の匂い、油で揚げた串料理の煙、そして遠くで鳴る楽器の音が、街の空気をさらに熱くさせていた。
通りすがりの少年が、セラの馬ルーメイルに花の首飾りをかけた。
「がんばってください、お姉さん!」
セラは驚きつつも優しく笑みを浮かべて、少年の頭にそっと手を置いた。
「ありがとう。あなたの応援、力にします」
一方、ミナは出店の品に興味を持った様子で、革細工の腕輪を見つめていた。
「これ……草原の民の飾りに似てる」
「買っておく? もしかしたら、次の戦いに運を呼ぶかもよ?」 翔也がからかうように言うと、ミナは「……必要ない」と言いながらも財布を取り出していた。
その後、一行は騎士学院に戻る前に、広場近くの宿で休憩をしていた。
宿の中も賑やかで、各地から集まった騎士たちが談笑し、鍛錬後の汗を拭っていた。
「この感じ……戦の前の夜に似てる」 リュシエルが呟き、セラがそれに応じるように言った。
「騒がしさの裏に、緊張が潜んでいます。……気を引き締めましょう」
翔也は椅子に腰を下ろし、窓の外を見やった。 王都の空、青く空を染めていた。
「でも俺は……少しだけ、楽しみだよ」
「確かにな楽しみだ。」
グリュンが静かに鼻を鳴らした。
王都は今、かつてないほど熱を帯びている。 そして、翔也たちの冒険も、最後の舞台へと進もうとしていた。




