2話 騎馬戦大会? いや、死ぬほどガチなんですけど……
「というわけで、貴様には“王都騎馬戦大会”に出てもらう。拒否権はない」
言い放ったのは、例の金髪縦ロール姫――リュシエル=フォン=エルデリッシュ。
美少女だが、性格はトゲトゲしい。しかもなぜか俺を睨んでくる。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 俺、別にこの世界の国籍もなければ、ジョッキー免許もないんだけど!」
「この世界に転生した瞬間、国家騎乗免許と騎士団籍が自動的に発行されてるわ。システム上、問題なし」
「なんて便利な異世界仕様……!」
思わず膝をついた。が、そんな俺に優しく手を差し伸べてくれたのが――
「心配ありません。あなたには、“天翔の騎乗者”の資質があります。……信じていますよ、マスター」
微笑むのは巫女姿の美人、セラ=ミューリエル。
その豊かな胸元が揺れるたび、視線が勝手に吸い寄せられる。いや、そういうんじゃないけど。たぶん。
「お、おい! 巫女セラよ! この男の何が信じられるっていうの!? 初対面なのに、何でそんなに優しいのよ!」
「嫉妬ですか? リュシエル姫」
「ち、ちがうっ! 別にそんなんじゃ……!」
……あれ? この二人、もしかして――ヒロインレース、もう始まってない?
そんなこんなで、気づけば俺は“王都騎馬戦大会”の代表選手として、騎士団の訓練場に立っていた。
「ちなみに言っとくけど……この大会、魔法あり、武器あり、馬も能力あるし喋るし、ほぼ戦争よ」
「……えっ」
騎馬戦(物理)――それが、この異世界のリアルだった。