8話 作戦会議、始めたはずなのに恋の駆け引きに突入してました
作戦会議、始めたはずなのに恋の駆け引きに突入してました
翌日。翔也はセレスティア・ライダーズの控え室で、真面目に作戦ボードと向き合っていた。
「……よし。今日こそ、ちゃんとしたフォーメーション確認しよう」
準決勝も近い。勢い任せの作戦じゃもう通用しない。
ここからは**本当の“チーム戦”**が始まるのだ。
そんなとき。
「失礼します。翔也さん、お昼がまだかと思いまして」
静かな声とともに、セラが湯気の立つトレイを運んで入ってきた。
パンとハーブスープ、果物の盛り合わせ。彩りまで整った軽食がそこにあった。
「す、すご……なにこの完璧ランチ」
「……試合続きで栄養が偏っていると聞きましたので。ご自身の力を引き出すには、日々の管理からです」
「俺、なんかお母さんみたいなこと言われてる……」
「ふーん、なかなかやるじゃない」
その声とともに入ってきたのは、もちろんリュシエル姫。
「でも私はこれよ! 王宮の厨房から直送の“翔也特製プレート”!」
「ちょ、俺特製って何勝手に名付けてんの!?」
目の前に置かれたのは、豪華な三段重。焼き肉、サラダ、ふわふわのパン、そして金箔乗ってるケーキ。
「ちなみに“あーん”もしてあげる準備はできてるわよ?」
「やめてください死にます」
「……食べる暇があるなら、作戦を立てたほうがいいと思うが」
最後に現れたミナは、訓練着のまま手ぶらで入ってきた。
「……でも、少しだけ、香りが気になる」
「ミナ!?今ちょっとだけ目がキラッてしたよな!?」
「別に……肉のにおいは、好きなだけ」
セラがそっと小皿を差し出した。
「よろしければ、こちらを」
「……ありがたく、いただく」
こうして、なぜか昼食会になった作戦会議が始まった。
翔也を中心に、三人が食べつつ、どこか牽制し合っている。
(これって、作戦立てる雰囲気じゃなくね?)
ようやく食べ終えたころ、翔也が立ち上がった。
「えー、そろそろ本題に入ろう! 今日はちゃんと作戦練るぞ!」
「はい! 私が考えた“翔也主軸突撃ルート案”はこちら!」
「それ、全部“私が翔也を支える”が前提よね!?」
「私の突撃タイミングに合わせるのが最適。論より結果」
「私が書き記した記録によると、翔也さんが中央で指揮を取る案が妥当かと」
「え、なんか三方から俺を取り合ってるみたいな構図じゃないこれ!?」
結局、議論(という名の牽制)を経て、どうにかこうにか作戦は決まった。
翔也&グリュン=空中遊撃&指揮
リュシエル=前衛・守備+誘導役
ミナ=突撃・高速回避→後方撹乱
セラ=速度補助・回復&後方観察
「……よし。これで、次の試合は――」
翔也が言いかけたとき、3人のヒロインの視線がぶつかり合う。
「“次の試合”だけじゃなく、いろんな意味で負けたくないのよね」
「戦場でも、プライベートでも、私は妥協しない」
「……翔也さん。私は、ずっとそばにいますよ」
「なんで毎回最後こうなるの!?本番より怖いんだけど!!」