ファンタジーからの誘い
そりゃ、初めから勇者なんて信じてない
七段。彼女は声を震わせて言った。
「あなたは私を救ってくれないのですか?」
今気がついた。彼女の足には鎖が巻きついてる。
八段。なるほど
九段。あたしは思い切り剣を振りかぶる。
ガ・・・キン
鎖は簡単に二つに分かれた。
あたしはそのまま馴染みの剣を床に突き刺す。
顔をあげると少女は女性になっていた。
「私は運命人にはなれないのですね」
5歳くらい急に成長したようだ。
ははは きれいだ
涙の溢れる目が私からそらされる。
「行ってください」
あたしはもう混乱しちゃいなかった。
そう、言いたいことが自然に出てきて・・
「悪いけどあたしは心が狭くてね」
十段。彼女とすれ違う。花の香りがかすめた。
「今の日常っていう冒険だけで十分なの」
チャイムが鳴った。
あたしはもう振り返ることなく階段を駆け上がる。
おお、速い早い あたし・・
教室の前に来て手を掛けると勢いよくドアを開いた。
階段にはだれもいなかった。
世界が現実に戻りゆくのを肌で感じた。
もう、ファンタジーからの誘いがあたしに届くことはない。
「おはようございますっ」
あたしの冒険は遅刻の説教から始まるようだ
一年前の原作がこうしてネットの上に浮かびあがることが感動です。実は原作での主人公は男子高校生でした。ある人に「これは高校生の口調じゃない」と突っ込まれたところ変更いたしました。ラストは初めから決めていましたが、今見ると少し物足りない形になってしまいました。なので、この後は読者自身の想像にお任せします。ファンタジーからの誘いいを断り続けた主人公は日々の冒険で、どう過ごすのでしょう・・。「栗の変化」という長編小説も更新しているのでそちらもよろしくお願いします。