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学食

――

とある日のお昼休、私とニコルは初めてレーヴ学院のスクールカフェテリア。つまり、学食にきていた。


ぼっちの私は家から持参するか、普段学校内に併設されているお店でお昼ご飯を買って図書室近くの休憩スペースで食べていた。人気のない自由な場所で食べられるから私は何の不自由もしていない。ニコルと友達になってからは2人で話しながら昼食も取れるし、何よりカフェテリアは持ち帰りができない上に購買の倍近い料金を払う必要があるのだ。

そんなアンチカフェテリア派の私が何故こんな人がたくさん居るカフェテリアにきたのかと言うと、昨日の放課後に遡る。

 

「ローズちゃんってここのカフェテリア行った事ある?」


「ううん」


図書室でニコルと授業の復習をしていると突然質問がふってきた。


「だよねー。でもさ、1度は行ってみたくない?」


「んー…カフェテリアって混んでるんでしょ?」


「そーだけど、何事も経験だと思わない?それに、今日クラスの子が言ってたんだよ。カフェテリアのご飯が最高に美味しいって」


ニコルがイメチェンしてから、よく私以外の人と話しているのを目にするのでその情報は確かだろう。しかし人混みが苦手な上に、ニコルと一緒に行ったら目立って人目を気にしてご飯を食べる事になるかもしれない。んーーっと、渋い顔をして悩む私にニコルは余裕の笑みで話を続けた。


「ローズちゃんの好きなスイーツも色々な種類があって、とーっても美味しいらしいよ?」


「ぅっ……それなら、行ってみてもいいよ」


美味しいスイーツに釣られて私はノコノコとカフェテリアデビューを果たしたのだ。


空いている席に自由に座り、好きな料理を好きなだけ食べられるバイキング形式のようだった。


少し出遅れたせいで、出入口付近の席はもう全て埋まっていた。仕方なく席を探しながら奥の方へ進んでいた時だった。


「おーーい!ローーズーー!こっちの席空いてるぞーー!!」


「ゲッ……」


少し離れた所から兄が手を振っている。頼むからそんな大声で呼ばないでほしい。


「ぷはっ、ギルバート様に名前呼ばれてそんな嫌そうな反応するのローズちゃんくらいだよ」


「だって……」


ニコルは笑っているけど、変に注目の的になるので迷惑だ。私が何も返事しないでいるとおーーい!ってまた大声で叫んで大きく手を振ってくる。これ以上目立たない為にも兄を早く止めないといけない。


「ニコル、ごめん。お兄様と相席でも嫌じゃない?」


「うん、俺は全然大丈夫だよ」


仕方なく私は4人がけの席に1人で座っている兄のテーブルに向かった。


「ローズがカフェテリアにいるの珍しいな。そっちの子は友達か?」


「はじめまして。ニコル・グレイです」


「あぁー!君がそうか!」


兄はニコルの名前を聞くと勝手に納得して、これは強敵だなって笑っていたが何の事だろう。


「お兄様は1人でお昼を食べているの?」


「いや、これからウィルも来るよ」


その言葉にサッと血の気が引くのがわかった。ウィルの体調は心配だけど、できればもう会いたくない。

この学校に来る前は、少しでもウィルと良い思い出が作れたら良いなと夢を描いていた。だけどいざウィルと話せる、関われるとなった時、いつもウィルを不機嫌にさせている自分がいた。何で毎回こんなになってしまうのかはわからないけどウィルを不快にさせているのはわかる。


「スペンサー様が来るのなら私とニコルは別の席で食べた方がいいと思う」


「そんな事ないから大丈夫だって。それに今から席探してたらご飯食べる時間なくなるぞ?あ、噂をすれば本人登場じゃん!おーーい!ウィルーー!こっちこっち!」


兄は私の心配をよそにさっき私に声をかけた時と同様に大声でウィルを呼んだ。ウィルは私と目が合うと一瞬驚いた顔をしていたが、席まで来ると、空いている私の目の前の席に座った。

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