幼少期
それからと言うもの週に1、2度来るウィルの稽古の日には私も稽古場に行き離れた席で父、兄、ウィルの姿を観るのが日課になっていた。そして稽古終わりにするウィルとの雑談も毎度の事になっていた。
「ウィル、きょーもかっこよかったよ!」
「ありがとう。そういえばさっきギルに聞いたんだけど、ローズはもうすぐ誕生日なんだって?」
「おにーさまから聞いたのか…。わたしから話したかったのに」
ぷくっと頬っぺたを膨らませた私にウィルはニコニコと笑って頬っぺたをツンツンしてくる。
「そんな拗ねないでよ。何か欲しいものある?いつも応援してくれるお礼に何かプレゼントしたいな」
「んーーー……ないっ!」
少し考えてみたが、欲しいプレゼントが浮かばなかった。少し前まで部屋に閉じ籠ってばかりいたけど、今やウィルともこうやって話せるから十分だった。
「本当に?何でも良いよ?物じゃなくてもさ、行きたい所とか、したい事とか、ない?」
「………ほんとーになんでもいいの?」
こてっと首を横にかしげて聞いてみた。
「うん、だからローズの欲しいもの教えて」
「あのね、…えっとね、……笑わない?」
「うん、笑わないよ」
言うのが恥ずかしくてモジモジしてる私に気づいてか、ウィルは優しい眼差しを向けながら頭をヨシヨシしてくれた。
「あ、あのね、……これからもわたしのトモダチでいてほしい!」
「…えっ」
恥ずかしくて服をぎゅっと握りながら、目をつぶって言ってしまったけど、やっぱり嫌だったかと恐る恐るウィルを見ると目を見開いて固まっていた。
「ご、ごめん……イヤならだいじょーぶ…」
心が割れそうなくらい辛いけど、この空気が気まづくて必死に笑った。きっと上手く笑えてないのはわかっている。
「ううん、嫌じゃない。こんな嬉しい事言われて嫌な訳ないでしょ」
そう言うとウィルは私の頭をまたヨシヨシと撫ではじめた。その言葉が嬉しくて、心もポカポカで、私はにこにこしながら頭を撫でられ続けた。
「ウィル!ローズ!またお前ら俺抜きでジャレてるな!」
「こんな可愛い妹がいて、ギルが羨ましいよ」
「王子様に羨ましがられる俺って凄いな。まぁローズは特別可愛いからな!」
ゲラゲラと笑っている兄の登場でほかほかした空間から一気にガヤガヤし始めたけど、それもそれで楽しくて私は終始笑顔だった。