パンケーキ
と、思ったのにこの席は最悪すぎる!!
私達が通された席は一番奥にいるウィル達の目の前の席だった。席を案内された時、はぁーっとニコルはため息を吐いたが、ため息を吐きたいのは私も同じだった。満員で他の席は空いてないし渋々そこの席に腰掛けようとした。
「こんにちは、ローズ、と、たしかニコルくんだったよね?」
「…こんにちは」
私達に気づいたリリアナに声をかけられて返事をしたが、ニコルはコクンと首を縦に振るだけだった。筆頭公爵令嬢に取る態度ではないだろうが、普段話していないのだから、こんな時こそ挨拶しないでって私も思ってしまった。
ウィルにも挨拶すべきかと思ってリリアナの対面に座っているウィルに目線を向けると、彼は眉間にシワを寄せていた。というか、きっと睨んでいた。
「ローズちゃんこっちの席でいいよ」
「……ありがとう」
ニコルはウィル達に背中を向けられる席の椅子を引いて私を座らせてくれた。ニコルの席から2人が視界に入ってしまうが良いのだろうか?目線的にはありがたいのだけれど私は背中越しに2人の会話が聞こえてきてソワソワする。
「ローズちゃん、ちょっと耳かして」
「ん?」
そう言われてテーブルを挟んで前にいるニコルの方へ上半身を前のめりにし、耳を傾けた。
「あの第二王子になんかした?」
「え、してないよ?……たぶん」
耳のそばでコソコソ話しかけてくるニコルの方を見ると、じゃあ何だろね?と首をかしげつつメニューを開いて差し出してくれた。
最後にウィルと会った時は怖かったけど、何であんな事になったのか未だに謎だ。今度謝らないといけないと思っていたけど、リリアナと2人で歩く姿を見たら今後一切関わらないのが自分の為だと思えてきた。
昔父に関わるなと言われた時は悪魔のように感じたけど、やっぱり私の為だったのかもしれない。
「どれにするか決まった?」
「んー……チョコバナナのといちごので悩んでる」
「あ!俺コレにしたかったから分けてあげるよ」
「えっ!いいの!ありがとう」
ウィル達の事は考えないって決めてからはなるべくニコルとの会話に集中した。黙ってしまうと嫌でもウィルとリリアナの声が聞こえてしまう気がしたから会話が途切れないよいに頑張ったと言うべきだろうか。
「「うわぁー」」
お待たせしましたと店員さんが持ってきてくれたパンケーキがあまりに美味しそうで2人で驚いてしまい、ニコルと顔を見合わせて笑ってしまった。
「ローズちゃん、チョコの食べる?」
「うん!」
「じゃあはい、あーーん」
差し出されたホークはきっと食べさせようとしてくれているが、人目もあるしかなり恥ずかしい。
「えっ、恥ずかしいよ」
「全然恥ずかしい事じゃないって。そっちのお皿に置いたら味が混ざっちゃうでしょ!ほら、早くあーーーん」
「んーーー!これも美味しい!」
「ぷはっ…最高の笑顔だね」
パクッと口に入れると恥ずかしさよりも、美味しさが勝って思わず頬っぺたを両手で押さえた。美味しすぎて頬っぺたが落ちないか心配なほど美味しい。
――ガタッ
「ちょっ、ウィル様!」




