初日
――1年生の教室に行くと既に多くの人がおり、ガヤガヤと賑わっていた。
家族ぐるみで親交のある者も多いのか既に仲良さそうにキャキャする声があちらこちらで聞こえた。
私は自分の名前の書かれた席に座り、定刻になるのを待っていた。
――ガラガラ
「はい、皆さん席に着いてください!」
担任と思われる女性の登場で今までの賑わいが嘘のように静かになり、皆が席に着いた。
「私は担任のナンシーです。ここのクラスを受け持ちます。
今から出席確認兼自己紹介をしていってもらいます。名前を呼ばれた人から立って自己紹介してください。ではまず、一番前の席から、リリアナ・アンダーソン」
その言葉で教室がザワザワした。あの方がリリアナ様なのね。筆頭公爵アンダーソン家と言えば知らない人はいないだろう。おまけに冴えない私とは全然異なり彼女は美人だ。
「はい、リリアナ・アンダーソンです。趣味は裁縫です。これから3年間みんなと一緒に勉強できる事をとても楽しみにしています。宜しくお願いします。」
大きな拍手と共に、美人すぎる。同じクラスで嬉しい。とコソコソと話している声が聞こえてきた。
リリアナとはお茶会で一緒になる事も多く、見知っていたが、こんな大勢の人の前でも緊張せず笑顔で堂々と話す彼女はさすがだなと思った。
順番にクラスの子達が挨拶をしていき、自分の番が近づいてきてくる度に緊張で手汗がジワジワ出てきた。
「次、ローズ ・カーライル」
「は、はい!ローズ ・カーライルです。しゅ、趣味は読書です。よ、宜しくお願いします」
たくさん噛んでしまった。そんな私にも拍手をしてくれて助かるが、あれがギルバート様の妹か。なんか地味だな。と言う声が聞こえてきて、悲しくなった。
そんなの自分がわかってるわよ!大人になるにつれて自分の容姿が他の人と比べられ事が増えた。私は平凡で冴えない顔だ。おまけに人見知り。
この2年でより有名になって行った兄のギルバートと比べられる事も増えたが、見た目も似てないし、性格も真逆だ。勝手に比べて勝手に批判しないでほしいのに、劣っている自分にも嫌気がさす。
「では、全員の自己紹介も終わった事ですし、ちょうど良い時間になったので、入学式の会場に向かいます」
皆で列になり、ゾロゾロと向かった先は大きなホールで、私達が座ると程なくして入学式が進んでいった。
「では、次に在校生挨拶。ウィル・スペンサー」
つまらない話をボーッと聞いていた私だが、司会の人がその名前を呼んだだけで心臓がドキドキした。
ウィルが登壇すると、キャーと歓声があがり、私の周りに座ってる子達も、かっこよすぎる、ウィル王子と1年だけでも被れて良かった等話していた。




