Ophelia
蛻庵
真っ暗にし過ぎた。墨を出した本人ですら全然見えん。
「きゃ、どこさわってるんですか♡」
鎖骨。
「わっ、B兄ちゃん、余裕かましすぎ」
耳たぶ
「ピギィ?」
浮き出たあばら骨をギターのようにかき鳴らす!
「むー!?」
おっと、本物未亡人、デカイ。
「もー?」
む、この牛額、デカイ!
「ちょっと兄さん、手つきが、荒いよ」
?いや、草臥れジト目には触れてないぞまだ。
「くけけけけけ!実は朕が触ってましたぁ~可愛い~」
「むぎゅうー。ベイ兄も変なスイッチ持ってた」
「あ、ずるいやベイビー兄さん!僕も僕も!捕まえた!ぎゅう~」
「むぎゅうー」
くそ!混ざりたいが流石に時間かけすぎた!そろそろ偽物未亡人キツネ耳少年を懲らしめねば!
「くっ!いけ!茴香!」
飛行物体を勘に任せて掴む。ビチビチ跳ねるのを押さえ込んで目を凝らした。
黄色い小花の群れが、謎のエネルギーを白い球根から放出して飛ぶ仕組みのようだ。
狐といえば植物使いと相場が決まっている。こんな手品どころか念動力な攻撃手段まであるならなるほど厄介な能力だ。
飛び交う他の球根たちを掴んで握りつぶしたりぶつけ合ったりして沈めていく。
「《都合のいい思い出》」
突然身動きが取れなくなる。
目を凝らし鼻で嗅ぎ舌で感じれば、どうも魔力を細いゴム紐の様な性質に変えて辺りに張り巡らせていたようだ。1本では弱いが、複数絡まることで強固に縛られてしまったらしい。
ま、ドレインしちゃう俺には無意味なんだがな。ペロリと人嘗めで腰砕け。魔力はゴム紐の形状を維持できず崩壊する。
「《狂った振りの悲しい末路》」
また何か、手を替え品を替えやってきたな。忙しないやつだぜ。
何食らわされたのか知らないが、何、食らっちまえばこっちのもんだ。
「《陰忍雀》発動。《狂った振りの悲しい末路》」
「な!?」
なるほど、幻術なのか。
「さらに!《都合のいい思い出》!」
「そんな!?スキルのコピー!」
いいや、そっちは幻覚なのだ。
《陰忍雀》は他人の魔法やスキルを使えるスキルだが、使えるのは、直前に食らった1種類のみ。お前の頭が勝手にゴム紐に捕らえられたと勘違いして動けなくなってるのさ。
さあ、トドメかな!?
「沈め。《四季を摘めた手向けの花冠》」
キツネ耳少年から全方位攻撃。濁流の様に花叢が溢れ出し、黒い霧を吹き飛ばしながら攻め寄せる。
だが、こちとら花も恥じらう超絶美魔少年だ。肌に触れる端からドレインによって花は萎れていき、某か持っていたであろう特殊効果は発動しない。
うちのパーティーとこのボス相性悪っる!と思っていたが何のことはない、俺個人にとっては1番与しやすい相手だったな。微弱な魔法はだいたい何とかなるし。
ゆっくり近づき手を掴む。ドレインを続けているのでトリックスター的な転移も変わり身の術も出来まい。…出来ないよね?幻術も実は発動してたりしないよね?
まあ、いいや。ぶん殴ればわかる。
稲穂を模した杖をこちらに向けてきたので《掏摸替え》で俺の投石紐とキツネ耳の稲穂杖をすり替える。
更に、クソ重たいのでパーティーメンバーの足元に捨ててきた鎚矛とこの稲穂杖をすり替え、振りかぶる!
「タネは尽きたか?手品師?」
キツネ耳少年、手から何か魔法を出そうとするが甘いな。甘々だ。
そのまま鎚矛を振り下ろす!
そしてあたる直前に、草臥れジト目の薪雑棒と《掏摸替え》。小手を打って魔法を打ち消す。
「むー!ぷはっ!私の子です!!神様!その子は私の!」
本物未亡人がサル轡を外して叫ぶ。大丈夫。伝えたいことはわかっていた。
「未亡人っぽいのに純潔の匂いもしていたお前は、モンスターではあるが善人でもあるってことだ。悪意のある奴に、あんな匂いは出せない」
ペロペロペペロペロ。うなじとか耳とか舐める。うむ。純潔の味がする。
「この俺様神様に対して詐欺師染みたことをしてまで殺されようとした理由。聞かせて貰おうか。事次第によってはただ死ぬことも出来んぞ」
威厳たっぷりに御告げをする。観念した未亡人風キツネ耳少年モンスター裏切り仕立て純情派。しおらしくしても駄目だ!俺は最高に憤怒尊なんだからなo(*`ω´*)o!




