blackwhite partynight paladinknight3
イヌ耳だな。オレのデフォルトの顔にイヌ耳と尻尾がついてる姿になった。御母様が。
これあれか。狗尾草の国での風呂の時のやつか。
あれ?でもオレあの時は腹パン神官の見た目に変身してなかったか?じゃあこれはスーサイドのスーちゃんの妄想か。善く観察するとイヌ耳オレの鼻は濡れていた。イヌ鼻だ。
「自分の見た目に寄せちゃうよそりゃあさ!」
久しぶりの香箱スタイルで外界をシャットアウトするスーちゃん。狗尾草の匂い偏重文化に馴染めず、さりとてその他人類とは見た目がかけはななれている。その孤独を久しぶりに味わっているみたいだ。
楽しいなこれ。
ちなみに、案の定、H々ハム原木ソテー氏はブタ耳のビアンカ夫人、《赤の賢者》バライロデイズはネコ耳のビアンカ夫人になった。
混じりっけ無しのご本人であれば、彼らは何ら恥じることなく誇ってすらいただろうが、微妙に自分の種族に寄せちゃういじらしい健気な所が、彼ら自身にとってはどうも後ろめたさや恥ずかしさを刺激してしまうようで全員撃沈している。
あと誰だ?御母様の触手に触ってないやつ。
「はいはいはい!義兄教父様、わたし!わたしやってみたいです」
ズタ袋少女。《死神》のエリーゼが凄い食いついてくる。厄介な中立属性すら悉く撃退した御母様の深層心理コピー、甘くみられたものだな。お前も沈めぇ。
「あ、師匠になった。師匠だったんだ」
御母様がエプロン姿の子供に変わる。マァッドアルケミストグルゥメェェェ!うちの妹誑かしやがってぇぇ!
「ええええ!八つ当たりぃぃぃ!」
ズタ袋少女の隣に突っ立ってたマッドを、四肢とツインテール駆使、全身で拘束してから翼で飛ぶ。
コイツはどうなんだ!?コイツも辱しめてやらねば!
そのまま垂直投下、御母様の触手の海に沈める。以心伝心、無駄に触手でベトベトにしてから深層心理とやらを読み取ってくれた。
賢そうな少女の姿を御母様がとった。誰?
「わあ、懐かしいなぁ。生前の、人間だった頃の憧れの人なんです。図書室で善くおしゃべりしました」
エプロンをぎゅっと雑巾絞りして粘液を飛ばしながら頬を緩ませるマッドアルケミストグルメ。コック帽だかナースキャップだかもべっとり潰れて張り付いている。何かエ、…エモいな。うん。エモス。エモティシズムを感じる。
「そういえばB兄ちゃんはどうなのかな」
「うふふ。そうですね。B君兄様の恥じる顔を見たいですね」
「いやベイ兄。ビュー兄は純粋に結果が見たいだけだと思うよ」
「気になるな。ワタシはライ麦畑の姿になると思うんだガウ」
「え、わたしが出てくるに決まってるじゃないですか。こんな可愛い義妹がいるんだから」
「エリーゼ嬢、凄い自信だニャ。私に決まってるだろう。前世の夫婦ぞ」
「ピギィ。それだと私もちょっと嬉しいです。深層心理、魂の奥底に刻まれた想いが、こうして現世でも二人を巡り合わせたわけで、いえ決して、付き合いの長さが全てではありませんが、しかしお二人はその付き合いの深さだって」
凄い早口でしゃべり出したソテー氏。落ち着け。
ふむ。オレの深層心理か。オレの愛は無限に枠が空いてるし湧き出すし沸き上がるしな。全人類が一塊になって和気あいあいと出てきてしまうかもしれん。
「宿の女神官様だったりして」
おいやめろ邪聖少年。声だして叫ぶ自信があるぞそうなったら。最恐おねーさんはやめてくれよ。急に触手握手する気が失せた。血の気も失せるぜ。
「それあーく手、あーく手」
ズタ袋少女が囃し立てる。く、エエイ!ママよ!御母様だけに!
「ひぇ!デカッ、え?誰」
御母様が、2メートル近い体格となり一瞬ビビるが、巌の様な筋骨の若者に変身完了したので安心した。宿屋のおねーさんでは無かった、が、誰だこいつ?
耳の裏や脇を広げさせて匂いを嗅ぐ。年の頃15、6歳と言ったところで、蜜蜂薄荷たちの善く着ている軍服とやらに似た服装だが、見た目は禾穀に近い。
「それこそバライロさんの様に、B兄ちゃんの前世で会った人なのかな?」
ああ、流石は邪聖少年。頭が回るな。そうかもしれん。
ぐわし、と唐突に、巌筋骨に頭を撫でられた。手もでけぇなこいつ。いや、てか見た目が違うだけで中身は御母様なんだけどよ。
「お帰りなさいボウヤ。冒険のお話を聞かせてくれるかい?」
胴間声で優しげにされるとか違和感が半端ねえんだけど、御母様に人類の常識押し付けるのはナンセンスだからな。素直に甘えよう。軍服モドキの腰回りに抱きつく。
「うん。兄弟が出来たんだ。みんなを紹介するぜ」




