pork-poke-past5
藁で編んだ巨大人形を操り野山を駆ける。肩に乗る、というか藁の中にずぼっ、と体突っ込んで適当に固定してる。結構楽チンである。
「他国との断崖になっているこの連峰の隙間に、彼らの痕跡がありました」
「それは未来の、君にとっては過去の話だったかな竿兄弟」
ソテー氏の代わりに頷いてやる。1人で遡った時に、徹底的に調べたらしい。1人ではどうしても、ビアンカ夫人を救うことだけは出来なかったらしいが。
「そうさ、こいつ、お前と俺を救うために悪魔に魂売ったんだと俺にとっても竿兄弟」
「近いピギい近い2人とも離れて」
全く悪魔に魂しゃぶらせてる癖に肝っ玉が小さい奴だ。
肝っ玉しゃぶってやったら少しは太く大きくなるのかね?臥薪嘗胆的な?
丈の低い松の森を抜けて山頂近くの窪地を覗く。例の教団とやら、実際には王国の息のかかった暗殺者たち、の一時的な拠点を、この3人で叩くのだ。
ぶっ潰すだけなら《ヴォーグ》たるソテー氏だけで余裕だが、それでは根こそぎにできない。
バライロのコネクションと俺のテンプテーションでもっと上の連中を引きずり出して敵の肝心要をペロペロガブリと噛み殺すつもりだ。
「あれが家主さんかいご挨拶したほうが良いかな?」
「いや、どう考えても先客だろうがよ」
バライロのせいでツッコミに回ってしまうぜ。コイツは紳士を気取ってるが、紳士とやらは茶化してないと息も出来ない様な生命体なのかね?
荒れ果てたテントの群れの真ん中にポツンと1人。ピンと伸びたウサギ耳、ピチリとフィットする全身を覆うラバースーツ。
胸は無いが体型から悪実のメスとわかる
しかしわかるのはそれくらいで、1600万色くらいに光そうなバイザーとマフラーによって顔も判別できない。装備からくノ一なのだろうが。
くノ一だとしたら、何故か髪の毛もバイザーに連動して色がどんどんと変わるので全然忍べていないのだが大丈夫なのだろうか?
「お前、何者だ。ここの連中はどうした!?」
「ピギいや、どうみてもライ麦」
「油断するなソテー!《合気》の気配がする!仙道の練達者だ。あれは只者じゃないぞ」
「いや、何故いるのか、という点では確かに怪しいのですが」
「時間が惜しい。手短にいくぞ」
っ!?背中に声!
くノ一!いつの間に後ろに!?
バライロの関節を極め、身動きを封じた!これは《柔》と《骨法》!
「むん!」
「みぎゃあぁぁあにゃぁあ!」
ブチブチブチァとエグい音を鳴らしてバライロが真っ二つに裂け、いや!分裂した!?
これは、かつて這鼠刺のネズミー浄土で出会った夏梅のバライロ=デイズ、そして化け物に成り果てたデイファレントナイトだ。
ビアンカ夫人の惨殺によって惹き起こされた、精神に伴う肉体の分裂。
それを、謎のくノ一は、自身の卓越した仙道によって引き起こしたというのだろうか!
借りてきたネコみたいにびろーんと伸びてる夏梅と暴れるディファレントナイト。
「うるさい!もう!」
あ、癇癪起こしたみたいなキレ方でくノ一がディファレントの腹を!
めり込むような膝蹴りに堪らず毛玉を吐き出すディファレント。汚ねぇな。
「いや!あれは毛玉じゃない!私の魂だ。いや、魂じゃん!シャレにニャらん!返して返して!」
夏梅のバライロ、わたわた慌てるが首根っこ捕まれてるので手も足も出ない具合だ。
仕方ないので汚い毛玉色の魂を拾ってやる。何かゴワゴワしてるし本当にただの毛玉じゃないのかこれ?ソテー氏に渡したら糸に縒ってくれそう。
差し出したら慌ててガツガツ食べ出す夏梅のバライロ。毛玉食ってる様にしか見えん。
「これで、整合が取れる。安心するでゴザ、するといい」
「!?それは、つまり」
何やらに衝撃を受けるソテー氏と、何事か頷くくノ一。何だ?何を知っている?
「お前、いったい何者だ」
「ピギえ?マジでわかってないの?」
「ふふふ。今はまだ、名乗る時ではない。いずれまた。さらばだB-T」
「あなたも何故バレない自信に溢れてるんですか。急に声作らないで。やるなら最初からしてください」
「お前、俺の名を!?」
影のように揺らめいて、陽炎めいて消えた謎のくノ一。あいつ、俺の名前を知っていた?
しかし、ビアンカ夫人の肉体だぞ今の俺は。どうやって俺の名を知り、何故俺だと見抜いた。
「敵、ではないんだよな」
「敵、ではないですね。ええ」
「ねぇ、私の半身持ってかれたんだけど。私、ネコみたいな姿のままニャんだけど」
「いいじゃねえか。カワイイぞ」
抱き締めて谷間に挟んでやる。ネコの姿でもその凛々しさは些かも減じない。カッチョイイ旦那さまだぜ。
「ふう。私の向日葵畑、君が良いニャらまあ、いいか」
おうよ!