pork-poke-past3
晩と早朝と朝にキノコパーティーをした後、ソテー氏と共に村のハズレへ向かう。
善属性三人組やすっかり若返った村長一家も護衛を買って出てくれたのでぞろぞろ引き連れた。
「私1人では、きっとどうにもならないから。B-T氏が居れば、きっと運命も変えられます」
「でもよ、言いたかないけどリボルバーのタイムマシーンって」
1度、《ハッピーエンド》を迎えたらそこから覆せないのだ。そういう制約によって、過去がメチャクチャにならないよう防いでいるんだろうな。
奥さん死んで、自分も復讐鬼として、文字通り鬼になった未来がハッピーエンドとは俺も思えないけどね。
どうも、世の中ってのは判定が甘いらしいな。評価A、Bどころか、無味無臭のCも超えてD、Eくらいの、乾いた泥味の現実も、幸福認定している気がするぜ。
「私も詳細はわからないのですが、今回は問題ないと言われました。レビ様だけでなく、女神官様からも御墨付きでして」
レビ様って嫉妬の魔王か。あのモチモチモンスター。そっちはどーでも善いとして、おねーさんズから太鼓判押されてんなら問題ないのかね。
「私の手を握って下さい時を遡ります」
いや、手を握られたらタイムマシーン出せないんだけど、と言い出す前に両手をH々に握られ、つい癖で条件反射的に頭皮に鼻を押し付けてたので声も出せないまま某かの力が発動する。
ソテー氏め、だいぶ焦ってるらしい。まあ、悪魔的時間溯行が完了してからゆっくりタイムマシーン起動すれば善いか、と生きる麻薬とでも呼ぶべき幼生の体臭をフガフガ嗅いでたらトリップにより典型のように閃いた。
俺も悪魔やん、と。
かくして悪魔的時間溯行の効果は俺にも及び、ソテー氏共々過去を遡ることに。いや、俺確かに過去生を何度も繰り返してるけども、ソテー氏の幼少期なんて何百年前かわかんない時代には生まれてないんだけど。
魂だけ遡ったらどうなるんだろね?死?
「なるほど、今生はこういう死に方か」
《心のノート》にメモしとかなきゃな。
「ありゃ、肉体があるな」
粗末な物置小屋みたいな所で意識が蘇った。藁束と毛皮にくるまれて寝ていた風だ。
生乾きの薪が外に積み上がっていたので2、3本引っこ抜いてドレインでちゅぱちゅぱと水分を引っこ抜き、鋭い爪を生やしてカチ割った。便利な肉体だぜ。
更に目からビーム出して火をつけて囲炉裏にくべる。
あれ?サキュバスとしての力使えてる?何だこの体。
「あ、」
もぞりと、先程までぬくぬくしてた藁束から無食子の幼生体が出てきた。ソテー氏か。
しかも悪魔パワーで若返ったソテー氏でなく、純粋混じりっけ無しの幼生ソテー氏である。そこにオッサンソテー氏が乗り移っているということである。
ヴルストではなくタコサンウィンナーということだ。もしくは魚肉ソーセージかもしれん。何て精巧な偽造品だ。美味ければなんだって善いんだ。
「B-T氏、ですか?」
「おう。そうだが!」
うお、ぽろぽろボーロボロ泣き出した。どうしたソテー氏。
「そう、あなたが、だから、大丈夫、とレビアタン、は」
どうした泣くな泣くな。掬い上げてあやしてやる。どうもこの肉体、ずいぶん体格が善いのですっぽり包んでやった。可愛い奴め。
……ふむ。このままもっと泣きじゃくらせるか。
「……あっ、ダメですそれは!それはダメです裏切りです。裏切りになっちゃう」
おお、何か反応が新鮮。中身がオッサンなソテー氏は、ナニヤっても丁寧な反応しか返らないのに、この初心な反応、魂までも若返ったのだろうか!
「ええやんええやん。強めのチューくらい、芭蕉じゃ挨拶替わりだぜ」
ちょっと強めに肉と肉がチューするだけだじゃねえかよ。列車内でも善くしたろ。
「ピッ。ダメです!その姿は!解釈ちがいー!」
「おや、凄い現場を観てしまったニャ」
狩猟小屋の戸を開いて、全身真っ赤な、貴族の狩猟服を着たような郁子の美女が入れる寸前に入ってきた。
固まる俺たちを気にせず、部屋の角に転がして置いた根のついた切り株に腰を下ろし、囲炉裏の鉄瓶に茶葉をぶちこむ。陶製のコップに、昨日作りたての鬼猿梨のジャムと一緒に注いでズビズビ飲んだ。
こてんと首を傾げる俺の旦那。相変わらずスゲエカワイイ。って、コイツもしかしてあれか。
「ソテー氏、もしかしてコレがバライロ=デイズ?」
いや、オスだったじゃんどう見ても。あの全裸怪獣決戦の時とか裸だったじゃん。トゲがトゲトゲだったじゃん。ナニコレ?別の世界線に来ちゃった?
「はあ、いえ、バライロ氏は外はどうあれ中身が完全にオスでしたからね。肉体が変異分裂した時に、精神に引っ張られたとしてもおかしくありません。郁子ってけっこー適当な生き物だし」
あー、悪実や蕗冬も妖精に近い連中だが、郁子は特にその傾向が強いもんな。郁子。宜なるかな、無辺なるものってことなのかね。
「どうした私の向日葵畑よ。続けたまえ。君の乱れた姿を観ながら飲むお茶が1番美味しいのだから」
とりあえず、ぶん殴っておいた。邪魔が挿入らなければ強めのチューを擦る気満々だったわけだが、それとこれとは話が違うのだ。
「やれやれ、乙女心は複雑怪奇だな。そう思わないかい間男ならぬ間少年」
「あはは、相変わらずですね」
この感じ。やっぱり中立属性ってのは苦手だぜ。