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Ophelia2

「あれは10年前、まだ両親が健在で、宿を継ぐ気もなく、私は一介の冒険者として山の管理をしておりました」


 本物未亡人と偽物未亡人風キツネ耳少年型モンスター裏切り仕立て純情派を並べて、その弁明を聞いている。何故か、牛額(ミノタウロス)もいそいそと自ら横に並んで座った。図体デカイのにとても可愛い。


「ある時、突然に新たなダンジョンが現れました。それがこの《温泉湧く湧くランド》だったのです」



 ~回想シーン☆~


「ぬぅん!」


 大鉞(おおまさかり)を左右に2本持ち、小枝を払うようにモンスターを蹴散らしていく。


「ギチギチィ」


 浴衣装備のみ、というふざけた装備制限があるようだが、鋼のように鍛えた己の肉体には、如何ほどの傷もつかない。制限により装備が外れるも、入り口に防具を放り捨てたままダンジョンを下りていく。


「ふはははは!脆い。脆いな。なんだこの軟弱なダンジョンは。我に食われる為に生まれたのかぁ?バキバキムシャァ」


「ギチィ」


「トフゥ」


 ハチも豆腐も味噌蒟蒻も凪払い、腹の中に収めてはあっという間に最下層、ボス部屋へとたどり着いた。



 いや、待て、これ本物未亡人の回想なの?何か顔が別人というか、輪郭とか陰影とかおかしいんだけど。若い頃はヤンチャだったとか所の話じゃなくない?


「ほう、うぬがダンジョンのボスか」


 ほらうぬとか言ってるし、子ギツネモンスター怯えてるじゃん。縮尺もおかしいんだけど。頭から丸呑み出来るよ。


「コーン!」


「ぬう、逃げるか!?戦えい臆病者がぁぁぁ!!」


 どっちがモンスターかわからないよ。通路とか破壊しながら追い詰めていってるし未亡人覇者。


「コンコンコンコン」


 体の小ささを利用して子ギツネ、おそらく偽物未亡人少年の真の姿らしきそれが、巧みに逃げ続け、遂に、ダンジョン入り口の階段を上りきった!やったね!主人公はお前だよ!


「こぉーぉーん!」


「ぬう?ダンジョンを抜け出した?ボスモンスターが?」


 入り口を破壊しながら出てくる未亡人覇者。いや、何でだよ。入る時は普通に入ったじゃん。何で出るときぶち壊さないと出られなかったんだよ。縮尺よ。


「変異種なのか?面白い。生け捕りにせねばな」


 ~回想終わり☆~



「こうして、山を平らげる勢いで追いかけ回し、遂には私の両親に匿われ、人類に懐いた子ギツネが、今、私の息子でありますこのゼイアンでございます」


 そっちよりもあんたの変化の方が気になるのよ。どうやってそんな妖艶に変われたの?狂乱だったじゃんどちらかと言えば。


「お恥ずかしいですわお客様。女将修行の賜物、ですね」


 可愛い。過去なんてどうでも善いな。今だけが真実だぜ。


「んで?10年問題なくやってこれたのに、今になってどうして反逆なんてしたんだぜゼイアン」


 本気で暗殺企てたなら旧王家の回し者だろうが、最終的には殺されようとしてたよな。


「それには、この牛額(ミノタウロス)のモーモーの事をご説明せねばなりません。神様」


「モー?」


 可愛い。そういやこいつ何なんだ?中ボス?こんなちっちゃいダンジョンで?


「おそらくは、ダンジョンの恒常性維持機能なのです神様」


「なるほど、ボスの代わりか」


 どういうことだ、察しが早すぎるぞ邪聖少年ビューティー。


「このキツネくんが役割を果たさずに外に出ているから、ボス擬きとしてこのウシさんが生まれたんじゃないかってこと。ほら、ザリガニの異形再生みたいなもんだよ」


 目が取れたら代わりに触角が生えてきたってやつか?代わりにならんだろそれじゃ。


「だからキツネくんは心配だったんだろうさ。まだ優しいこのウシさんだったから良かったけど、これが凶悪なモンスターで、それもダンジョンから自由に出られるとしたら?」


「おっしゃる通りです。新しい王様。このモーモーも、また、私と同じように自由にダンジョンを出入り出来る。だとしたら、次の子は、と」


 ブチブチブチィ!


「ほう、それで?俺様を利用して盛大な自殺をしようと?ずいぶんと孝行息子だなぁ」


「お許しくださいお客様。この子は私の為を思って。モンスターを外に連れ出してしまった咎を隠すために。全ては私の責任でございます」


 その通りだな。


「オフィーリアの女将よ。ではお前の罰は肉刑だ。打擲10万回に処す」


「はい。謹んでお受けいたします」


「普通、100回でも人は耐えられないものだ。それを10万回ともなると、終わったらお前は物言わぬただの肉塊になっているだろう」


「そんな!神様!僕が代わりに罰を受けます何卒!」


「黙れぇ!モンスター風情が!刑罰は人間様のみが受けられるんだよぉ!安心しろよ。母親が終わったら次はお前だ」


「どうか!どうかこの子はお許しください!」


「もーもー!」


 潤んだ目が6つ並んでこちらの慈悲を請おうとする。もうあったまきた!完全に憤怒尊(ぷんすかぷん)だ。


「だまれぇ罪人どもがぁ!これからすぐにでも刑執行なんだよぉ!」


 それと、お前に至っては何となくだ!何となくで肉刑してやるウシモンスターめが!可愛い瞳で懇願しやがって!その体格に見合う体力を見せて貰いたいぜ!


「えーと、秒間3回打擲するとして大体9時間か。それを3人分で、どうせもう1周するだろうから、明明後日の朝には麓の領主と会談できるかな」


「いいのビュー兄。そんな理由で偉い人待たせて」


「まあ、いいや。遅かれ早かれだし。早速そういう神様だと認知して貰おう」


「えぇ……間に合うんですか巡幸。たった1年で」


「これ見越して巡幸を1年にしたから大丈夫。大分余裕あるよ。ベイビー兄さん混ざりにいかないで。ややこしくなるから」


「……はい。しょぼん」


「え、列車ってそんな早いんだ。すごいな……あ、鎚矛(メイス)持ってる!装備できる!?わーいわーい!やったー!」


 俺のスキル《掏摸替え(サイドステップ)》によって薪雑棒と鎚矛を入れ換えられたままの草臥れジト目、ご満悦である。


 そうか、スキルで弄れば装備出来るんなら色々応用出来そうだな。


 そして俺の手元には薪雑棒。一晩経てば持ち主の手元に戻ってしまうが、これは使えるな。


 ナイフで削り、形を整える。肉刑が捗るぜ!!


 さあ、女将!背中を向けろ!刑罰のはじまりだぜぇぇぇ!!

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