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メイド・イン・アナザーワールド  作者: ヨルノツキ
第一章 学園入学編
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第一章15:絡まる関係

 そうして目覚めた翌日、フレアに笑われながらも注意され、特に体への支障はなかったので翌日はメイヘムへと登校したのだが、そこでバーラ先生が普段の温厚な雰囲気を消して叱られてしまった。

まぁ、それ程危険な行為だと言う事だろう。思えばフレアも注意する時は至極真面目だったし。

周りの反応を見てより注意した方が良いと自分を戒めることにした。

 ちなみにこの学園のカリキュラムについても詳しく聞いてみたのだが、午前中は俺が経験したような使用人の業務についての授業全般。午後は魔獣に対処する為に魔法や剣術などの授業というとても特殊なカリキュラムだった。

いや、普通思わないだろ、こんなメイドさん達が居る場所で戦うための授業を行うとか。

もう何度目かも分からない程にこの世界に落ち込まされたものである。

だが、この名付魔法(ネームドマジック)を使った影響は俺の考えた以上に大きかったようだ。


「…………」


 バーラ先生にお叱りを受けた後、教室に戻ったのだが昨日とはその雰囲気が一変していた。

少し好奇が混じった視線だったのだが、今は完全にこちらを畏怖するようなものへと変貌しているのだ。

正直、肩身が狭い。視線を合わせようとすると全力で逸らされるし。


「あっ、ソシアさん。大丈夫っすか?いきなり名付魔法(ネームドマジック)を使うなんて驚いたっすよ~」


 そんな俺の元に、教室の雰囲気を物ともせずにリサさんが駆け寄ってきてくれた。

昨日といい本当に有難い話である。


「バーラ先生に厳重注意を貰いましたけど体の方は大丈夫です。けど――」


 俺がチラリと教室へと視線を移すと彼女も分かっているとばかりに頷く。


「ソシアさんの事を包み隠さず説明したんすけど……やっぱり昨日のは元々あった誤解を加速させたぽいっすね~」


「……名付魔法(ネームドマジック)使うとやっぱり不味かったんですか」


「そりゃ不味いっすよ。名付魔法(ネームドマジック)は基本的に平民なんかに使えるものじゃないっすから~」


 確か昨日のライラさんの説明だと名付魔法をしっかりと扱えるのは、適正のある一部の選ばれた人間のみらしい。その選ばれた人間が当てはまるのが正に貴族ということか。

それに元々、面倒な誤解を持っていた俺が発動させてしまったら、品定めしているようなクラスメイトの誤解が現実だと思われてしまう訳である。


「でも、私、失敗していましたよね?」


「そもそも平民には名付魔法(ネームドマジック)は選択肢に入って無いっすよ。多分、私達に合わせるように何か魔法の制限を受けている、理事長の隠し子とでも思われてるんじゃないすか?」


 本当の実力は伴っていないのに周りが誤解して、勝手に強いと思われてしまうパターンか。

せっかくリサさんから事情を聴けて後はこの誤解を解くだけだと思っていたのだが……どうやら面倒臭い方向に事態は動いているらしい。

 もっと積極的に説明しとけばよかったか……いや、リサさんから話聞くまで何も分からなかったから結局状況は変わらないか。

俺が納得していると、リサさんはメモを片手にこちらへと迫ってきた


「それで、本当はどうして名付魔法(ネームドマジック)なんて使ったんすか?」


「あー……昨日が魔法使うのが初めてだったんです。だから名付魔法(ネームドマジック)のことも知らなくて……」


「……ちょっと、冗談は辞めてくださいっすよ~。あっ、緊張して思わず使っちゃったとかそういう感じすか。別に隠さなくても良いっすのに~」


 特に言い訳も思いつかなかったので、そのままの真実を伝えると普通に笑い飛ばされた。

冗談も何もこれが包み隠せない真実なのだが。

俺の言葉を微塵をも信じていない所から、魔法を使用したことが無いというのは相当大きい意味を持つらしいのが分かる。

とはいえ、俺も昨日で魔法使いの仲間入りを果たしているようだし、足りない知識はライラさんに埋めて貰って過ごしていくとしよう。


「そんな感じです。それよりも、この現状なんとかなりませんか?」


 別にそちらの誤解は放置しても良いが、教室の現状はどうにかしなければ。

正直俺のメイドさんとキャッキャウフフという欲望を抜きにしても失踪事件の調査の為になるべく多くの生徒と知り合っておきたいというのが本音だ。



「今の状況をどうにかするのは難しいと思うっすよ~」


「なるべく友好関係は広げていきたいんですけど……」


「うーん。試しに話しかけてみたら分かると思うっす」


 諦める訳にはいかないと思ったい俺に対して、リサさんからそんな提案が。

確かにまだ自分から説明するのは試していない。話さえすることが出来たらそんな大層な誤解もすぐに――。


「あの――」


「はい……えっ、ソ、ソシア様っ!?私、何か粗相を!」


「いや、少しお話が……」


「――お願いしますっ!貯めている貯金も、服も!それに女性が好きだというなら、わ、私の体も……」


「……いや、大丈夫です」


 何故か普通に話し掛けただけの筈なのにいつのまにか目の前のメイドさんに平身低頭されていた。

まるで拳銃でも突き付けられているような必死な形相で対応してくるほどの変わりよう。しかもいつの間にか様まで付いてるし。

そのあまりにもな怯えように話など出来る状態ではないと判断した俺はリサさんの元へと戻る。


「私は悪魔だとでも思われているんですか?」


 仮に大貴族かなんかと誤解されているなら、今のは間違いなく悪徳貴族筆頭だろう。

いきなり体まで差し出してくるとか、町一つ滅ぼした経験でもあるのか。


「それが大貴族って存在っすよ。彼らの裁量一つで家どころか地方の町一つ滅ぼせるっすから。私もリリス様には同じ反応になると思うっす。だから普通に話してるソシアさんが凄いんすよ」


 一応、冗談だったのだが、本当に滅ぼせるほどの力を持ってるのか。

漠然と偉い存在だと考えていたが、この世界の貴族階級について考えを改めた方が良いかもしれない。

しかし、別に男共はどちらでも良いが、メイドさん達と仲良くなれない状況なのは俺としてはかなり堪える状況だなぁ。


「まぁ、諦めずに話し掛けて、目立たずに授業受けていれば解決すると思うっすよ」


 とりあえずはリサさんという可愛いくて頼もしいメイドさんとお近づきになれたので良しとするか。

しばらくは、誤解を解く為に学校を走り回ることになりそうだ。




 そしてもう一方、リリスさんと親しくなるという目標に関しても難航していた。

事情を聞いた限り周りが大貴族だから恐れ多いと思っているだけなので、それさえ気にしなければ仲良くなるのは容易だろう。

そう思っていたのだが――


・昼休み   ×


「リリスさん今日こそお昼でも――」


「……遠慮しておきます」


 もちろん、食堂でリリスさんの行方を探ったのだが、どこにも見つからなかった。

この学園は平民が大半を占めている都合上昼食は基本的に食堂で取る筈なのだが……どこかでお弁当を食べているとでもいうのだろうか。


・授業   △


「あの、リリスさん。ここの問題なんですけど……」


「……ここはアーリーの大森林が入ります」


 他にも教室の場所なども答えてくれるが雑談になるとすぐさま断られるといったあくまで同じクラスメイトとしての事務的に対応しているような感じだ。


・下校    ×


「リリスさん!一緒に帰りましょう!」


「……私は学園の寮に住んでいるので」


 そういえば、この学園は地方から出て来た生徒も居るので学生寮が存在している。

リリスさんもそこに住んでいるようで、俺もシャウラさんの屋敷から通っている為、下校は不可能である。


 それでも、希望を捨てなければ少しは反応が変わると思ったのだが、微塵も好感度が動いている気配がない。

むしろ真面目に授業を受け、分からないことは丁寧に教えてくれるので、むしろ俺の好感度の方が上がっていくんですけど……。

 あくまで避けているのは周りの生徒達の筈なのだが、まさかここまで隙が無いとは。


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