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好きな人に何度も告白するのはおかしいですか?  作者: 桜城カズマ
√大塚愛華
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第4話「ふう、今日も暇だな……」

それから、大塚先輩におすすめしてもらった本を読んだり、逆に俺が本をおすすめしたりして日々は続いた。

先輩は割となんでも本なら読むようで、ライトノベルに対しても特に文句も言わず貸した物を読んでくれたのがなんとなく嬉しくなった。


「ふう、今日も暇だな……」


昼休み、図書室でそうつぶやく。この学校は図書室の利用者が少ない。

それはそれで楽でいいのだが、なんだか物足りない気がする。


「なんかイベントでもしてみるかね……」


「それいいですね。やりましょう」


俺がなんとなく思ったことをつぶやいただけなのだが、どうやら聞かれていたらしい。

声の主は綾香だった。


「いや、冗談だよ」


「そうですか。私はいい案だと思ったんですけど」


「ところで綾香、何かあったか?」


「え?あーいえ、何もありませんよ。どうしたんですか、急に」


「なんかいつもと違うような……くる時間もいつもより遅いし」


そう、なにか違うのだ。まあ、何が違うのかはよくわからないけれど。


「え、いつも何時に来るとかみてるんですかきもいですね」


すごい毒舌だ⁉ 初めて見る一面だよ。

「うん?いや、基本、俺と同じタイミングで来るだろ」


俺は涙を我慢して弁解する。ハートがガラスとかそういうことじゃない。

だって、普段そういうこと言わない奴からそういうこと言われたらダメージ半端ないじゃん?


「あ、そうですね」


「ま、なんかあったら頼れよ。俺にできることだったら手伝ってやる」


「……はい、そうさせてもらいますね」


話がひと段落ついたところで、今日の仕事を始める。

今日の仕事は未返却者のリスト作り、多読賞者のチェックだ。

学校の方針で、司書がやるような仕事まですることになっている。確か、生徒の社会性がどうたらこうたら。


「ねえねえ、これ、返すね」


図書室だからか、小声で俺に話しかけられる。話しかけてきたのは、大塚先輩だった。


「えっと……何をです?」


「キミから借りるものなんて決まってるでしょ?本」


「え、読み終わったんですか?」


確か俺が一巻を貸した、『然るシリーズ』を気に入ったらしく「全部貸して!」と前かがみになって頼んできたから昨日約三分の一――大体二〇冊貸した。持ってくるのも大変だった。

それを昨日で全部読んだ・・・・・・だと・・・・・・?


「うん、面白くて徹夜で読んじゃった。……おかげで眠いの……んぁ」


あくびを掻く先輩のそのしぐさが、妙に艶めかしく感じてしまう。


「いやいや、徹夜でも読み切れる量じゃないですよ……?」


「そう? 小さいころから本を読んでるからねえ」


「それにしても・・・・・・まあいいです」


「ふふっ、驚いたでしょ?」


「はい」


「それじゃあ明日また続き持ってきてねー。私はここで仮眠するけど・・・・・・いいよね?」


「まあ・・・・・・いいですよ」


先輩はいうが早いがすぐそこの読書スペースで腕を枕にして「すぅ・・・・・・すぅ・・・・・・」と寝息を立て始めた。今度からたくさん貸すときも油断せず次の分を・・・・・・というかあの人受験生だよな・・・・・・?減らすべきか。


「最近大塚先輩と随分と仲がよろしいようですね?」


「そう?本を貸したり借りたり、おすすめしたりされたりしてるだけだよ」


「その割には結構・・・・・・まあいいです」


綾香と軽く会話しながら俺は図書室用のパソコンを操作し、未返却者を洗い出していく。とは言っても、本を借りる人自体が少ないのですぐに終わる。


「よし、ひ――」


「あっははは!なあこれ面白くね?」


「え?見せてみ……っぷ、なにこれ、マジおもしれーじゃん!」


「だろー?」


暇だと言おうとしたらそんな声が図書室に響く。

なんてこったこんなこと始めてだ。

仮眠をしていた先輩が「ううん・・・・・・?」と身じろぐ。

先輩が眠いのは俺のせいでもあるし、ここはちゃんと寝かせてあげたい・・・・・・けどちょっとああいうのは関わりたくない・・・・・・。


「先輩、私注意してきます」


綾香がそんなことを言うので俺もついていくことにする。

向かった先には笑いながらマンガを貸しあっている男子が二人いた。

ピンの色は黄色、3年生だ。自分から言い出した割に、綾香はちょっと怯えているのが見ていて分かった。


「すみません先輩方。少し静かにしていただけますか?」


綾香が注意できそうになかったので、俺が注意をする。


「あ?んだよお前?」


「2年が3年に指図するのか?」


イラっとした様子で俺の方をにらむ。

『んだよお前』って……全校朝会の時たまに話すから俺が図書委員長ってことくらい知ってると思うんだけどな……まあいいか。


「指図ではないですよ、先輩方。お願いです。図書室は静かに本を読んだり、借りたりする場所です。マンガの話は教室でしてください」


もっとも、この時期3年生は受験でピリピリとした空気でそんな話はできないだろうが。


「生意気な2年だな……って愛華⁉」


「え?」


俺は先輩の言葉に驚き、後ろを振り向く。だがそこに先輩の姿はなかった。


「「かかったな、あほめ!」」


背後からそう先輩たちの声がする。振り返ると、先輩たちが殴りかかって来ていた。


「あぶなッ」


俺はそれを慌ててしゃがんで避ける。しかし避けたことによって拳が向かう先は綾香へ。


「きゃっ」


「やべっ」


俺は慌てて二人の腰に手を回し態勢を崩す。


「うがっ……」


「いてえっ……」


二人の声を無視して俺は背中を押さえつける。


「ごめんなさい、こんなことしたくはなかったんですけど・・・・・・」


そう言ってから二人を開放すると、俺をにらんで走って図書室を出て行った。さて。


「綾香、大丈夫か?」


さっきから心配だった綾香に聞くと、そう答えた。


「はい、何もされてないので。……すみません、何もできなくて」


うつむきがちに綾香はそういう。


「いや、気にしなくていいよ。というかごめんね、さっき俺が避けたばっかりに綾香を危ない目に合わせた」


「いえ、本当に大丈夫です先輩が守ってくれたので」


「そっか。じゃ、受付に戻るか」


「はい」


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