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好きな人に何度も告白するのはおかしいですか?  作者: 桜城カズマ
√大塚愛華
4/5

第3話「「なんだよ恋バナじゃないのかよ」」

「どうした優。顔色いいじゃないか」


教室へ戻り授業の準備をしていると、近づいてきた隆司がそういってきた。


「そうか?」


「ああ、なんか、こう……にやあっとしてるぞ」


「え、何それきもっ」


「お前の事だよ……なんだ?恋か?好きな人できたか?春が来たか?」


「馬鹿言えそんなんじゃねえよ」


本当に違う。確かに大塚先輩は人懐っこくて笑顔がすごくかわいいとか思ってしまったが、恋とか好きとか、そういったのでは全く持ってない。というか今朝まで未練タラタラだった男がそう簡単に大塚先輩に惚れたらそれはそれでなんか引く。まあ自分のことだが。


「で、誰なんだ?」


「ラッキーなことがあっただけだよ」


「それで? 誰だ誰だ、誰なんだ?」


「そうよ。誰よ、誰よ、誰なのよっ」


「おい、なに自然に会話に交ざろうとしてるんだよ、裕子」


いつの間にか隆司と同じ幼馴染の、亀井裕子(かめいゆうこ)が会話に交ざっていた。

いつも通り軽くウェーブのかかった黒髪ショートヘアがばっちり決まっている。

本当に面倒な奴に絡まれたものだ。


「んー?友達と話してたら優と隆司のコイバナが聞こえて」


にやにやしながら裕子はそんなことを言う。碌な奴じゃない。まあそれでもそれなりに付き合いのあるやつだし心も許していることには許しているし、俺が未練タラタラなのを知っている数少ない友人でもあるのだが。


「だから恋バナじゃないってば」


「まあまあ。で、誰なんだ、優?」


「ああ、えっと……大塚先輩とお近づきになれてラッキーってだけだよ」


「「なんだよ恋バナじゃないのかよ」」


はぁああああ、と二人そろって大きくため息を吐く。自分から聞いておいてその反応ってひどくないか。というか俺だって否定してたよね?


「だから違うって言ってるじゃないか」


久しぶりでもないし何なら毎日のことだが、俺の親友たちに呆れてしまう。


キーン、コーン、カーン、コーン、キーン、コーン、カーン、コーン…………


5限の始まりを伝えるチャイムが鳴ったタイミングで2人は自分の席に戻っていき、話は終わったのだった。



☆☆ ☆ ☆ ☆



放課後になり、クリスマス祭委員の集まりはクリスマス祭の実行委員長を決める、という話だったのだが、千鶴さんが立候補してすぐに終わった。


「ねえ夜桜くん、これたのんでいいかな?」


そう言って先生はプリントを渡してきた。


「え、これは……?」


「図書室の今月の蔵書購入用の費用確認書。司書の先生に渡しておいて」


「え、でもいつもは先生が渡してますよね?」


俺がそう聞くと、


「あー・・・・・・、えっと、私合コンあるから」


と照れ臭そうに答えた。ちょっとばかりドキッとしてしまった自分を呪いたくなった。

というか、なんでこんなにかわいいのに30超えても浮いた話の一つもなく合コンなんてしているのだろう。


「ま……どうだっていいことか」



☆☆ ☆ ☆ ☆



「失礼します」


放課後ということもあり、図書室は昼休みの時よりも静かだった。


「これ、わたしてくださいって、先生が」


「はい、ありがとう」


司書さんに用紙を渡し終え、帰ってもすることなし、今日借りた本をちょっと読んで帰ろうかと、お気に入りのスペースへと向かった。


「おお……」


一瞬、世界が止まったかのように思えた。

例え世界が終わっても彼女はそこにいるだろう、そう錯覚させられた。

大塚先輩が、夕日に照らされながら、本を読んでいた。

少し開けられた窓から、軽く風が先輩の長い髪を揺らし、髪を抑えようとして・・・・・・俺と目が合った。


「ん?あ、優君、どうしたの?」


先輩は本にしおりを挟み、読む手をとめてこちらを向く。


「へ?あ、み、見惚れてしまって……」


「っへ?」


先輩は素っ頓狂な声をあげ、ちょっとばかり顔を赤らめる。そのことが自分でも分かったのか、持っていた本と手を使って顔を覆い、


「あ、ありがとう」


と、一言。


「・・・・・・って、そんなこと言ってからかわないでよ」


「い、いえ……本気でそう思って」


赤みが若干引いてから元に戻ってから俺にそういうが、俺も俺で反射で訳の分からないことを返してしまった。

そして先輩はまた「ええっ・・・・・・あう・・・・・・」とまた本と手で顔を隠した。けれど続いた言葉は先ほどと違う。「ねぇ」


「――もしかして、私のこと、好き? ・・・・・・なんてね?」


「え?」


多分、肯定したところでフラれるだろう。それに、俺は別に先輩のことが好きという訳ではない。

だが、さっきの先輩は――。


「・・・・・・どう、なの?」


先輩の顔からは赤みが引いて、俺の顔を覗き込んでくる。


「――なんて答えたらいいのか・・・・・・」


「ふふっ、そっかそっか」


先輩は笑った。その姿にまた俺は見蕩れてしまいそうになる。


「先輩……?」


「ああ、ごめんね? そんなふうに答えられたの初めてだったから」


「そ、そうですか……」


「うん。というか何だか私、キミには出会ってから謝ってばっかりかも」


「今日で会ったばっかりで何言ってるんですか」


先輩は「あはは、確かに」と笑う。

大塚愛華先輩。校内のアイドル的存在だけど――。

これからも仲よくできたらいいな、なんてこの時は本当にただただ、そう思うのだった。


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