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好きな人に何度も告白するのはおかしいですか?  作者: 桜城カズマ
√大塚愛華
2/5

第1話「なあ、お前は彼女作らないのか?」

「季節は10月。そろそろ、クリスマス祭が近づいてきました。そこで、実行委員を決めようと思います。誰か、立候補者はいませんかー?」


「クリスマス祭か……」


俺は誰にも聞こえないようつぶやく。

クリスマス祭。うちの星光高校では、文化祭がない代わりに、24、25日の二日間、クラスや部活が地域と協力して出し物をする。ちなみに、参加するかしないかは自由である。文化祭と違うのはそれくらいだろう。

2か月前から準備するのは余裕をもたせるためだ。

まあ、俺はやる気もそこまでないので、持ってきていた本を取り出し先生からは見えないよう、机の下で読む。


「誰もいないのー?」


先生が再び実行委員の立候補者がいないのか聞く。


「先生、誰も立候補者がいないのなら、私が引き受けましょうか?」


そういってクラス委員長――久保田千鶴(くぼたちづる)さんが立ち上がる。

しかしまあ、よく久保田さんは、みんなが嫌がるようなことを進んで引き受けるよな……なんでだろう。


「え、でも久保田さん、クラス委員長仕事もあるわよね?」


「はい。でも、この時期はそんなに仕事多くないので」


「じゃあ――って、夜桜くん、何してるの?」


「・・・・・・」


聞き間違いで会ったほしかったが、先生はしっかりと俺の名前を呼んでいた。

まじかー。ばれるかー。


「あっ、えと、いや・・・・・・」


「本読んでたわね?」


「・・・・・・はい」


俺が言い淀んでいると、先生は確認を取ってくる。俺はそれを認めることしかできない。


「夜桜くん。あなた暇よね?帰宅部だし」


「え、ええ…・・・まあ」


・・・・・・ん? おい、ちょっと待て、なんだか面倒なことを押し付けられる予感がする。


「じゃあ、夜桜くん。久保田さんの仕事を手伝ってはくれないかしら」


ほら来たよ。面倒なことになった。しかも断れそうな雰囲気じゃない。そもそも、俺が本を読んでいたのが悪いのだから。

故に、俺にある選択肢はたった一つ。ほかにはない。「はい」と首を縦に振ることのみ。


「わかりました」


俺は面倒くささを隠して、そう口にする。


「さて――」


実行委員、そしてその手伝いが決まったので先生はいつも通り連絡を伝え始めた。



☆ ☆ ☆ ☆



朝っぱらから嫌なイベント――それもしばらくの間続きそう――があったものの、それ以外はいつも通りの日常が過ぎていき、昼休みを迎えた。俺と隆司二人で購買へ走り、買ってきたパンと飲み物を机の上に広げ食べていた。


「なあ、お前は彼女作らないのか?」


焼きそばパンを食べていると、隆司が聞いてくる。


「ん?」


「いやだから、彼女だよ、か・の・じょ」


隆司はこういう話が大好きでこうなると面倒から、さっさと話をそらしたいところだ。


「つくらねぇよ。というかその言い方、お前は作るのか?」


「へへっ、そうだよ」


鼻を掻きながら少し照れ臭そうに隆司は答える。正直男がそれをしてもちょっとキモいくらいだ。


「なんでだ?」


「ああ?野暮なこと聞くなよ、優。もうすぐクリスマス、かわいい彼女と過ごしたくはないのか?俺は過ごしたい!」


隆司は拳を握りながら言う。周囲の注目を少し集めているから今すぐにでもやめていただきたい。


「お前は欲望に忠実だな」


僕は苦笑いをしながらいう。


「いいだろ、別に。それで、お前はどうなんだよ」


隆司はつまらなそうにそう吐き捨て、聞いてきた。まあ確かに、本心を隠して話されるよりかは、断然気が楽でいい。


「俺はいいんだよ。心に決めた人がいるからな」


俺は適当なことを言って誤魔化すことに決めた。


「全く、いつまで引き摺ってるんだか」


「それは俺のセリフだ。俺だってどうにかしてえよ」


それができないから、こうして拗れているのだろう。


「ねえ、ちょっといいかしら」


会話がひと段落ついたところを見計らったように女の子から声を掛けられる。


「おっす、千鶴さん。優に用事か?」


「ええ。クリスマス祭の実行委員で話したいことがあって」


そうだった。俺クリスマス祭の実行委員だった。

あまり気は乗らないが、自業自得な上に、クラス全体でする最後で最大のイベントだ。できれば失敗とかせず、いい雰囲気で終わらせたい。


「話したいことって何?」


「そうね、とりあえず、今日の放課後クリスマス祭の実行委員で集まりがあるみたいだから、それには絶対参加して頂戴ってことを伝えに来たの。ほら、あなたちょっと忘れてそうだったし」


よくわかっているじゃないか。正直言って忘れていたどころか、知らなかったまであるのは黙っていよう。千鶴さんは怒ると怖いのだ。


「了解。ごめんねわざわざ」


「ううん、いいのいいの。・・・・・・去年みたいに伝えずに初っ端からしくじりたくはないもの。じゃあね」


笑顔で手を振ってから千鶴さんは去る。

・・・・・・笑顔で千鶴さんがボソッと恨めしそうに呟いたのは聞かなかったことにしておこう。うん、それが幸せだ。


「じゃ、俺は図書室に行くから」


パンを食べ終えてからゴミになった袋をゴミ箱に捨て、隆司にそう告げてから教室を出ていく。


「おう、行ってこい」


後ろから聞こえた隆司の声に俺は振り返らず手を軽く後ろに向けて振って教室を出た。


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