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好きな人に何度も告白するのはおかしいですか?  作者: 桜城カズマ
√大塚愛華
1/5

プロローグ

――2年前

「ごめん、わかれよう?私たち」


別れの言葉はそれだけで、俺――夜桜優という男の人生初の彼女は、「好きって感情がよくわからなくなっちゃった」と言って別れを告げてきた。

付きあって3か月。未練はタラタラで、フラれてからも何度もアタックした。

けれど違う高校に通うことになり、彼女と会うことはなくなった。

結果、俺の中には恋愛に関する苦手意識だけが、残った。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



――現在


「お兄ちゃ~ん?起きてるの~?」


朝、体を揺らされてぼんやりと覚醒し始めていた意識を、ハッキリとさせてくれる高い声が僕の鼓膜を叩く。

意識は完全に覚醒している。けれども俺の毛布を引っ張り、自分を抱えるような態勢になる。


「どうしちゃったのさ、お兄ちゃん。早くしないと学校遅れるよ――ほら!」


先ほどから俺のことを起こしにかかってきていた妹――瀬奈(せな)が僕の持っていた布団を無理やり剥ぎ取る。


「あ、あぁ……」


視界が一気にまぶしくなる。奪われた布団を求め、目を閉じながら手探りで探す。


「遅刻するよ~もう7時超えたし」


「え・・・・・・⁉」


瀬奈の言葉に俺はガバッと身をおこして、時間を確認する。7時30分。このままでは遅刻確定だ。

パジャマを脱ぎ制服に着替える。

寝室の扉を開け、階段を降り味噌汁だけを口の中にかきこむ。

玄関へ行くと、準備を済ませた瀬奈が待っていた。怒っている割には結構優しい。


「お兄ちゃん、遅い!」


「ごめんごめん」


俺は通学用に用意した靴を履く。とんとん、とつま先を床で叩くと、瀬奈が扉を開けた。


「走るよ、お兄ちゃん!」


俺と瀬奈は一緒に駆け出す。遅刻をするにしても、できる限り急ぐんだ。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「はぁ、はぁっ、はぁ・・・・・・」


みんなが歩きながら校門を通る中、僕と瀬奈は走り抜ける。本当はもう走る必要はないが、なんとなく走り抜けた。けどまあ、よかった、間に合った。

遅刻する前に校門を通ることができた。


「あ、お兄ちゃん、友達見つけたから行くね」


「ああ、わかった」


「じゃね~」


瀬奈は僕に手を振ってから、走って行く。


「よお、(すぐる)


瀬奈が走っていったのを見てから、さあ下駄箱へ行こうと歩き出した僕を呼び止める声がした。

振り返ると、幼稚園からの仲の清原隆司(きよはらたかし)の姿があった。


「ん、なんだ。隆司」


「なんだとはなんだ、優。別に用はないけど、オレとお前の仲だ、話しかけたっていいだろ?」


いつもの調子の、いつもの隆司。だがしかしどうして今日はこんなにうざったく感じるんだろうか。朝からあんな夢を見たからだろう。そうだきっとそうに違いない。


「あー、まあそうだなぁ」


「おいおい、なんかテンション低くねえか?」


面倒くさくて俺が適当に返事をすると、隆司はつまらなそうに言ってくる。僕が低いんじゃない。隆司、お前が高いだけだぞ。


「どうした優、いつにも増して面倒くさそうだな」


きっと顔に出てていたのだろう、隆司がズバリと俺の気持ちをあててくる。


「全く、未練は断ち切ったつもりだったんだがなあ・・・・・・」


「ああ、また見たのか。それは・・・・・・その、なんだ。悪かった」


俺のつぶやきですべてを察してくれたようで、隆司は本当に悪いことをした、というふうに謝ってくる。


「謝らなくていいっての。もう昔のことだし」


「いや、恋愛の傷ってのは計り知れるものじゃないからなぁ」


隆司は冗談めかして言う。

こういうところがあるから、俺はこいつが嫌いではない。というか、嫌いだったら小学生のころから話さない。


「というかそっちこそ――」


「・・・・・・おい優、見ろよ、あれ」


「なんだよ」


俺の発言を遮って隆司が肩を叩いて指をさす。指をさした方向を見て、目を奪われた。

出るところは出ていることが制服の上からでもわかるほど出ている。それでいてウエストはしっかりと引き締まり、肉付きのいい体。太陽の光をまぶしいくらいに反射させる、きれいな黒髪ロングの美人。

道行く人がみな彼女の美貌に見蕩れている。

彼女のことはあまり友達の居ない俺でも知っている、校内一と噂される、学校のアイドル的存在、大塚愛華(おおつかまなか)先輩だ。

彼女はいつも一緒にいる友達と話している。

相手の方も大塚先輩と比べると、顔立ちやスタイルは劣る――と言っても、大塚先輩の次にモテるくらいには整った顔立ち、引き締まった肉体をしているが――がしかし、二人そろっていると、なかなかに注目を集めている。

そういえば、昨日も俺と同じクラスの男子が大塚先輩告白してふられたらしい。


「いいよなー大塚先輩。高嶺の花ってかんじで」


「そうだな」


確かに彼女は綺麗だし、人当たりもいいと聞く。そんな彼女と付き合えたらいいな、という気持ちはとてもわかるし、俺も全く思わないわけではない。がしかし、正直今は別にそんなことはどうだっていい。

正直に言うと怖いのだ。またあんな結末をたどるのが。

もう二度とあんな思いはしたくない。もう恋愛関係で傷つきたくない。

何より、夢に出てくるくらいには忘れられず、未練を持ったまま誰か別の女性と付き合うことが相手に対して失礼なのではないか……。


キーン、コーン、カーン、コーン……


八時を知らせるチャイムが鳴る。


「やべっ、急がないと」


チャイムを聞いて慌てて隆司が走り出す。俺も慌てて背を追う。

けれど運動部のあいつに、高校でやめてしまった俺はすぐには追いつけない。いつの間にかできた差に、若干のものさみしさを感じたが、走っているとすぐにどこかに消えていった。


こちらは不定期更新となります。

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