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鍛冶師と調教師 ときどき勇者と 【改稿中】  作者: 坂門
鍛冶師とドワーフ
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鍛冶師とドワーフときどき狼

「ごめんよー、たのもー」


 店先から少女の声が聞こえてきた。

 店先へ向かうと丸顔の少女が魔術師のローブを羽織っている。久しぶりの再会だ。


「お、元気だったか? 具合はどうだ、メンテナンスか? 発注か?」


 いつぞやのドワーフ娘だ、弾けんばかりの元気な声を響かせて相変わらずなのかな。

 

「あのよ、あのよ、ここでソシエタスの団員募集しているだろう。団長に合わせてくんないか?」

「あ? えっ?! そっち? オレが団長だよ。んじゃあ、話しを聞こうか」


 キルロが答えると魔女っ娘ドワーフは目を細めていぶかしげな表情を浮かべる。

 まるで汚いものでも見るような目つきだ。

 あれ? なんかマズった? おかしな事は言ってないよな。


「あのよー、そういう(てい)の言い厄介払いとかはいいんよ。団長に合わせてくれよ」

「だから、オレが団長だって!」

「ヌシは団長じゃなくて、鍛冶師だろうよ!」

「いや、鍛冶師だけど団長だって!」

「ハァ~」


 ドワーフ娘はキルロの言葉を全く信用しない所かそっぽを向くと、心の底から深い溜め息を吐き、首を横に振った。


「あれ? お客さんか。出直すかな」


 いいタイミングでマッシュが現れたな。ここで帰す訳には行かない。

 マッシュはドワーフ娘を見ると、踵を返し店の外へと向かおうとした。

 キルロはすがる思いでマッシュの腕を掴み、首を横に振った。

 

「お! 団長さん、いるじゃないか! あのよ、あのよ、面接お願いしたいんよ」


 ドワーフ娘はマッシュを見るや否や爛々と輝く瞳でマッシュを見つめた。

 先ほどのキルロを見つめた目とは雲泥の差だ、あんまりだ。

 だいたいドワーフって皆このパターンなのか?

 いつぞやの戦斧を担いだドワーフを思い出す。

 しかし、困惑を隠せないほど混乱しているマッシュも珍しい。


「お嬢ちゃん、オレは団長じゃないよ。団長はこっちだよ」


 マッシュは諭すように答え、キルロの事を指差すとドワーフ娘はむくれて、マッシュを睨む。


「あのよー、団長までそういう事言うのか!?」

「ぇえ? いや嘘じゃないよ。オレは団長じゃない、団長はこっちだよ」


 と言い放つと微妙な笑みを浮かべ、“じゃっ!”と帰ろうとする。

 いつもの絶妙なタイミングで間を読むが、もちろん逃がしはない。面倒くさいのお裾分けだ。しっかり受け取れ。

 怪訝な表情で二人を見つめるドワーフ娘。

 もう諦めるかな?

 目からは懇願の雰囲気をこれでもかと醸し出す。逃げ辛いなこれ。


「あのよ、パーティーに入りたいんよ。団長と面接させてくれよ」

「だ・か・ら、オレが団長だ。じゃなかったら鍛冶屋を事務所にしないだろうが」


 “お!”


 ドワーフ娘の中で何か合点がいったらしく何度も頷く。


「そうだと思ってたんよ。鍛冶師の団長よろしく頼むよ」 


 この調子が続くのか頭痛くなるかも。

 もうツーテンポ早く納得してくれ。


 マッシュが腕を突っついてきた。


(なあ、まだ子供だろ? お遊びに付き合うのか?)


 顔を寄せてくるとマッシュは耳元で囁いてきた。昔のキルロと同じ勘違いをしている。


「ドワーフだ」 

「え?!」


 キルロはマッシュの方を向き淡々と答えた。

 マッシュは驚愕の表情を浮かべ、キルロとドワーフ娘を交互に見やる。

 やはり同じ過ちを犯していた。ローブに惑わされたに違いない。

 ドワーフ娘はその様子を不思議そうに、小首を傾げていた。


 居間に移動してお互い椅子に腰掛けた。やっと面接か。

 始まる前に若干疲れたが、ドワーフ娘はノリノリだ。


「とりあえず名前を教えてくれよ。オレはキルロ、こっちはマッシュだ」

「ユラ、ユラ・アイホスだ。ソーサレスだ」

「え?! 魔術師(マジシャン)? 珍しいな」

「マッシュよう、この格好見たら分かるだろうに」

「あぁ、そうだな……」


 困惑するマッシュを見られるとは。ユラ、なかなかの強者だ。

 キルロは困惑するマッシュに笑いを堪えながら続ける。


「それでユラはどの辺の属性が得意なんだ」


 優秀なマジシャンなら補助を含めて四系統以上、通常でもニ、三系統の属性を操る。

 得意な属性を鑑みてパーティーが戦術組むのは定石だ。

 炎と氷みたく正反対の属性持ちだと助かるんだけどな、どうだろ?


「火だな」


 得意満面にユラは答える。

 キルロとマッシュは頷き次の答えを待つ。

 三人の視線が絡み合いゆっくりとした時間が流れる。

 その時を待っている。


「うん?」

「え?」

「?」


 全員の目蓋が瞬き、小首を傾げ、困惑の表情を浮かべる。


「もしかして属性、火だけ?」

「おう!」


 キルロの問いに満面の笑みでユラは答える。

 そう来たか。


「ちょ、ちょっと待て、火の耐性持ちのモンスターだったらどうすんだ?」

「そんなもん殴ればいいだろ。何言ってんだ? 効かないもんに撃ったって仕方ないだろうに」


 困惑するキルロに呆れ顔でユラは言い放つ。

 マッシュは“そらそうだ”と膝を打ちながら大ウケしている。

 いやいや、じゃあ最初から殴れよと言いたいが、絶対受け入れないよな。

 このパターン知っているし。


「アッハハハハ、おまえさんの言う通りだ。殴ればいい。いやあ、相変わらず団長は面白引力がすげーな、ホント飽きないわ」

「へえー、そらあいいな。やっぱり面白い団長がいいわな。マッシュ、ヌシは話しのわかる男だな」

「面白引力ってなんだよ! 勝手に変な形容詞つけるなよ!」


 マッシュに釣られて一緒に笑っているユラに頭を抱えるキルロの図が出来あがる。

 午後の昼下がりに頭抱える事になろうとは、キノもハルヲンテイムに遊び行っちゃっていないし、頼みの綱がもうないぞ。


「邪魔するぞ~」


 あの声はタントか? そう思うや否やズカズカと居間に現れるタントの姿が目に付いた。

 久しぶりなのに表情があまりないな。


「久しぶりだな」

「お、そうだな。マッシュ・クライカ探……あ! いた。ちょっと借りるぞ。マッシュちょっと付き合え」

「団長悪いな、後は任すわ。団長がオーケーならオレもオーケーだ。じゃあな! ユラも」


 “おう、またな”とユラはマッシュに手を振った。

 出ていく二人を見送る。


 さてどうしよう?

 意外と困るぞ。


きりいいのでまずはここで。

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