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カロリーが足りません(˃̵ᴗ˂̵)ノ 〜終末食べあるきガイドブック 魔物グルメ編 in 池袋〜  作者: 大場鳩太郎
第二章

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38/89

御主人様は偉い子です

「⁉︎」


口のなかで暴力的なまでに広がる塩と豚さん牛さんの肉の味。


――はしなかった。


スパムの食感はまるで豆腐だった。

歯応えがかけらもなくかぶりついている感じをまるでさせず精進料理を食べているかのような物足りなさが始終つきまとった。


コーンビーフはほぼ脂だった。

工業用のグリスを間違って口に入れてしまったみたいな違和感とベタベタした舌触りがほぼ八割を占めており最悪に気持ち悪かった。


どちらも塩味はしたが何よりも肝心な豚肉牛肉の味がしない。

例えるなら出涸らしの茶葉で入れたお茶の味とも張り合えないくらい、沈黙したまま全く広がってこなかった。


《スパムとコーンビーフのお味はどうですか?》

「……」

《美味しいですか?》

「……」

《ああ、とても悲しいことがあった時の表情をしていますね。お察しします》

「しょっぱい味がする」

《それはきっと涙の味です( ˊ̱˂˃ˋ̱ )》


吐き気とか嗚咽とか込み上げてくるものがあったが強引に口のなかのものを吞み下した。


今の気分を一言で表現するなら『絶望』である。


《御主人様、朗報です。ラベル表示をご覧ください》

「……」


クオヴァディスに言われるままにそれぞれの缶詰を見る。


名称:ミドルミート/カロリー缶。原材料:工業用塩化ナトリウム、遺伝子組換大豆。 内容量:200g。販売業者:mama-son。栄養成分表示(一缶あたり):熱量500kcal。主にタンパク質。


名称:ヘヴィミート/カロリー缶。原材料:工業用塩化ナトリウム、不飽和脂肪酸、遺伝子組換大豆。内容量:200g。販売業者: mama-son。栄養成分表示(一缶あたり):熱量1,000kcal。主にタンパク質。


《ミドル缶もヘヴィ缶もカロリー的には優秀なようです》

「……全然嬉しくないんだけど」

《それから、どちらも大豆が原材料となっていてとってもヘルシーです(╹◡╹)》

「ミートっていう言葉はいつから肉を意味しなくなったんだろうな……」


カロリーは正義をモットーにするクオヴァディスさんとしては申し分ないだろうが、食べる身になってほしい。


結論から言えば、新たに手に入れた缶詰はどちらも激マズだった。

特にヘヴィミートはとても食べられたものではない。

ひたすら塩味しかしない脂の塊を食べていると拷問を受けているような気分になってくる。


「いや分かってた……分かってたはずなんだこんな展開になるのは予想がついてたはず……でも見た目、美味しそうだったしめっさ期待しちゃったよ……」


これならむしろライトミートを食べたほうがマシだ。

まあ猫缶と同レベルのものを美味しいと表現すべきかには躊躇があるけれども。


「はあ……残すのも勿体無いから調味料の味付けで誤魔化してなんとか食べ切ろう」

《御主人様は偉い子です^_^》


ミドルミートは木綿豆腐だと思えばお醤油で食べられないことは無い。

問題はヘヴィミート……この脂の塊、なんとかならんもんかな。食べるのもキツイが後で、胃もたれしそうだ。


「どうせ胃もたれするなら本物の肉が……脂ののったお肉が食べたい……」


不健康で味が濃くてちゃんと肉が使用されているものが食べたい。


そんなことを思いながらスプーンですくった不飽和脂肪酸とやらに醤油をぶっかけひたすら口に運ぶのだった。



《そういえばお醤油やお砂糖やお塩がそろそろ底を尽きそうですね》

「発注で手に入らないかな」


なんとか偽スパムと偽コーンビーフを完食したものの、味付けし過ぎたせいで調味料が少なくなってしまった。


あまり期待できないかもなと思いつつ、端末の発注アプリを起動させてみる。


「麻薬とか武器はあれだけ充実しているくせに何故食品の類は貧相なのだろうな」


人類が滅んだから?

ドローンやドロイドみたいな機械しか存在しないから?


だけど武器も麻薬も人間のためのものだ。

そもそも機械しかいないのであればコンビニ自体が存在する必要がないはず。

色々とこのコンビニはおかしな点がある。


「むう……やっぱり調味料も駄目か。食塩しかないぞ」


発注ができるようになれば食事情が劇的に改善されると思っていた。

けれど現実は理想と程遠い。


いやカロリーに飢えていた以前に比べて状況は格段に良くはなっている。

今は餓死する心配も皆無になった。

ただそれでも未だに「美味しいものが食べたい」という欲求は一向に満たされていない。


「これ以上、食事のクオリティを落としたくはないし近場を歩き回って調達するか」

()()()()()()なら多少の遠出も可能ですよね》

「かもな……生存戦略起動」


クオヴァディスの言葉はお世辞ではなく根拠があった。


端末のアプリケーションを起動させるとステータス画面が現れる。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

兵種:斥候長Lv1

状態:


余剰kcal:13,180

消費kcal/h:145

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

スキル:

肉体強化Lv1、小休止Lv10、野鳥観察Lv10、

悪臭Lv1、ナイフ術Lv10、ジャミングLv5、

暗視Lv4、トリガーハッピーLv1、暗殺術Lv4、

忍び足Lv1、警鐘Lv1、動体視力Lv2、射撃統制Lv10、カプセルトイLv1、精密射撃Lv1、

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「うむ……何度見ても余剰カロリーが一万超えしてるな」

《カロリー缶を平らげたから更に増量されてますよ(≧∀≦)ノ》


女王蜘蛛戦を終えてコンビニに戻ってきたら何故かこうなっていた。

餓死寸前だったのに「なんのボーナスポイントだよ」と思わず突っ込んでしまったくらいに余剰カロリーが豊富だ。


多分だけどショゴたんが蜘蛛を取り込んだ栄養の一部が蓄積されているっぽい。

嬉しいやらキモいやら複雑な気持ちだ。


ただこれならスキルを幾らでも鍛え放題だし多少の危険は強引に回避できるだろう。


「結局、食事情を良くするには地道に足を使ってくしかないんだろうな」

《地道が何よりです》

「とりま近くの食料品売り場まで足を運んでみるか」

《検索しますか?》

「死活問題なので頼む」


端末が切り替わり、ピコンと周辺地図上に幾つものポップが表示される。


小さな青いポップはコンビニ。中くらいの緑はスーパーマーケット。大きな赤いポップはショッピングモールだ。

長期保存が可能な調味料であれば、このどこかを探せば見つかるだろう。


調味料だけならコンビニ数件を巡れば手に入りそうだ。

だがどうせ出かけるなら他にも物資が得られそうな場所――もう少し大きめの食料品売り場がある施設に行きたい。


「さてどうするかな」


取り敢えず口直しに泥コーヒー(経年劣化したクソ不味いインスタ)を飲みながらどこに行くか検討する。


店長になったことで就業時間というくびきから解放されている。

だからいつでも店を抜け出せることができた。


「じゃあ、ちょっくら散歩と洒落込みますか」

《お出かけですです(๑˃̵ᴗ˂̵)/》


何か美味しいものがあるといいけどな。

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