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射撃統制がLevel6になりました


この調子でいけばアッサリと線路の向こう側に出られる。

などと思ったが現実は甘くはなかった。


「通れないじゃーん……嘘だろー……」

《オサラバできません(T-T)》


蜘蛛との遭遇は一切なかった。

だが西口に通じる通路が崩落した天井の瓦礫によって塞がれているせいで足止めを食らっていた。


南北の出口もその他商業施設経由のルートもすべて通り抜けできないせいだ。


《JRのホームから地上に出ればいいのでは?》

「それな!」


ロータリーと鉄道の間は駅舎が横たわっている。

線路を歩いていけば化け物たちの抗争に巻き込まれずに移動できるはずだ。


だがJR構内からホームに上がる階段まで辿り着くと――


微かな揺れ。

辺りを見回すと、構内の奥の方で巨大な何かが闊歩している。


タカアシガニみたいに長く頑強そうな十本脚を窮屈そうに屈めながらゆっくりと闊歩している大蜘蛛だ。


天井すれすれの高さにある三つ眼からサーチライトのように照射して辺りをキョロキョロしている。


「ひえ……何あのゴツいの」

《どうやら哨兵――見廻り専門のようですね》


更に一歩近づいて様子を窺おうとしたが――再び警鐘。

いつもより強めに鳴り響いて「割とやばい相手ですぜ」と報せてくる。


「あいつに見つかると厄介だぞ」

《……ところでこの膜のようなものはなんでしょうか?》


ホームへ通じる上り階段が半透明の皮膜のようなもので覆われていた。

蜘蛛の糸を幾重にも張り巡らせて施したもののようだ。


覆いをすることで陽光が差し込まないようにしているらしく他の階段も同じように膜が張られている。


試しにナイフで裂こうとしたがなかなか刃が通らない。


「クソっ……破るのは難しそうだ。時間がいる」

《悠長にしていると戦争が終わって蜘蛛が戻ってくるかもしれません》

「でも他に行くところなんかないだろ?」

《更に地下に潜るのはいかがですか?》


ここよりも地下?


地下鉄メトロです。線路なら別の駅と繋がっているので徒歩で渡れます》

「……」


正気か?

簡単に言うけど地下鉄なんて蜘蛛の本丸じゃないのか?

下手をするとロータリーみたいに恐ろしい連中がうじゃうじゃいるんじゃないか。


《このまま地上に戻っても状況は変わらないのでは?》

「うーん……いやしかし」


ちなみに池袋駅構内にはメトロが複数ある。

丸ノ内線、有楽町線、副都心線の三線だ。


副都心線ルートは地下一階からの通路が瓦礫で塞がっていたので却下。

有楽町線ルートは増援部隊が這い出てきた場所だったので、蜘蛛が潜んでいると睨んで却下。


消去法で必然的に残ったのは丸ノ内線ルートなのだが――


《ところで重要なお知らせがあります》

「ん?」

《あのタカアシガニに似た生物を手長足長蜘蛛と命名しました》

「なるほど(それ重要?)」

《それから手長足長蜘蛛がこちらに気づいたようです》

「そっちのが重要だよね‼︎」


俄かに辺りがビカーッと眩しくなった。


「クオヴァディス、地下鉄!」

《ラジャーです(^^)>》


はいじゃあ見つかってしまったので早速、逃げたいと思います。


背中に光を浴びながら、クオヴァディスが提示する地下鉄ルートに向かって移動を開始した。


改札を潜り、階段を転がるようにホームへ駆け下りる。


追われている最中なので走りながら周囲を警戒することしかできなかったが幸い恐れていた敵の待ち伏せはなかった。


だがここでも問題が発生する。


「チクショーここも瓦礫で埋まってる‼︎」


線路に降りて荻窪方面に進むと途中トンネルの崩落によって先に進めなくなっていた。

通り抜けできそうな隙間も見当たらない。


《手長足長蜘蛛がやってきます》

「うへえ……当然そうなるよなあ」


袋小路に追い詰められてしまった以上、逃げ場はない。

強制戦闘ってやつだ。


所詮この世はクソゲーだな。


この世界に未練なんか何もないので死ぬ時はサクッと死にたい。

痛いのも苦しいのも嫌だけどアイツなら一瞬で首を刎ねてくれそうで助かる。


まあだからって何もせずに死ぬつもりはないけどね。

せっかく、拳銃手に入れたわけだしある程度抵抗はしてやるけどね。


「正面からまともに戦うのは唐獅子戦以来か……せめて試し撃ちくらいはしておくべきだったな」

《射撃統制がLevel2になりました》

《射撃演算システムが起動しました》


アナウンスが流れた瞬間――


「視界に文字が?」


視界いっぱいに赤色の小さな文字と数字と記号の羅列がスクロールされる。


射撃回数、命中率、弾種、射程距離、発射薬温度、初速修正量、気圧、気温、横風風速、

砲耳傾斜角……。


ちょっ情報量が多すぎて見てるだけで酔ってくるんだけど⁉︎


《射撃回数が増える毎に経験値データが蓄積されていきます》

「何ができるの?」

《今のところは役に立ちません∠(・`_´・ )》

「サヨウナラ」


鬱陶しいので虫を追い払うような仕草をすると、どこかに引っ込んでしまった。


なんなのあれ。


《射撃統制がLevel3になりました》

《標的と残弾が表示されます》


うんまた視界の端に何かが出てるね。

これ必要?


「そもそも文字ってどうやって見せて――」

《来ます》


トンネルに侵入してくる黒い影に銃口を向けると――『手長足長』の文字。


震える手でぎゅっと銃把を握りしめると覚悟を決めて引鉄をひいた。


アスファルトに鉄鋲をハンマーで打ち込んだみたいな音と手応えが全身を通過する。

金属に似た残響が身体の芯を痺れさせる。


「当たっ……た……⁉︎」

《見事な火薬類取締法と銃刀法に違反です》

「おう」

《ところで残念なお知らせがあります。命中したのにまるで効いてません》

「おう?」


手長足長蜘蛛は何事もなかったかのようにずんずん前に進み出てくる。

重機みたいなその巨体が近づいてくるのは圧巻だったし恐怖しかない。


「喰らえ喰らえ‼︎」

《 (っ`Д´)っっっ》


叫びたくなるのをグッと堪えて、射撃射撃射撃射撃。


射撃統制の恩恵なのか弾が尽きた瞬間、ごく自然に弾倉を交換できた。


どうも拳銃の扱いに関する基本的な知識と動作が身についているらしい。

ナイフ術の拳銃版みたいなものか。


「問題は手長足長の装甲の硬さだな」


まるで攻撃が効いておらず弾丸はことごとく弾かれている。


《眼に当てると僅かに怯むようです》

「狙いたいけど難しいんだよ。強化でなんとかならんの?」


苦労して手に入れた射撃統制なので欲を言えばもう少し実用的な機能が欲しいところ。


《射撃統制がLevel4になりました》

《標的との距離と命中率が》

「便利だけどどうでもいい」

《射撃統制がLevel5になりました》

設定管理コンフィグが追加されました。フォントサイズや――》

「そんな余裕ない」

《射撃統制がLevel6になりました》


駄目元で射撃統制を強化し続けていると――足元に赤い点が現れる。


照準点ドットが追加されました》

「コレコレ、こういうのが欲しかった!!」


天井に向けたり床に転がった瓦礫に向けたりしてみると、なぞるように赤い点(ドットが移動する。

おかげで狙った場所にガンガン命中するようになった。


標的:手長足長蜘蛛(A)

距離:3.4m

命中率:94%

残弾数:◎○○○/304


おまけに視界も賑やかになって俄かにガンシューティングの様相を呈してきたな。

ゲーセンぽくてちょっと面白い。

というわけで射撃統制お披露目です。


池袋編が予定よりちょっと長めになってきているので早めに更新していきたいです。

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