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少年斥候がLv10になりました

《少年斥候がLevel10になりました》

《兵種:おもちゃの兵隊トイソルジャーが解放されました》


基礎体力向上、小休止、野鳥観察――基礎スキルがすべてのレベルが最大値まで上がったことで少年斥候のレベル10になった。


「これで目的のひとつはクリアしたぞ! ついでにおかしなものも手に入れたが今は無視!」

《おめでとうございますます(˃̵ᴗ˂̵)>》

「だが喜ぶのはまだ早い。問題はここからだからな」


果たして兵種をカンストさせるとどうなるのか。

固唾を飲んで様子を見守っていると、端末画面に砂時計が現れる。


《昇格条件を確認中……暫くお待ち下さい》


待たされること数十秒、アナウンスと共に端末画面にまたしても三つのアイコンが出現した。


それぞれに描かれた兵隊らしきキャラクターたちがスキルではなく兵種のアイコンであることを主張している。


《少年斥候が昇格プロモーションできるようになりました。表示されたうちからひとつを選択してください》


工作員

密偵

斥候



「うーん……昇格? 別の兵種が選択できるんじゃないの?」

《兵種をカンストさせると昇格ができるようになります》

「そうなんだ」


クオヴァディスは生存戦略の情報について不親切というか後出し感がある。

モノリス社との契約に縛られているせいなのは分かっているけど手探り感がスリリング過ぎる。


「ええっと「昇格」って将棋とかチェスの?」

《はい。歩がト金になり上がる。ポーンが女王や司教に変わる。駒がひとつ上の位に上がることを指します♚》


会社で言えば平社員が課長に昇進するようなもの。ゲームで言えば魔法使いが賢者にクラスアップするようなものだな。


いちいち用語が独特すぎるな。


「つまり今表示されている三種類は、少年斥候の上級職にあたるんだな。……ひとつひとつ検分していくか」


アイコンをタップしてどんな兵種なのか確認していこう。


まずは工作員。

アイコンはツナギ姿の兵隊が時限爆弾ぽいものを仕掛けていやらしい笑みを浮かべているやつ。

爆弾を製作できるスキルを持っているのならわりと有益かもだが今は求めてない。

説明書きには「罠を仕掛けたら超一流」とある。

工作員ってスパイじゃないの? 意味ちょっと違くない?


次に密偵。

アイコンは外灯に佇む黒服遮光眼鏡で後ろ手のナイフがちらり。

情報収集に特化していそうだしナイフ系の戦闘スキルを持っていそうな印象もあるが果たしてどうか。

説明書きには「外灯・・と短剣。スパイ活劇が好きな人向け」とある。


最後は斥候だ。

アイコンは足跡を虫眼鏡で追跡する★印のヘルメットを被ったノーマルな兵隊だ。

名前もこれが少年斥候の正統な昇格先であるのがうかがえるが、イラストからそれ以上の情報は伝わってこない。

説明書きには「追跡、偵察はお手の物」とあった。


「うーんどうにもぱっとしないというのが第一印象だな」


確かに少年斥候が昇格した姿であると言われれば「そうかもな」とは思うのだけれど、ラインナップはどれも地味めでパンチが弱い。

はっきり言って決め手に欠けるのだ。


「クオヴァディスさん、なにかアドバイスない?」

《昇格は選択した時点でキャンセルできないので御注意ください》


これは当然だろう。

後悔はしたくないので慎重に選ぶつもりではいる。


《それから――》

「他に何かあるの?」

《ユーザーの成長度合などによって昇格先が変化します》

「成長度合?」

《所持する兵種・スキルの数や種類、Levelなどです》


それかなり大事な情報じゃない?

何故この段階になってそんなアドバイスをしてくるの。ここわりと重要な局面だぞ。

今更過ぎるだろ……。


「……いやひょっとしてこの選択も保留にできるとか?」

《スワイプで可能です^ ^》


おお。

画面が切り替わり、通常の操作メニューに戻ると「保留中」という項目が増えている。


じゃあ今からスキルを獲得強化すれば昇格先も変化する?

試しに「保留中」をタップしてみると後回しにしたアンロックスキルの選択を呼び出した。


「まずは野鳥観察の後に出てきた三択だな……」


暗視

顕微

望遠


「ポチ……」

《暗視を解放しました》


迷ったがここは暗視を選択。


望遠も欲しかったが野鳥観察のおかげで既に視力は抜群に向上している。

ならば灯りもろくにない世界では夜に備えた方が有益なはずだ。


「さて次は小休止の三択ね。正直、こっちはとるつもりなかったけど仕方がない」


トリガーハッピー

ヒロイックピル

ヨクネムレール


「ポチ……」

《トリガーハッピーを解放しました》


不吉な名称ではあったが「集中力が増して精密動作が行い易くなる」「射撃の命中率向上に最適」という文句が決定打になった。


「副作用あり」の部分は見なかったことにする。


ちなみにヒロイックピルは「痛みを和らげる」という戦闘向きな効果ではあった。

問題は「強化しすぎると快楽に変化」「依存症あり」という記述だ。

難易度の高いプレイ……もといスキル過ぎてとても手が出せない。


「痛いのは大嫌いだけど大好きにはなりたくない」

《AIには理解できない悩みです。興味深い(╹◡╹)》

「さて……余剰カロリーはまだ余裕があるから他のスキルも強化してみよう」


なんというか今まではカロリー貧乏だったので最小限の強化ばかりだった。


比べて有り余るカロリー(と言うほど実際には余っていないが)を消費し、あまつさえアナウンスを省略するこのセレブなやり方はなんとなく気が引ける。


《御主人様は根っからの貧乏性なのでしょう》

「うるさい。まずは猛獣除けだ」


アイコンを連続タップしてLevel5から10まで引き上げると――


《猛獣除けがLevel10になりました》

《猛獣除けと害虫除けが統合され悪臭になりました》

「悪臭……だと……?」


スキルカンスト後、「統合」という新しいパターンのスキル解放が。

要するに獲得済みの複数のスキルをひとつにまとめたらしい。

ステータス欄から猛獣除けと害虫除けが消え、悪臭が追加されている。


だがしかし問題はそこではない。


「これ虫とか獣にしか認識できない匂いってことで良いんだよな? 良いんだよな?」


腕や脇の下を嗅いでみたが――……臭くはない?

てっきり体が強烈な刺激臭を放つようになったのではないかと心配したが大丈夫そうだ。


《河豚の毒は自らには効かないそうですよ?》

「おい」


自分だけわからないってことか。

でもある程度なら自覚できるだろ。

昔、夏場に外出して汗をかいたTシャツのままで昼寝した時、やたらニオイが気になった経験があるぞ。


「僕は臭くない。多分大丈夫」と己に言い聞かせる。


落ち着いてから説明書きを読むと「任意で害のある生物を退ける。その臭いはあらゆる生物に嫌悪と畏怖を催させる」にとあった。


「ほっ……任意系か。助かった」

《御主人様は全体的にズボラなようで変なところで神経質ですよね( • ฅ• )》


うるさい。

まあ確かに臭いを気にするような相手はいないのだけど、それでも嫌なものは嫌なのだ。

あと任意って判明したんだからその顔文字はやめろ。


つか「あらゆる生物に嫌悪と畏怖を催させる」ってどんな臭いなんだ。

暗視:

涙腺から赤外線を認識させる涙を分泌させ、網膜の視細胞上に一時的な薄い層を形成させ、暗闇を見通す。


生存戦略パート、ひっぱってますが次回完了です。

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