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池袋駅はダンジョンでした

本日二回目の投稿です

「……と思ったけど池袋駅は多分駄目だな」

《くーん(´・×・`)》


ロータリーに辿りつく前に鉄道が機能していないという事実が判明してしまった。


遠目から見えてきた巨大な商業施設を有した駅舎はまるで踏み潰されたように半壊していた。


蔦や草が生え放題だし確実に十年以上は放棄されてる感がある。

これでは埼京線も山手線も湘南新宿ラインも運行してないだろう。


ロータリーまで近づいてみるも駅舎の入口が破壊された建物の瓦礫で埋もれてしまっていることが判明した。これでは入場すらできない。


《地下から駅舎に入れるルートを御案内しますか?》

「入れてもJRが運行してなきゃ意味ないだろ?」

《なんの地下鉄(メトロは災害などに強いと言われているそうですよ》


クオヴァディスが何処かで拾ってきた記事を表示してくる。


ふむふむ『地震時には周辺の地盤と一緒に動くので崩れ難く、火災時には延焼することや煙が入り込む危険が少ない』ね。


「とりあえず確認してみるか」


万が一地下鉄が動いていればかなり迂回する羽目になるが、徒歩ルートで帰宅するよりは安全だし楽なはずだ。


いや運行していなくても駅員がいてくれさえすればいいな。

少なくともこの難儀な状況から抜け出せる手助けをしてもらえるはず。


《地下出入口に到着しました》

「……」


辿り着いた地下出入口は確かに焼け跡もないし崩れ落ちて塞がってもいない。


だが降りていくには非常に難易度が高そうな状況に仕上がっている。

何故なら瓦礫とは別のあるもので塞がれていたからだ。


「うへえ……なんだこの気持ち悪いの」

《蜘蛛の糸のようですが……かなり大量ですね》


強い粘性の白いロープのようなものが幾重にも張り巡らされている。


《進みますか?》

「いやいやいやどうしてそうなる? これって地下に降りたら間違いなく化け物がいるパターンだろ?」


地下に通じる階段に蔓延った白いネバネバ。

これは巨大な蜘蛛の巣か、あるいは化け物が縄張りを示すための体液で間違いないだろう。


このまま無理に降りていってもロクな展開にならないのは想像するに難くない。


《ちなみにこの先にある地下商店街ファーマーズマーケットの一角に缶詰専門店があるようです》

「缶詰……だと……⁉︎」


端末にすすっと店舗情報が表示された。


ピーター叔父さんの缶詰工房――缶詰専門の輸入雑貨店とある。

画像には果物やあんみつなどの甘味やキャビアのような珍味などバラエティ豊かな缶詰が積まれており、思わず喉が鳴る。


《ライトミートでは物足りないと思ったので調べてみました》

「いやその心遣いは非常に有難いんだけどさ……」


クオヴァディスさん、そういう情報ぶっ込んでくるの止めてほしいんだけど。


《カロリーは正義、即ちカロリー情報は大事です(╹◡╹)》

「ああ……なんか余計なことを覚えてる」


確かに保存の利く携帯可能な食料の確保なんて最優先事項だけどさ。

食糧難の状況でそんな話を聞いたら行かざるを得ないけどさ。

こんなの教えられたら地下に行くしかなくなるじゃんかよ。


《道路を挟んで向かいにある北口2という出入口の方がより近いみたいです》

「……どうあっても地下に行かせたがってるだろ?」

《行く行かないは御主人様次第です》


この鬼畜AIめ。


渋々、ナビに従って放置された錆だらけの自動車が並ぶ道路を横切る。

目に見える距離にあるので辿り着くのは容易だが、問題はこの後だ。


出入口を覗き込んでみると、こちらの下り階段もやはり白いネバネバが張られていた。


先程のような厳重なマーキングはされておらず、辛うじて通り抜けできる程度に道が開かれているが無理だろ。


「だが缶詰が……でも危険が……いや……ああもう……‼︎ 生存戦略、起動‼︎」


結局、食欲に打ち勝つことができずヤケクソ気味に叫んだ。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

兵種:少年斥候Lv3

状態:


余剰kcal:6,260

消費kcal/h:113

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

スキル:

基礎体力向上Lv3、小休止Lv3、野鳥観察Lv3、

害虫除けLv10、猛獣除けLv3、ナイフ術Lv7、

ジャミングLv5

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


コンビニでライトミートを食べたのでBBQで蓄えた余力はまだ維持できている。

今ならスキルを鍛え放題だし、何もしなければ後二日は体力が続く見積もりだ。


ただ、だからこそ食料は手に入る時に手に入れておきたい。


「食料調達がてら地下鉄がどうなってるか確認するだけだぞ。最短ルートだからな? 頼むからな?」

《お任せあれ。バイトの出勤時間までには間に合うようにしますd( ̄  ̄)》


……本当に大丈夫なんだろうな?



というわけで池袋駅に通じる地下出入口を降りることになりました。


ネチョネチョと何故か粘つく足元がかなり不快です。

この天井とか壁にもへばりついてる白いのはなんなんだろう。


「ふう……階段を降り切ったぞ」

《階段を降りただけなので、やり切った感出されても困りますがσ(^_^;)》

「うっわー地上以上に何にも見えないなこれは……」


携帯端末のライトだけではかなり視界が心許ない。事前に懐中電灯を手に入れておくべきだった。


地下構内はひんやりとじめついて特有のすえた臭いのする空気に満ちていた。

人がいた時代とは明らかに違い、真っ暗だ。


この状況を考えると、やはり地下鉄も運行していないのだろう。


「缶詰の回収に徹するのがベストだな」


だが全ては保存食のためと己に言い聞かせ前に進んでいく。


「クオヴァディス、ここからどっちに行けばいい?」

《念のため、周辺の地図を表示しましょう》

「ええっと……どっちだ?」

《御主人様は地図が苦手な社畜なんですね^ - ^》

「フレンズみたく言うな。というか池袋駅が分かりにくいんだよ」


建物名が紛らわしかったり西口に北口と南口があるとかさ。

まあ新宿駅とか東京駅に比べたら複雑ではないけどさ。


《このまま十五メートル直進です*\(^o^)/*》

「こりゃあもう完全にダンジョンだろ……灯りだけじゃなくて武器が欲しい……」


愛用のセラミック包丁を構えながら進んではいるが正直この小さな刃物では心許ない。


現状ナイフ術という攻撃手段はあるが、決定打に欠けるうえに反撃を受ける危険が大きいからだ。

せめて槍のようなある程度距離が保てそうな武器が欲しかった。


極力、靴音を響かせないよう注意しながら一歩ずつ暗がりを進んでいき、なんとか分岐路まで辿り着いた。


「ふうん……地上からみた駅舎は潰れてたけど地下施設は比較的まともみたいだな……ん?」


ふと左を向くと、遠くの方にぼんやりと赤い灯が見えてきた。

ピーター叔父さんの缶詰工房:

世界中から缶詰を三百点以上取り寄せた缶詰専門の輸入雑貨チェーン。

ここでしか手に入らない一缶五千円の高級鯖缶が大人気。

お見舞いや贈呈品としてどうぞ!

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[一言] この小説をドロヘドロに似たタッチの絵で漫画化したものが欲しい読みたいナァ
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