5 閑話:レオさん視点
最近こっちのコミュにシンヤが来ないなと思ったら、別のコミュにいる猫のキャラクターのゲーム初心者の子と二人で遊んでいるらしい。確かに猫キャラは可愛いけど、中身が女の子とは限らない。
慎也は会社の同僚で、たまにゲームの話をしたりネット対戦で遊んだりしている。新しいVRMMOのゲームを一緒に始めたのだけど時間が合わないので、最近はそれほど一緒には遊んで居なくて、たまに難しいクエストやミッションを時間が合う時に手伝うくらいだ。
バレンタインの日に慎也は仕事でミスした挙句、デートの約束があるからって人に仕事の後処理を押し付けて逃げ帰った罰が当たったのか、彼女にドタキャンされて相手の二股発覚と言うダブル不幸に見舞われていた。そのせいで現実逃避したくなるのはわかるけど、ネットゲームの女の子キャラって地雷が多すぎる。
そういえば、あの日は人に仕事を押し付けて帰ったくせに、俺より先にゲームにログインしてケンタくんと一緒にクエストをクリアしてたのも気に入らなかった。さすがにゲームのことで怒るのは大人気ないので文句は言っていないけど。
リアルと違うゲームの中だけの作られた人格も多い世界だけど、ケンタくんは受け答えが素直で可愛い。多分、子供なのだろうと思うけど高校生くらいなのだろうか?
今もケンタくんが
「レオさんって熊のキャラ?」
と首をかしげて可愛く聞いてくる。
このゲームのキャラは最初から決まっているキャラクターの中から選ぶので、見た目で一番大きい種族を適当に選んだだけで「何の種族かわからないけど熊じゃないと思う」と答えると何か考え込んでた。大きくてアゴヒゲが生えてるから熊に見えるけど、耳も丸くないし尻尾が熊と違って長い。ケンタくんがぐるぐる回って確認してたら目が回ったと言っている。
「ケンタくんの動きって何か違うんだよね」
「違う?」
「うん、なんかリアルな感じ」
ケンタくんはしばらく考え込んで「そう言われてもよく分からない。他の人もスムーズに動いているように見えるのだけど」と悩んでいる。
最初にケンタくんに気がついたのは合成スキル上げで作ったものを店に売るのも面倒で格安でバザーで売っていたら毎日パンとジュースだけを買うキャラがいることに気がついた。
店売りよりも微妙に安い値段で売っているので、たまに転売する人が買い占めたりするけれど、ケンタくんは毎日クリームパンとジュースを二食分くらい買っていく。
バザーを覗き込んで悩んでいる姿が可愛いし、キャラクターが他の既成のキャラと少し違う気がして、不思議な存在で気になっていて、バザー中のキャラをログアウトさせようと画面を確認した時にケンタくんを見かけて話しかけてしまったら逃げられてしまって、その日から買いに来なくなってしまったので、次に会った時は慎重に話しかけなければと反省して居たのだ。
街の外で偶然会った時も門の前にいる獣人を怖がったり、俺のキャラを敵と間違えて怖がったりしている姿を見て、動きがとても面白く可愛くて、このまま別れたくないなと思ってコミュに誘ってリングを渡して見たけれど、話したり接するたびにさらに不思議な事が増えてくる。
あまりこのゲームの事に詳しくないようで、戦闘の仕方や敵の強さも教えてあげている。ネットでクエストやミッションの攻略方法とかも調べたりしないようなのだけど、これはゲームをする人の個人差なので、何かこだわりがあるのかもしれないから変だとは決め付けられない。
普通に弟の面倒を見る感じで接して居たけれど、たまにシンヤと仲よさげに話していたり、遊んでいたりするケンタくんを見ると胸のあたりがモヤモヤするのに戸惑っている……ネットでしか繋がっていない世界で、こんな独占欲やヤキモチなんて意味のない事だとはわかってはいる。