3 レベル上げ始めました
今、僕は凶暴な顔をしたうさぎと対峙している。
勇気を出して街の外に出て危機的状態に陥っている……わけでは無い。
「ケンタくん、それ」
「これ?」
「そのうさぎは弱いから大丈夫だよ」
「これ平気?」
「うん、ほら戦闘開始しないと、どっかいっちゃうよ」
見るとうさぎが跳ねて遠くに行ってしまいそうになっていたので慌てて殴りかかる。
僕は戦って死んだりするのは嫌なので、レベル上げとかはまったくやる気はなかったけど、レオさんに弱めの敵なら戦闘不能になる事もないから大丈夫だよと言われて恐々外に出ている。
いざ戦うとなったら武器も持っていなくて、レオさんが使っていない片手斧をくれたのを使っている。
戦闘はレオさんがずっと側に付いていてくれて僕でも勝てそうな弱めの敵を教えてくれるので、レベル上げを始めてすぐにあれほど怖がって居たのはなぜ? というくらい簡単にレベルが上がっている。
今はウサギを斧でぺしぺし叩いている……敵もそんなに強くないので単純作業になってぼーっとして油断して居たら必殺技みたいなので一気に体力を削られてしまった。
「イタタタ……痛い」
「はは、油断したね。いま回復するね」
痛みでちょっと泣きそうになっていたけれど、レオさんが回復魔法をかけてくれると一気に体力が戻って痛いのもなくなる。なんとか倒せたけどちょっと疲れてしまった。
「もしかしてレベル上げ飽きた?」
「うん、もう帰りたい」
「そっか、それなら戻って調理のスキル上げやる?」
「スキル上げやりたい」
レオさんに街にある調理のギルドを紹介してもらって調理のスキル上げをしていて、自分の食べるものを作ったり出来るようになってきた。今はクリームパン作りにハマっている。
レベル上げの為に街から少し離れた所まで来て居たのでレオさんの手を握ってくっついて街に帰る道を歩いている。
「これ、なんでケンタくんだけ出来るんだろうねえ」
「ねえ」
「不思議だね」
「うん」
最初にレベル上げで街から離れる時、ものすごく怖くて移動の時にレオさんにくっついて居たのだけど、歩きにくかったので手を握ったらものすごく驚かれた。
でも何で僕だけ出来て他の人は出来ないのかとかわからないし、レオさんとなんでだろうねといつも話している。手を握るとかの行動はこちらからしか出来ないので、手を握り合うとかじゃなくて僕がレオさんにつかまっているだけになっているのだけど。
「調理どのくらいスキル上がった?」
「クリームパン作れるようになったよ」
「ああ、材料が少ないから上げしやすいでしょ」
「うん、レオさんに教えてもらったやつだとすぐ上がるから楽しい」
街について調理ギルドでスキル上げを始める。
材料はレオさんが他の街から安く買ってきてくれるので今日はいつもより早くスキルが上がっている。
「ここだとレシピが初心者向けなんだよね、もっと高レベルのレシピは他の街に行かないと」
「別に普通に食べれるものが作れたら良いし」
「うーん」
横で唸っているレオさんの事は気にしないでもくもくとクリームパンを作っている。
「クリームパン好きなの?」
「そういうわけじゃないけど」
「シチューとか、鍋とか、効果時間が長いのもあるよ」
「そうなの?」
「パンだとすぐにお腹空くでしょ?」
言われてみれば確かにパンとか食べてもすぐにお腹が空く。でもそんなものだと思ってた。僕が「マジで?」とレオさんの顔を見つめていたら、これあげるってシチューとメロンジュースをくれた。
前から飲んでみたかったメロンジュースが手に入って美味しいと喜んで飲んでたら、それもスキルを上げれば作れるようになるよとレオさんに教えてもらったので、僕の調理スキルを上げる目標ができた。
せっかく自炊? 出来るのだから、いろいろと作って見たくなった。