15 再会
ゲームの大型バージョンアップがあって、新しいエリア解放や新エリアでのクエスト、ミッションとか色々やる事が増えた。
最初の方はあまり時間のかからないクエストやミッションが多かったので、みんなと遊ぶ事が出来たのだけど、だんだん進んできて内容が難しくなってしまうと、ゲームで遊ぶ時間を制限されている僕には、長時間かかるクエストやミッションとかになってくると出来なくなってしまう。
ラビさんとしてコミュのお手伝いをしなくてはならない弥弘ともあまり遊べない事も多いのでさみしい。
毎日ログインするのは無理だったけど、体調の良い日は遊んでいたので、その度にレオさんとシンヤさんの名前のサーチをしていた。でも全然見かけなかった。
そうして過ごしていた時にふと、そういえばローズさんはレオさんが寝るときに売り子をする為に置いておいて、朝ログアウトしてると言っていたのを思い出したので、週末の休みの日の早朝にログインしてみたりした。
今日も居ないかもしれないなと思いつつ確認しに行くと、競売所の端のいつもの場所にローズさんはバサーをして居た。一緒に遊んでいたのがもう何年も前の事だったように思えて、物凄く懐かしくなってしまう。
レオさんはまだ寝ているはずなので、とりあえず話しかけて今の遊んでいるキャラの名前と僕だという事をログで残しておこうと「おはようございます」と話しかけてクリームパンとジュースを買っていると、ローズさんが動き出したのでびっくりして逃げようとしてしまったら「逃げないで」と声をかけられた。
「ケンタくん?」
「うん」
「また会えた」
「うん」
レオさんは仕事が忙しいのもあって、最近はあまりゲームをしていなかったそうなのだけど、僕とまた一緒に遊びたいなと思ってくれて居て、たまにログインして探してくれていたと知って嬉しかった。前とキャラも名前も違うのに僕って言う前にわかってくれた事も嬉しかった。
「名前もキャラも違うんだね」
「あれは決められてたのを使ってたから」
まるっきり本当の事は話せないけれど、レオさんには僕の事情を知って欲しくて、ざっくりと親戚のゲーム会社の人に頼まれて新システムのモニターをやっていた事を「絶対に内緒で」とお願いしてから説明した。
「それでキャラの動きが少し違っていたんだね」
「うん」
「それって近々バージョンアップとかで遊べるようになるの?」
「企業秘密です」
「はは、そっか」
それからお互いの事情もあって、あまりゲームが出来ないので、連絡先を教え合って、僕とレオさんがそれぞれ遊べる日を連絡して、待ち合わせとかもしてバージョンアップで増えた簡単なクエストを一緒にやって遊んでいた。
「新しいエリアも広くて全部回るのに時間かかりそうだね」
「うん、でも一気に回らなくて良いかな」
「デート気分でゆっくり回ろうか」
レオさんがデートとか言ってくるので画面のこちらで照れてしまう。もとのケンタキャラだったら挙動に出てしまっていたかも。ケンタは行動に多少の制限はあったけれど、基本は脳の伝達から僕の動きを表現していたらしいので、怖がったりするのも本当に怖がっているように見えてレオさんとシンヤさんは放って置けなくて声をかけたと言っていた。自分がどういう動きしているかわからなかったけど、そうとう変な動きだったんだろう。
「ここに湖とかあったんだねえ」
「前から連れて来たかったんだけど、ケンタくん怖がるからね」
湖の周りは怖い顔の獣人がウロウロしている。前の時は怖かったけれど、今はまったく怖くない。
レオさんと並んで歩いているけれど、ケンタキャラの時みたいに手を繋げないのがさみしい。
シンヤさんはあまりゲームをしていなかったらしいけれど、最近はたまにログインしてきて仕事の愚痴を言いながらもレオさんと一緒に僕と遊んだりしてくれて、弥弘もたまに合流して四人で遊んだりしている。
ケンタキャラの事はレオさんにしか言っていないのだけど、レオさんと二人で一緒に遊んでいることが多いので、弥弘とシンヤさんにもバレているような気もする。でもいまさら言うのも微妙かなと思って聞かれないのを良い事にそのままだ。
僕はレオさんと二人で遊んでいるときは、以前は全く話す事の出来なかった自分の学校での話や病気の話とかしていて、レオさんも会社の話とかもしてくれたので、ゲームの中だけでは話足り無くて今度、実際に会って話をしようかと約束をした。