14 リアルじゃないゲームの世界
今日は弥弘の家で勉強をする為に来たのだけれど、部屋に沢山あるゲームが気になってしまってついつい二人でゲームで遊んでしまった。「そろそろ勉強しないとやばいね」となった時に机の端に置いてあるゴーグルに気がついた。
「それってVRゲームのやつだよね」
「うん、ネトゲのRPG。まあ、最近はあんまり遊んでいないけどね」
「へー、僕もそれもっているよ。遊んだ事ないけど」
「まじで? 面白いよ。聡久も一緒に遊ぼうよ」
クエストとか色々手伝ってあげるから今度一緒に遊ぼうと言われたので、家に帰ってから設定したり、登録したりとか結構大変だったけど、自分のキャラクターを作ったりとかの準備をする為にがんばった。
あの時一緒に遊んでくれていた人たちはもう誰も遊んでいないかもしれないと思ったし、名前もケンタは選べなかったので自分で好きな名前を作ってキャラを作成して、種族は前と違う犬耳と尻尾が生えているやつにした。尻尾フリフリがうらやましかったんだ。
ゲームをスタートしてみると、VRゲームのMMOは、あの時に体験した世界とは違って、モニターで見る景色がゴーグルので中で目の前に展開している感じになっているだけで、あのリアルさはなかった。
ログインしてすぐに、知り合いの名前をサーチしてみたけれど、レオさんもシンヤさんも居ない。レオさんの売り子のローズさんも探したけど居なかった。僕は以前遊んでいた経験を生かして、レベルの低い冒険者たちと一緒に組んでレベル上げしたりクエストをしたりして普通に遊んでいた。
弥弘と約束していた時間に待ち合わせ場所に行くと、ラビさんが手を振ってくる。
「サク、そのキャラにしたの? もうちょっと可愛いの選ぶかと思った」
「可愛って何? これに憧れてたんだよ」
と、しっぽフリフリのモーションをして弥弘と一緒に喜んだけど、気になる事がひとつ。
「ヤヒロってラビさんだったのか」
「え? どういう事?」
「いや……いや、何でもない」
弥弘が「えー」とか言っているけど、僕はケンタだったとか本当の事は言えないしと悩んで、名前の由来を聞けばいいかと思いついた。
「それってうさぎの名前だよね?」
「名前から取って、菟でPeterrabbitにした」
ラビさんってもっと僕より全然年上の人だと思ってたけど、実際に弥弘の性格を知っていると、面倒見が良くて親切な弥弘そのままだなと思える。
それからは、たまに時間を合わせて一緒にレベル上げしたり、クエスト、ミッションと遊んだけれど、ゲームの世界とわかっているので、強目の敵に殴りかかるとか、無謀な事もどんどんやって楽しんだ。
ただ、何故か弥弘がゲームの中で手を繋げないのが寂しいからと、学校の移動教室の時とかに手を繋いでくるのはどうかと思うんだけど……まさかとは思うけど、僕の事ケンタだと気がついてるのかな? どういうつもりなのかは聞くわけにも行か無くて、弥弘から「はい」と手を出されると毎回こちらから手を繋いでしまう。
ゲームでケンタの時は、ラビさんには少し遠慮して接していたけれど、今は弥弘とわかっているのでついつい甘えて色々手伝ってもらっている。前の時とは違って戦闘不能になるのも怖くないのでミッションも難しいのも進めて、ケンタの時よりも冒険者ランクは随分と上がってきた。
「たまには釣りとかしてのんびりしたいな」
「ヤヒロはコミュニティーの人達の手伝いも多いから忙しそうだね」
「まあねえ、本当はサクとのんびり話とかして過ごしたい」
「僕はミッション進めたい」
「冷たいな。今どこまで進んだっけ?」
学校でいつも一緒にいるのにゲームでも一緒って何も話すことがなくなりそう。
その日はあんまり長く遊べなかったので、弥弘に付き合ってあげて釣りを楽しんだ。




