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13 まさかの夢落ち?

 ………に……ちゃん……


 ………暗闇の中でなにか聞こえる………



「……に…ちゃん!………お兄ちゃん!」


「あ……目を開けた」


 いえ、まだ真っ暗だし。全然開いていませんよ。と言おうと思ったけど声が出ない。目を薄っすらと開けると目の前に泣いている妹の顔がぼんやりと見える。


「ね!ほら!開いてる。開いてるでしょ?」


 ……(ゆう)、うるさいよ。と言いたいけど声が出ない。そのまま、また暗闇に飲み込まれた……



 次に目が覚めた時は両親と妹と、あんまり交流のない遠い親戚のおじさんが居たので、僕はもう死んじゃって葬式でもしてるのかと思った。でもちゃんと生きていて、寝てるのは病院のベッドだった。


 僕はあのとき、具合が悪くなって自分の部屋のベッドで寝ていたのだけど、朝方に急に容体が悪くなっていて、意識不明のまま病院に運ばれて一命は取り留めたけれども、植物状態なっていたらしい。


 妹の優が、「私が発見してなかったら危なかったんだよ」とか「死んじゃってたかもしれないんだから」と威張ってくる。でも、お母さんが言うには自分がもっと早く発見していたらって優がずっと泣いていたというので何回威張られても「ありがとう」ってちゃんと返している。


 そこから動けるようになるのに半年以上かかったけど、何とか退院できるまでには回復した。病気はリハビリ通院がまだ残っているけれど自宅療養までは復活している。


 たまに、あのリアルな体験は全て夢だったのか……死ぬ恐怖まで味わったのに、あれが全部夢だったのかと驚いている。また続きが見たいけど、死ぬところまで見ちゃったからあれで終わりなのかなと考えていたのだけど、家にゲーム開発会社の人と、病院にも来てた遠い親戚のおじさんがお見舞いにやってきた。


 そして、あの夢の中のゲーム体験は【VRMMO】によるもので、脳に直接信号を流して使用するゲームらしく、開発中の動作の実験の為に植物状態の人につけて脳波の状態をモニターしていたらしい。他のあの世界に居た人達は普通のVRゲームで遊んでいるプレイヤー達だそうだ。


 僕があの体験をしたのは、親が入院代を払ってくれるという条件と引き換えにゲーム会社に勤めている親戚のおじさんに頼まれて、新ゲームのシステム治験の参加を許可したらしい……いくらなんでもひどすぎる。

 ちなみにゲームの中で戦闘不能になっても別に死んだりしなくて、普通に蘇生魔法で起き上がれる。僕は偶然意識が戻ってしまったので、おじさんが慌てて病院に駆けつけて取り付けてた機器を外したのでゲームに戻らなかっただけだ。


「このことは絶対に口外しないでもらいたい」

「もしかしてやばい実験だったの?」

「いえ、すでに何年も前からやっている事で何度も実証実験済みです」

「でも、世間にはうるさい人たちもいるのでね」


 おじさん達が慌てて言い訳してくる。よく今までばれないでやっているなあと思ったけど、ゲーム内のデータと実際に体験した上での僕の感想とか意見とかの情報と交換に、うちも僕の入院費と治療費を払ってもらっちゃっているので実際にはこの事についてうちの誰も他言はしないと約束したし、何か契約書みたいなのも書いた。


 VRゲーム会社の人が実験用とは違う普通にゴーグルみたいなのをして遊ぶ用の、新品のMMORPGのゲームをくれたのだけれど、僕はまだそういうゲームを遊べる程には体調が良くなっていなかったので、あのゲームの世界を懐かしく感じて、遊びたいなと思っても中々遊ぶことが出来なかった。


 体は少しだけ後遺症を残しているけれど、休学していた高校に留年という形で復学するか、学校は辞めて違う方法で進学するかと悩んで、留年という形で学校に戻った。


 学校に通う事になったけれど、高校生で留年してるので、年下の同級生にはどういう感じで接して行けば良いのかと悩みながらも緊張して教室に入り、自分の席に着いた途端に、すぐに隣の席の人が話しかけてきた。


「俺は、菟崎弥弘(とさきやひろ)。やひろで良いよ、よろしくね」

「よろしく。ぼく……俺は永島聡久(ながしまさく)

「さくってかわいいね」

「え?」

「え? あ、あの、名前ね」


 名前がね、かわいいなって……と何回も言っているのでこの人大丈夫かな? と思ったけれど、弥弘(やひろ)は爽やかスポーツ少年で元気で明るくて、僕をクラスに馴染めるようにいつも気を使ってくれるので、自分が年上とか気にしないでクラスに溶け込めた。弥弘ともすごく仲良くなれて、今度、弥弘の家で一緒に勉強する事になった。

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