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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
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勇者簀巻きにされる。

通話が終わった。

まだ八時半だ。

もう眠いって、マジで魔王は幼女になったらしい。

俺は記憶にある魔王を思い出す。

紫の髪に金の瞳。

すらりと高い背丈に洗練された仕草。

容姿端麗な男だったのだが…

「それが幼女ねぇ。」

なんとも情けない話だが本人は全く気にしてないのが不思議でならない。

「まあ、異世界に転生してくれて助かったといえば助かった。」

もしこっちの世界に転生していたら間違いなく俺を見てせせら笑ったに違いないからな。

俺は余った時間を見て娼館にでも行こうかと思いたつ。

俺は今も変わらず独身で女にモテた試しがねぇ。

寄ってくる女はいつだって俺を弄んだあげく他の男の嫁になる。

昔結婚を本気で考えた女がいたが全財産持ち逃げされた後有名な結婚詐欺師だと知った。

しかも未だに捕まってねぇ。

あーあ、魔王みたいにいけてる容姿ならこんなふうに女に苦労することなかったんだろうな。

大体、勇者ってのはモテるって相場が決まってるはずだろ?

それをもってしてもまるで呪いでもかかってんのかってくらいモテなかったからなぁ。

俺は夜道を早足で通り歓楽街にたどり着く。

ここはそこそこ大きな街で娼館も豊富だ。

しかし悪質な店も多くて気をつけねばならない。

いくつかチラチラと店先を覗いていると客引きに引っかかった。

「おにぃさーん!どうです!?

今日は開店3周年!記念日なんでいつもの値段三割引っすよ!」

三割引に気を引かれ、俺は足を止めた。

「幾ら?」

「指名なしならお茶に三千、会話に五千、デートに一万だよ!」

勿論、これは隠語。

あからさまな事をいうと警邏にしょっぴかれるからな。

「じゃあ、デートで。」

「まいどありー!」

店から出てきたのは可愛い可愛い女の子だった。

やばい、まじ可愛い!

タイプ!!寧ろなんでこんなとこで働いてるの?

「初めまして、マリナです!」

「はじめまして、俺の事はファリスって呼んで。」

「はい、ファリスさん!」

「さあ、行こう。」

俺はすっと腕を差し出した。

彼女がその手に身を預ける。

そしてそのまま併設の宿屋に入った…。


「あ?金がないってどういうこと?」

可愛い可愛いマリナちゃんが豹変した。

俺は全裸で床に正座。

彼女はベットに腰掛けて足を組み煙管を吹かす。

俺を取り囲むようにして怖いお兄さん方。

一通りむふふな事をした後、支払いの段になってこの状態だ。

いや、おかしい。話と違う。

俺はデートしかしていない。

だから一万なはずなのだが。

「はぁ?これがデート??どこが?

貴方恋人とのデートが即宿屋直行とかが常ならちょっと常識見直した方がよくてよ?」

「いや。デートってのは隠語で…」

むふふな事をするお値段だと…

「勝手にそうそっちが思っただけでしょ?

ねえ、誰かそう言ったぁ?」

「いいや、言ってませんぜ!」

俺を囲んだ男の一人がゲスい笑みを浮かべて言う。

「ほら、貴方の勘違い。

わかったら、私のお値段きっちり百万ゴールド払って貰おうか!」

「ひぃぃい!そんなお金ありましぇーん!」


その後、俺は安売り剣すら取り上げられて身ぐるみ剥がされ、それでも足りずにボコボコに殴られ簀巻きにされて川に流された。

ちきしょうううう!俺は元勇者だぞぅぅ!

覚えておけよー!!


でも、誰でもいい、とりあえず助けてぇ!



結局あれから夜通し流れて明け方岩に引っかかっているところを農夫に助けて貰った。

簀巻き解いたら全裸の男で本当、ごめんなさい。

親切な農夫は服をくれた。

ああ、捨てる神あれば拾う神あり、だな。

「ありがとうございます。このご恩は忘れません。」

「いやぁ、いいって事よ!

それより、カルドアの街から流れてきたってあんた随分流されたなぁ。」

言いながら朝取れ野菜を振舞ってくれる。

「そんなに離れているんですか?」

「おお、軽く見積もって30シェード程な。」

「そうか…」

俺は遠い目をする。と、言うことはここは隣の隣にある集落か。

「ま、一文無しなんだろ?ここはカルドアの街で土木業を営む連中で作られた集落だから日雇いも豊富だ。

三月もすればなんとか旅道具くらい揃うんじゃないかな?」

「そんなにはいられないなぁ。

ここらへん、魔物はでないのか?」

「魔物?出るぞー、わんさか出るぞー。」

「じゃあ、討伐依頼があるだろ。それをこなせば物にもよるが一週間でここから出れる。」

「最近の討伐依頼のメインはホーンベアだぞ?」

「まじか!?」

俺は驚く。

俺はてっきりゴブリンとかコバルトとかそういう小物がいるんだろうって思って聞いたらまさかのホーンベア!

普通の熊の三倍の体長に鋭く長い鉤爪、剛毛な毛並みは生半可な剣さばきじゃ弾かれる。

勿論性格は獰猛で人間なんか格好の獲物だ。

見かけたら非戦闘民は逃げの一手あるのみ。

もっとも気づかれた時点で逃げ切れるとは思えないが。

しかし、危険極まりないがそのぶん討伐には旨味がある。

危険指定Bランク故、一頭退治すれば旅道具なんてあっさり買えるくらいの金が手に入る。

おまけに名前の由来となったツノ。

こいつは薬の材料になるってことで高値で取引される。

「よーし、運が向いてきた!

そいつを退治して恩を返すんで大船に乗ったつもりでいてください!」

「はっはっは!まあ、死ぬなよー。」

あまり期待されてないようだから、驚かせてやるぞ!

まあ、普通全裸でどんぶらこっこと流れてきた男が元勇者なんて思わないものな。

てか、絶対言わない。

本名は禁句だ。


本来ならばギルド経由で熊狩りだが、生憎ギルドタグすら奪われてしまったのでそこからは狩にいけない。

再発行に千ゴールドかかるしな!

てなわけで、俺はギルドを通さず勝手に狩場である森の中に分け入った。

ホーンベアクラスにソロで挑むって狂気の沙汰だが、まあ、俺なら大丈夫。

さてさて。この森でかいし今日明日で出会えるかねぇ?

森は豊かだし、ぱっと見食べれる木の実もあるし、数日なら野営も可能かな。

さすがにあの人のお世話になりすぎるのも申し訳ないし、数日でカタをつけたい。

俺は慎重に慎重を期して、ホーンベアの足跡を見つけるべく行動する。

途中休んで木の実を食べて、また探して、山鳥がいたので即席の罠で捉えて絞め殺して丸焼きにして胃におさめる。

太陽が沈みかける時間になった。

…今日はみつからないかな。

俺は野営をする場所を見繕う。

草をふみ鳴らして寝床を作って寝転がる。

ちっと早いがどうせ暗くなったら行動しづらい。

今日はこのまま寝ちまうか。

…そういや、スマー…なんたら、あれもあいつらに取られて売り飛ばされちまったな。

と、いうことはもう魔王とは話せないのか。

それはそれでつまらないな。

そんなことを呑気に思いつつ俺は目を閉じた。




遠くで悲鳴が聞こえ俺は目を開けた。

太陽はとっくに沈みきり、夜になっていた。

時計なんてものはないので大体だがおそらくあれから一時間も経っていないだろう。

もしかしたら悲鳴の先に目当ての熊がいるかもしれない。

もしそうなら何日も野営とかしなくて済むかもな。

俺は口元を歪めて悲鳴の方へと足を向けた。



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