大ピンチ!
「おい!ファリス!一体何があった!?」
あの糞悪魔が去ってすぐにレオナルドが現れる。
「どーもこーもねぇ!魔族が竜引き連れてお前の兄貴を連れて行きやがった!」
「なんだって!?」
レオナルドが目を見開く。
「兄貴はあの勇者の仲間だったんだぞ!?
そうやすやすと捕まる訳ない!」
「実際捕まったから!それと他の連中もまとめて捕まったみてーだ!」
「嘘だろ!?」
「嘘かどうか…」
言葉を途中で打ち切り俺は回避行動をとる。
その一秒後、先程まで自分が立っていた箇所に液体がばしゃりと堕ちてきて、煙をたてて足場であった石畳を溶かす。
「ああ!ったく!!話は後だ!
…ってか、ケイフォルは!?」
いつもなら二人は一緒にあるはずだが、彼の姿が見えない。
「知らん!部屋にはいなかった!こっちにはいないのか!?」
「はあ!?お前らいつも一緒だろ!?
こっちにはいねぇぞ!?」
「なんだって!?何かあったのか!?」
「知るか!人の心配してる暇はねぇぞ!」
俺の言葉を証明するかのように尖った骨が堕ちてくる!
「くそったれ!」
レオナルドがバトルアックスで打ちはらう。
「とにかく、バラバラと動かれると面倒だ!
できる限り今、撃ち落とす!」
そう言って俺は呪文を唱える。
しかし、呪文を唱えている間にも竜は散り散りになりあちらこちらを破壊し始める!
ちきしょう!
せめて俺にむかってかかってくれば倒しようがあるのに!
「おい!!このままじゃ!?」
偶々こちらに向かって滑空してきた竜の首をバトルアックスで跳ね飛ばしたレオナルドが焦ったように言う。
「わかってるよ!炎の矢!」
比較的下の方にいた竜を丸焼きにしながら言う。
「二人とも!俺が竜をおびき寄せるから迎撃よろしく!」
『ジェシー!?』
俺とレオナルドが思わず振り返って名前を呼ぶ。
その顔はいつもの犬顔ではない。
男の顔だ。
女なら一秒でオトせるいい顔だった。
直後、性別、種族を超えて魅了する歌が場を支配する。
心を鷲掴みにする世界を蕩けさせる歌声だ。
それは空を飛ぶ竜さえも虜にした。
竜の攻撃が些かではあるが緩み、こちらに向かってきた!
突風が、酸の大雨が、骨の突撃が、容赦なく俺たちを襲う!
しかし!
「結界!」
俺は防御魔法を展開、全ての攻撃を完全に防いだ!
そこに…!
「うぉりゃあ!」
バトルアックスが宙を舞い竜の首を跳ね飛ばし、さらに弧を描いて舞い戻るついでに別の竜の翼を切り落とす!
翼を失った竜は地面に激突しそのまま動かなくなった。
バトルアックスがレオナルドの手に戻ると同時に結界を消して俺は攻撃呪文を叩き込む!
さらに数頭竜が灰になる。
「脆いな!」
「腐ってるから通常の竜よりかは柔らかいんだろ!」
レオナルドの言葉に俺は返す。
手応えがありすぎるくらいだ。
これが生きてる竜ならもっと苦戦したし、下手すりゃ死んでた。
「なんとかなるか!?」
「多分!」
しかし、やはりそうはいかなかった。
一頭の竜が大きく息を吸い込んだ。
それを見た瞬間本能でやばいと悟った!
「撤退!」
俺は大声で叫ぶと同時にジェシーの手を引き城の内部へと駆け込んだ!
俺達が城の内部に身体を潜り込ませたと同時に轟音と閃光が疾る!
耳がきーんとなり一時聴覚を失った。
手を引いて連れてきたジェシーが口をパクパクさせている。
何が起こったか聞いてるんだろう、簡単だ。
竜の吐息だ。
その一撃で元々いた場所が木っ端微塵になったのだ。
あと少し退避が遅れていれば間違いなくあの世に旅立っていた。
…じゃあ、レオナルド達は?
もうもうと沸き立つ煙の中で倒れているのが見えた。
アッサムを庇うようにしてレオナルドが覆いかぶさり、シャルがアッサムに守られるように下敷きになっていた。
それでもアッサムもシャルも無傷ではない。
「ぐっ…!」
「イタタ…」
「今、治癒する…高位治癒」
獣人だが気にせず魔法の範囲にいれてアッサムが治癒する。
俺の撤退宣言後、レオナルドが庇うように伏せたのがよかったのだろう。
レオナルド様様だ。
そして、面白いことに竜の方も無事ではなかった。
竜の吐息を吐いたと思われる竜は首がもげて死んでいた。
「ああ、腐った喉に竜の吐息は負担が大きいんだな…」
つまり、自爆だ。
腐った脳みそでは撃てばどうなるかわからなかったのか、はたまた自爆覚悟で仕留めにきたのか…わからなかった。
「竜の吐息は一頭につき一回!回避すればこっちのもんだ!」
「そう簡単にできねえよ!」
少しばかり癒えた身体を起こしてレオナルドが愚痴る。
「簡単だ!大きく息を吸ったら逃げろ!」
「じゃあ、あれは逃げた方がいいね!」
シャルが言うが早いかアッサムと連れ立って走った。
俺は空を見上げて…!
数頭の竜が同時に竜の吐息を吐こうとしている様を見た!
「やべぇぇ!!」
しかし、今回は撤退が遅れて俺は煌く竜の吐息に巻き込まれた!