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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
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もう一人の旅の仲間

瞬きするとそこは国境都市だった。

国境と隣接する国の要。

全部で4つある国境都市はその重要性から4大主要都市の名を王家より賜っている。

ここはそのうちのひとつ獣人の国と隣接する国境にある都市ヘナレア。

そんな大都市に俺達は一瞬でたどり着いたのだった。

「うわっ!本当にヘナレアだ!」

教会を出ての第一声がそれである。

まあ、そう言いたくなるのもわかるわ。

転送装置かわ国中にあれば旅は楽なのにな。

「こんな大都市僕達初めて…!」

「ああ。」

シャルは俯きながら外套のフードを目深にかぶり静かに話し、アッサムが彼を庇うように立ちながら頷く。

お前ら何してるの?

ジェシーだけがお上りさんよろしくキョロキョロしまくっている。

「まあ、すぐにこの街から出るから。」

「えー?観光したい!」

「こらこら、そんな悠長な事言ったらんねぇよ。」

ほら、烈冷の使者がそんな事言ってるとキレまっせ?

俺はちらっと彼らを見て…

「そ!それ、いいな!」

「ええ。是非観光しましょう!」

二人がかぶりつくようにジェシーに同意した。

これにも驚いたが、さらにもう一声。

「ダメ!そんな余裕ないでしょ!?」

「我々は急ぎの旅の途中だ。」

まるで悲鳴のような声で却下するシャルと即座に同意するアッサム。

お前らどうした?

烈冷の使者も三馬鹿もおかしい。

いや、ジェシーは通常運転か。

「お前ら、なんかおかしくないか?」

俺は烈冷の使者を見て言う。

「ど、どこがだ!?」

「ええ、私達はいつも通りです。」

いやいや全然違うから。

「ジェシー、観光だっけ?」

「はい!」

「そうだな、獣人の国への入国許可が降りて時間があるならちらっと見てみるか。」

「やった!」

「ええ!?」

「早めに獣人の国へ入った方がいいのでは?」

「そうだな!この街を一周しよう!」

「実に興味深いです。」

またもやいつものこいつららしくない。

「シャルとアッサムは乗り気じゃないみたいだし、先に宿にこもっていればいい。

あと、レオナルドとケイフォル。

考えればわかると思うがさすがに街一周してる暇はないから。」

「う…そ、そうだね…」

「早く宿に入ってしまおう。」

「一週間くらいかければ街一周できるぜ。」

「ええ。」

「お前ら本気で言ってる?」

俺は胡乱な目で烈冷の使者を見た。

そうこう話ながら旅券発行所に着いた。

基本獣人の国との人や物の行き来は無い為ガラガラだ。

「ほら!お前らの出番だ!」

俺は烈冷の使者の背中を押して審査官の前に押しやった。

二人の足取りは実に重かったが、まあ、押し出してしまえばこちらのもの。

俺達は大人しく彼らがうまくやるのを待つ。

そうこうしているうちに俺達は旅券をもぎ取った。

おー!なんだかんだいいながらもこいつらは優秀だ!

俺はホクホクで旅券をしまい込む。

烈冷の使者の顔色はすこぶる悪い。

本当になんなんだ。

「さて、思ったより早く旅券もとれたことだし、軽く観光して一泊したら獣人の国だな!」

俺は順調に物事が進んでいくのを心地よく感じながら言ったのだった。


たっぷり観光して夜。

宿の一室でいつものように呪いの音が鳴り響く。

「もしもし」

「もしもし…」

「ん?どうした?お前疲れてねぇか?」

いつものふざけた雰囲気がなく聞いてみた。

「おう…わかるかの?実は今日恐竜に追いかけられての。

危うく死ぬかと思ったわ。」

「きょーりゅー?」

「数万年前にわしのいる世界の覇権を握っていた巨大生物じゃ。」

「数万年前!?」

それは古代文明がまだ滅ばず残っていた頃合いか?

いや、もっともっと昔の話…人間なんていたのか?

「人間のいない昔の世界じゃ。

神話級に昔の話。」

「きょーりゅーってやつは本当にいたのか?」

そんな昔にそれこそ人間のいない世界にいた生物なんて信じられない。

「残念ながら実在するのじゃ。」

「なんでわかるんだ?」

「地面を掘るとな、骨が出てくるじゃよ。」

「犬が隠した骨かよ。」

俺は呆れて突っ込む。

しかし

「大陸を作る土は何層にも重なりあっている。

長い年月をかけ幾重にも重なった地層ともいうべきものの一番奥深くから出てくるのじゃ。

簡単にシャベルで掘り当てて出てくるのではない。

…案外そちらでもそれぐらい深く掘ってみたら何かでるやもな。」

大陸の奥深く?

子供が遊ぶ砂山を掘るのとは違うということか?

仮にそれくらい深く掘ったとしてこちらでは何が出るのだろうか。

古代文明を作った『何者か』だろうか。

「そなた冒険者なのだろ?

こういうの好きじゃろ?」

「そうだな、気にはなる。

だけど、話があまりに壮大すぎて俺みたいな一介の冒険者には手に余る話だ。」

俺の言葉に魔王はくつくつと笑う。

「何が一介の冒険者じゃ。仮にも魔王と呼ばれたわしを殺した勇者じゃろうに。」

「数万年の歴史は勇者の手にだって余るさ。」

「そうかのぅ。」

「それよりそんな昔の骨がなんで動いて襲ってきたんだ。」

「未知の魔法じゃよ。」

「またか。」

いい加減にしてほしい。

ま、遠い異世界での話であって俺には全く関係ないのだが。

「これで三度目。しかし、さすがに三度目ともなるとかってがわかるというもの。」

「へえ。」

俺は感嘆の声をあげる。

流石は千年生きた魔法の叡智たる魔王ということか。

「三度起こった事象を1から洗い出し、共通点を出す。

その共通点こそが魔法発動のトリガーじゃ。」

「で、その共通点とやらは?」

「わし、朱雀様、稔の3人が揃うことじゃな。」

「誰だよ。」

「わしの友であり人間の営みを教えてくれる先達よ。」

「そんな奇特な人がいるのか。」

「わしは異世界の住人であった記憶が色濃くて度々そちらの常識をこちらの世界で当てはめて考えてしまう傾向があるのじゃ。

それを正してくれる者たちよ。

本当にわしにはもったいないのじゃ。」

魔王の癖して人間に本気で感謝してるようだ。

「仲間とは友とはかけがえのない存在よ。」

言われて頭をよぎったのは今共に旅するメンバーだ。

「…確かに。」

「ほう、やはりお主にとって魔王討伐パーティは特別か?」

「違う、そいつらじゃない。」

俺は首をふる。

「今共に旅してる連中だ。」

「おお、そういう人間がいるのじゃったな。」

「うち二人は獣人だけどな。」

「わしから見れば獣人も人間も大差ない。」

そういうもんかね。

当の本人である俺達はその間に明確な線を引いてるんだけどな。

でなけりゃ獣人を獣人だからという理由で奴隷にしたりなどしない。

「ところで魔界には行けそうなのか?」

「ああ、予定通り獣人の国を経由する。」

「ほう。獣人の国に行くならついでに旧知の仲たる…ほら、いたろう。金色の剣士。」

言われて俺はあいつの顔を思い出す。

討伐パーティの中では最も意気投合した奴だった。

主にベッドの中で。

しかし、魔王討伐後すぐさま国に帰り以降音沙汰無い。

まあ、俺の見事すぎる擬態のせいで取りたくても取れないってのもあるだろうし、今更手紙なぞ来ても読まずに捨てるわ。

「会わねえよ。会えるような立場にあいつは最早いないしな。」

「ほう!つまり魔王討伐によってそやつは正当な報酬を得たということか。」

「そうだな。」

「どこかのバカとは違うのぅ。」

「なんだと!?」

俺はイラっときてつい語感を強める。

それに魔王は驚いたようだった。

「すまん、冗談が過ぎたようじゃ。」

「いや…俺も獣人の国に行くからナーバスになってた。」

「会いたくないならば無理して会う必要はあるまい。

今の仲間を大事にすればよいのじゃ。

ここにその見本がおる。」

「お前の場合死んだから仕方なくな面もあるだろう。」

「まあ、しかし仮にそちらの世界に復活したとしてもかつての側近達と仲良くなぞ出来る気がしない。

次、仲良くするなら勇者、そなたがよい。」

俺はまるで愛の告白でも受けたような感覚に陥る。

それぐらい衝撃な告白だった。

「お前、俺がお前を殺したんだぞ?

それで仲良くしたいって変態かよ?」

「ふふふ…勇者と勇者パーティに齟齬があったように魔王と側近達にも齟齬があった。

そしてもし仲間を今一度選べるならばわしは勇者の仲間になりたいと思うし、そなたもそれを受け入れるじゃろう。」

「なんでそう思うんだよ。」

「こうやって気楽に話てくれるからじゃ。」

言われて言葉に詰まる。

もし、こいつが憎い誰かならば。

俺がもっと勇者らしい人間ならば。

いくら4年経ったからといって、いくら異世界で生まれ変わって人間になったからといって、こうも気楽には話せまい。

少なくてもかつてのパーティメンバーより俺は魔王を受け入れている。

「…そうだな、そういうことなんだろうな。」

俺は言葉を吐き出した。

もう一度やり直せるならば、俺は魔王と話してみるだろう。

問答無用で攻撃魔法を叩き込み容赦無く死闘へとなだれ込むなんてことはしない。

きっと話せばお互いの行き違いが判明して今とは違う形に落ち着いていたかもしれない。

「あの時の選択全てが間違いとは思わぬ。

バッドエンドの向こう側はハッピーエンドに繋がっていたと断言出来るからの。」

「ならいいが…」

「しかし、魔王復活とかいう不穏な動きや魔王の側近を名乗る不埒な輩がいるのも事実。

我々はすでに新しく楽しい人生を謳歌しておるのに邪魔だてするならば容赦はせぬ。」

魔王が魔王らしいセリフを吐く。

「そうだな。邪魔するやつは叩き潰す。」

「その通り。じゃが今のうちに頼んでおく。」

「何を?」

「もし万一わしが復活して再び災いの素となるようならば、その時は躊躇せず滅ぼせ。」

「なにを!?」

「わしはこちらに来て人間が好きになったのじゃ。

その人間の災いにしかならないのならばわしは潔く死を選ぶ。

なに、死が全ての終わりではないことをわしは知っておる。

またひょっこりどこかで生まれ変わってそなたに連絡を入れるやもよ?」

「じょーだんきついし…」

笑えねぇよ。

あんたが人間を好きだというのと同じように俺も魔王が好きになっているんだ。

誰も知らない、知ることのないもう一人の旅の仲間。

それが魔王、お前なんだよ。


仲間を殺す勇者がどこにいるのか教えてくれ。

魔王。

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