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勇者と魔王はお友達!  作者: さやか
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似てない!

「…と、いう訳でダンジョンは消えた。」

ファリスがギルマスに大まかな説明をした。

「いえ!私が聞きたいのはダンジョンの事ではありません!

なんでエマの意識がないのですか!?

なんで貴方に抱かれての帰還なんですか!?

私、ファリスさんに任せましたよね!?

エマを頼むと!!なのに何故!?」

ギルマスが食ってかかるのを横目に俺は腕の中で眠るエマを見た。


あれからほぼノンストップで俺達はダンジョンを徘徊し魔物を見つけては即討伐して金を稼いだ。

本当に倒せば倒すだけ金が入った。

しかし、夕方になると金が尽きたかのように何も吐き出さなくなり、ファリスは魔族を用無しとばかりに斬り伏せた。

すると、ダンジョンだった場所はただの遺跡に成り替わり俺達は無事に外に出れたのだ。

ダンジョンはファリスにとって金を稼ぐ手段でしかなかったようだが、俺は違う。

金なら困ってないからか、俺にとってのダンジョンは修行の場。

出てくる魔物は皆BからAクラスの大物ばかり。

終盤では全員でかかっても勝てるかどうか確信が持てなかった(ドラゴン)さえもファリス抜きのCB混合パーティで勝てるまでになった。

まあ、かなりギリギリではあったが。

それでも最後に落とされた(ドラゴン)の爪は素材として大変価値があり高値での取引が期待できる。

もしくはそれを加工して自身の武器防具に組み込むか。

使い方は色々ある。

悩むところだ。


それはともかく。

ダンジョンから出た俺達はギルドに帰り、飛びかからんばかりに出迎えたギルマスに経緯を話すことになる。

主になんでエマの意識がないのかという事をしつこくしつこく聞いてくる。

「エマの意識がないのによくもまぁ、ダンジョンを徘徊して!

普通仲間が倒れたら帰ってくるのが筋でしょ!

それを儲けを優先して…!」

ギロリと俺達を睨んでくる。

俺はこいつの睨み顔が気に入らないので睨み返す。

「えー、でも、魔法と薬でなんとかなったし?」

ファリスは悪びれもせずしれっと言う。

「薬ってなんの薬を使ったんですか!

話を聞くにかなりの大怪我だったみたいですし!

そこらの安物だったら承知しませんよ!」

「…これだよー!」

ジェシーが例の薬を出す。

「これはあの有名な…!よく持ってましたね!」

少し機嫌が浮上したギルマス。

「あ、それ俺も思った。しかもその容量。

市販されてないよな?」

ファリスも同じ事を思ったようだ。

値段的にこいつらに手が届くような品じゃない。

どこかで盗んできたと言えば信じられるレベルだ。

「…言っていい?」

「まあ、別に隠している訳ではないしな。」

アッサムが肩を竦める。

「どういう事だ?」

ファリスが首を傾げる。

「…それを調合したのは俺だ。」

…えっ!?

『えええーーー!?』

ここにいるエマ以外全員が声をあげた。

「高名な薬師が作ったと聞いてますが…」

「確かにその薬師は実在するがだいぶ昔に亡くなっている。

俺はその方に師事し、免許皆伝を貰い受け正式にその名を継ぐ事を許可されている。」

「なんだって!?」

俺は驚きの声をあげた。

「ってことは金が尽きたら薬を作れば…!」

きらんと目を光らせたのはファリス。

こいつの頭はそれしかないのか。

「残念ながら素材が滅多に揃わない。」

「素材?素材なら俺が…!」

ファリスの食いつきが異様だ。

「この薬は(ドラゴン)の血液と魔植物(アルラウネ)の絞り汁、精霊の源泉水を蒸留して作る。」

「…」

「何その無駄に豪華な素材…」

そりゃそれだけのものを使えば効くわ。

どれもこれもAクラス素材じゃねぇか。

(ドラゴン)の血液なんてこいつらどうやって手に入れたんだ。

一回分の量で宝石が必要になるのも頷ける。

「なるほど…しかし、あの薬師の正式な弟子…いや、2代目にお会いし、こうやって縁続きになれたのは運がいい。

今後我がギルドはギルド依頼として今の素材を集める事を優先的に行っていきます。

代わりに薬を卸して頂ければ…」

「手間に比べて完成品の量は少ない。

元は取れないと思った方がいい。」

「構いません。量が少なくても不定期でも薬が手に入れば我がギルドには優秀な冒険者が集まり栄えますからね!」

そして、ギルマスとしての評価も上がるって訳か。

俺は鼻で笑った。

「まあ、薬が最高級品の物を使って頂けたようですし、今回はエマの件目を瞑りましょう。

さあ、返してください。」

ギルマスが俺に手を伸ばす。

「…」

「…」

「…返してください」

動かない俺に痺れを切らし再度要求してくる。

が、俺は返さない。

エマは獣人だ。

何も知らずに雇っていたのか、それとも知って奴隷のように扱われていたのか…。

後者だった場合は…!

「レオ、落ち着いてください。」

「ケイ!」

「そんな風に警戒してはなりませんよ。」

「しかし…」

「大方、この方の扱いがどのようなものだったか不安なのでしょう?」

「当たり前だ!」

「この方の性格は?」

「傍若無人!」

「…なら真っ当な扱いだったとわかりますよね?」

…。

「あ、そうか…そうだよな…」

俺は何を考えていた。

この女は俺に一歩も引かず食ってかかる気の強さを持っているのだ。

奴隷のようにこの男が扱えば今頃この男の命はないだろう。

「それに、ギルマスはこの方の身を心底案じております。

大切にしてきた証拠です。」

ケイは事実を淡々と話す。

そうだ、そうだった。出かけにあんだけ口を酸っぱくして無茶するなと言っていた。

お前は親かと突っ込みたくなる程だった。

単なるギルマスと受付嬢とは思えない程この二人は強い絆を結んでいるようだった。

…なら、渡してもいいよな…

「わかったら私に返してください。」

それでも俺は動かない。

動けなかった。

自分でも理由がわからなかった。

だが、ここで渡さないのは実に不自然。

俺が俺の行動に内心焦っていると…

「ん…」

彼女の意識が浮上する。

閉ざされた瞳が開かれ桃色の光が見えた。

その光に最初に照らされたのは他でもない俺!

その事実に心が震えた。

「あれ?ここは…!?はっ!ダンジョンは!?

いや、え?赤髪??はっ!?何この体勢!?

えっ!?はぁっ??」

パニックに陥り先程までおとなしかったのが嘘のように暴れだす。

しかし、この程度で俺から逃げられると思うな。

俺はガッチリと抱きかかえ離さない。

「…エマ!本気出していいから、こっちに戻っておいで!」

「とっくに出してるぅぅ!」

「エマの本気でビクともしないだって!?

怪我の影響か!!?」

「はっ!?怪我!そうだ魔族に私…あれ?

痛くない…?」

ひたっと止まって腹を見る。

無論服に隠れて傷は見えない。

「薬で治癒した。数日で完治の見込みだ。」

「え!?そんな薬が…」

「…ああ…その…」

アッサムが言い淀む。

言い淀んだ理由を察した表情をエマは見せた。

エマだけではない、ギルマスも。

…ギルマスも知っていたのか…。

実に面白くない。

それが正直な感想であるが何故面白くないのかがわからない。

「君達…気づいたんだね?」

「ああ、最初魔法を使ったが効かなかったので。」

「ああ。そういえば魔法と薬って言ってましたね。」

ギルマスが肩を竦める。

エマが助けを求めるような視線をギルマスに送る。

「…おい!」

俺はエマに声をかけて視線をこちらに戻した。

「まあ、君達はファリスの知り合いだし…。

アッサムさんはあの薬師の2代目だし…。

言っても平気かな…?」

「え!?でも万が一…!!」

「エマはどう?」

「どうって?」

「共に戦ってみて信用に足るかどうか。」

言われてエマは黙る。

ここで信用できないなんて言ってみろ、その喉元に喰らい付いてやる。

「………大丈夫だと思う……」

「なら話していいね。」

こくりと静かに頷くエマ。

そんなエマをぎゅっと抱きしめた。

エマが驚いた表情を見せた。

「みなさんお気づきのようにエマは獣人です。」

ここで息をひとつ吐く。

「正確には私達…です。」

「は?」

ファリスが声をあげた。

「え?ウォーレンが?獣人??」

「ええ。こう見えて獣人です。」

ふにゃりと微笑む。

エマさえ関わらなければ普通の涼やかな男だ。

「すみませんね、ファリスさん、ずっと黙ってました。」

「いや、それは別に…だが、よくギルドマスターになれたな。」

本当だ。

ここは人間の国。

別に人間の国に限らずまた、獣人に限る話でもないが基本異国で異国人が就職先の要職につくのは不可能とまでは行かずともかなり厳しい。

その中でも獣人は奴隷となる可能性が高い民族でありその民族の下につくなど基本あり得ない。

その『あり得ない』を達成したというのか?

「まあ、ご覧の通り私ども見た目は普通の人間。

たとえ裸にされようとも口を割らない限りバレませんし。

かつてお世話になったとある貴族の名と財産を頂きギルドマスターになりました。」

「裸にしても…?獣人としての本性の一部が体に無いという事ですか?」

ケイが些か焦って聞く。

普通、あり得ない話だからな。

「ええ。幸いにもそこは失いました。」

「失った?」

「奴隷落ちした際に主人の逆鱗に触れてバッサリと。」

『…!』

思わず俺達はぶるりと体を震わす。

獣人の本性の一部を切られる痛みは手足をもがれるより痛い。

それをされたのか。

いや、そもそも。

「奴隷!?お前奴隷なのか!?」

「ええ。この通り。」

言って彼は服を緩めて背中を見せてくれた。

そこには紛う事なき奴隷紋がくっきりと入っていた。

一度奴隷となれば生涯奴隷。

主人が死ねばその血筋が主人となり死ぬまで奴隷が普通。

なのに、何故こんなふうに生きている?

「エマのおかげです。」

彼は俺の心を読んだかのように語り出す。

「私とエマは共に暮らしていましたが、国を出るゴタゴタで生き別れ状態に陥りました。

別れた先で私は人間の国へたどり着き奴隷に堕ちました。

しかし、主人の元で奴隷として過ごしていたある日冒険者になっていたエマと再会したのです。

そして、私が奴隷に堕ちていると知って唯一の解放へと動きました。」

「まじか。」

ファリスが呟く。

一度奴隷に堕ちてしまえば永久に奴隷。

それは生涯変わらない。

しかし、命令する人間がいなくなれば実質自由という契約の裏をつく方法がある。

「主人を殺したのか。」

「はい。エマが主人とその血筋を皆殺しにしてくれました。」

さらっというが壮絶である。

「そして、私は主人であった貴族の名を貰い受けその財産をまるごと頂きこの街で冒険者ギルドを開いたのです。」

すげぇ、下克上である。

「私がギルドマスターになり生活の安定を見届けると、またエマは旅立っていきました。

彼女には旅の目的がありましたから。」

「目的?」

「…王子様探しです。」

「ちょっと!そこは言わないで!!」

思わずエマが叫ぶが…なんとまぁ…

俺は可哀想な子を見る目で彼女を見た。

ほんのりと赤い顔を背ける。

「止めたんですよ。この街で私と暮らしましょうと。

生活は安定してますし、エマ一人養うくらい簡単です。

しかし、彼女はこの世界のどこかにいる己の番を探し旅に出たのです。」

俺はなんとなくケイを見た。

ふいっとケイは顔を背ける。

この二人似た者同士だ。

「しかし、見つかる前に彼女は奴隷狩りに出くわします。

その際、彼女もまた私同様の目に逢いまして。」

「!」

俺は顔を歪めた。

「まあ、奴隷に堕ちる前にギルドを総動員して救出しましたが。」

「…あの時はびっくりしたよ。

街中の冒険者が小規模の奴隷狩り集団を襲撃したんだからね…。」

「貴女を助けるのは当然です。」

「…それは同族だからか?…それとも…?」

「あ。そういえば肝心な事を言ってませんでしたね。」

ギルマスは惚けた声を出す。

「私達兄妹です。」

…。

『はあっ!?』

俺はギルマスとエマを見比べる。

似てねぇ!!!

エマは金色のウェーブのかかった髪を肩で切りそろえ、つり上がった桃色の瞳を持つ健康的な女性。

対してギルマスは色素の薄い月白色の髪に垂れた瞳は空色の淑やか系男子。

何から何まで似てねぇ!!

「ああ、だから身内のように扱ってたのか。」

ファリスは頷くが…いや、似てなさすぎだろ!

「なによ?文句ある?」

きっと睨んでくる。

「どーせ、兄貴のほうが女っぽいとか思ってんでしょ?」

いや、思ってない。

「ふん、でも私の番はきっとこんな私でも受け入れてくれるわ!

見てなさい!絶対幸せ掴んでやる!」

「…」

「ちょっと、なんとか言いなさいよ!」

ペシペシと俺の胸を叩いてくる。

が、意に返さないでエマを見る。

「今回の討伐でエマは冒険者に復帰するのか?」

「させません。」

きっぱりと言い切るギルマス。

「なんで!」

「怪我をして帰ってくるなど言語道断。

兄としてギルドマスターとして到底許可できません。」

「うっうっう…」

「泣き真似しても無駄ですよ。」

「う!」

エマは固まる。

「いいもん、こっそり出てってやる。」

「こら!」

「だって!こんな所にいたら私だけの王子様に見つけて貰えないじゃない!」

「こんな所とは酷い!」

「つまり、エマは番が見つかれば冒険はとりあえずしなくてもいいと。」

「…まあ、ね。でも元々冒険者ってのが性に合っていたみたいだから…。

隙あらば冒険したいわ!」

きらっとした笑顔で言われてしまう。

あー…俺は天を仰いだ。

ぽんと肩をケイが叩く。

「諦めて認めない。」

「でもな…」

「認めず去るのもいいですよ?

でも彼女は絶対隙をついてここから出ていき危ないことを平気でやりますよ。」

「う」

「それに、獣人は一度番に会えば決してその縁からは逃れられません。

だから貴方は会わないように国を出たのでしょう。」

まさにその通り。

「ちょっと、なんの話よ。」

俺は深い深いため息をついた。

ちきしょう、逃げられねぇ。

そして逃したくねぇ。

そう思ってしまったら俺の負けだ。

「おい。」

「なによ。」

「俺はレオナルドだ。名前を呼んでみろ。」

「はあ?」

「呼べ」

「…レオナルド?」

「…レオでいい。」

「レオ?」

「そうだ、エマ。それがお前の番の名前だ。」

……

「はぁぁぁぁ!?なんの冗談よぅ!?」

「俺だって頭抱えたいわ!だけどお前を離したくねぇもん!」

「もんって…」

「あの、そもそもレオナルドさんは獣人なのですか?」

ギルマスが聞いてくる。

「ああ。」

「私もです。」

俺とついでにケイがカムアウトする。

「なんと!」

「嘘でしょ!?一体なんの本性なわけ!?」

「…獅子だ。」

「え!?嘘!?どこが!?性格!?」

凄まじく失礼な事を言うエマ。

番でなければ捨ててるぞ。

「ちなみに私は鷲です。」

「あ、本当だ。」

ギルマスがケイの背中に触れて言う。

触ればわかる羽の感触。

「あんたはどこに本性の一部があるのよ?」

証拠を見せろと言わんばかりの目で見てくる。

「…無い。」

「無い?」

「俺は生まれつき本性の一部がない。」

「そんなことってあるの?」

「さあな?少なくても俺の周りでは異例事態。

俺の存在は無いものとされた。

だから居心地悪くて国を飛び出し冒険者やってるんだ。」

「そうだったんだ…」

エマが複雑そうな目で見る。

「俺は国に帰るつもりは無い。従ってお前が国の故郷に帰りたいと言っても帰さない。」

「あ、故郷は魔王侵攻で全滅しましたから帰りたくても帰れません。」

ギルマスがさらっと言う。

「…全滅?」

「ええ。私達はおそらく獣人最後の兎人族です。」

「なんだって!?」

「嘘!俺、更格廬(カンガルー)だと思ってた!」

ファリスが何気に酷い事を言う。

まあ、あの怪力と跳躍みればなあ…。

まさか滅んだ獣人族の一種兎人族が俺の番とは。

いや、そもそも本当に兎人族なのか?

兎人族はか弱く戦闘とは縁遠い平和と花を愛する一族だぞ。

「故郷が無事だった頃は普通の兎人だったのよ。

怪力なんてなかったし。

でも魔王侵攻から逃げて人間の国で生き延びる為にはか弱かったら駄目なのよ。」

「それよくわかります。」

ケイが頷く。

獣人は人間に比べれば丈夫である。

しかし、それだけで冒険者として生きていけるかといえばそうではない。

血の滲むような努力がそこにはあったのだろう。

「益々気に入った。」

俺はニヤっと笑う。

かっとエマが赤くなる。

「おーい、俺達外でるぞー」

言ってファリスがギルマスの首根っこ掴んで外に出た。

追随するCランクと…ケイ!?

「頑張って下さい。」

な、何を頑張れと….!?

俺は二人きりにされて呆然とする。

「ねえ。そろそろ降ろしてよ。」

エマの声に今更ながら彼女が俺の腕の中にいた事を思い出す。

「…嫌だ。」

「なんでよ!」

「離したくない。」

「な、な、な….!?」

「離したらどっか危ない所へ飛んで行っちまいそうで怖い。」

俺は正直に今の気持ちを伝えた。

思えばこいつが俺の番だという予兆はあったのだ。

こいつが食ってかかれば相手をしなければ気がすまなかった。

気に入らない筈なのに、例えケイでもこいつと話すのが許せなかった。

ファリスに頼るエマに苛々した。

ギルマスとの関係の深さが気に食わなかった。

全部こいつが俺の番だからだったんだ。

番に出会う前、もし旅先でうっかり番と出くわしても逃げてやると思ってた。

出来ると思ってた。

だが、実際に出会うとそれは無理だ。

本能が囁く。

それはお前の女だ。決して離すな、と。

「なあ、お前は?お前は俺が嫌か?」

「うっ…。困った事に嫌じゃない。

嫌なら武器を出して全力で抵抗してる。」

ぎゅぅっと小さくなって彼女は言う。

跳ねっ返りの子兎が俺に甘えてきた。

ああ、ダメだ、可愛くて仕方ない。

「そうだ、お前は俺のだ。わかったか?」

「うっ…」

「世界のどこを探したってお前の番はいない。

なぜなら目の前にいるのだから。」

「ううう…」

「なあ、認めろ…確かに俺はお前の理想とは違うかもしれねぇ。

だけど、お前のその気の強さも怪力も好きだし、冒険に出るなら着いていける。」

はっとしてこちらを見る可愛い子兎。

本性が兎という事は兎耳を斬り落とされた筈だ。

だけど、俺の目には見える。

垂れた兎耳が。

「どうだ?諦めて俺を番として認めろ」

「ううう…」

ぎゅぅっと俺に抱きついてきた。

耳まで真っ赤。

ああ、言葉はなくてもわかる。

こいつは俺を番と認めたんだと。

湧き上がるこの歓喜はなんだ。

最高だ。最高の気分だ。

俺はそっと彼女を床に立たせた。

そして改めて抱きしめる。

「エマ…」

「レオ…」

エマの頬を両手で包み込む。

そして、その可愛い唇を堪能した。



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