同じダンジョンも魔族と人間とでは見方が違う
「もっしもーし!」
我ながら上機嫌な挨拶をかました。
「もしもし?どうした?」
魔王も心なしか引いている。
「いや、久しぶりに金の匂いがな!」
「ほう?」
「ダンジョンが出たんだよ。」
「ほー!それはめでたい!
で、挑戦してくれるのか?」
「当然だろう、金のなる木じゃねーか。」
俺はニヤニヤが止まらない。
そう、ダンジョンは金のなる木そのもの。
魔族の巣であるダンジョンの中は魔物が数多生息している。
それも福袋をぶちまけたような節操のなさを感じる程に。
氷山に住む雪男と火山に住む火蜥蜴が一緒に現れた時は本当に驚いたものだ。
さらに奥に進めば進む程に魔物は強くなる傾向にある。
俺はかつてダンジョン内部でブラックドラゴンを見た。
ドラゴンがいるのも驚いたがドラゴンが生き生きと飛び戦えるだけのスペースが存在したことも驚きだ。
見た目は普通の洞窟なのに。
とにかくダンジョンは人間の常識では測れないものがある。
それが発生したとなればギルドをあげての大騒ぎになるのも当然だった。
しかーーーし!
危険なだけではないのだ、ダンジョンは。
まず、何故かダンジョン内部に発生する魔物は倒すとお金を落とす。
人間の国に発生したダンジョンではもれなくゴールド通貨をチャリンチャリンと…!
それも大物を倒せばそのぶん大金が入る仕組みだ!
さらに!ダンジョンの至る所に宝箱があり、中をあければ大判小判がザックザクなのだ!!
他にもマジックアイテムだったり、宝石だったり…!
これはもう、稼いでくださいと言っているようなものだろう!
そう!かつて魔王を倒したこの俺にかかればダンジョンなど余裕だ!
少なくても魔物など一撃必殺で仕留める自信がある。
つまり、俺にとってダンジョンとは金のつかみ取りに等しいのだ!!!
わーはっはっは!!
「いやはやめでたい!わしが死んでから四年じゃろ?ということはわしが生きていた時96歳だったのは…そうか、ベルーガのところの双子か!」
「…何言ってんだ?」
てか、めでたいってなんだ、めでたいって。
「いや、わしの知ってる子供が無事に成人を迎えたと知り感慨深くての!」
「成人?」
「もしや、わしが死んでから初めてなのではないか?
これはベルーガの奴も大盤振る舞いをするのだろな!」
「こらまて、話を勝手に進めるな!」
俺はストップをかける。
「一体なんの話をしている?」
「何ってダンジョンだろ?」
「だよな?めでたいとか成人とかなんの話だ?」
「…?ダンジョンといえば成人の儀だろ?」
「はあ!?まて!意味がわからん!」
「…そうか!これは魔族独自の儀式だから他の種族は知らぬことだったな!」
魔王は何やら納得するが、ちょいまち、ダンジョンってただの金のなる木じゃねーのか?
「そなたらにとってダンジョンとはなんじゃ?」
「金のなる木。」
「…その金がどこから来てるとか考えたことは?」
「少なくても俺はない。」
「じゃろーな。」
魔王が異世界でため息をつく。
「その金はダンジョンを作った魔族が自分の懐から出しているのじゃよ。」
「はっ!?なんで!?」
「それは成人の祝いじゃからじゃ」
「成人の祝い?」
「うむ。魔族の成人は100歳。その年になった者は他国に赴きダンジョンを作る。
そのダンジョンを踏破せんとやってきた者に勝負を挑み、打ち勝つというのが成人の儀の概要じゃ。
まあ、最近は形骸化しており実際にやる魔族は少なくなってしまったがの。」
「いやいや!何勝手に他国に遠征してんだよ。」
「別に不法入国はしておらん。ちゃんと旅券は発行しておる。
まあ、ダンジョンを作る許可はとっておらぬがな。」
「いや、取れよ」
「無茶言うな。魔界には他国の情報は滅多に入ってこない。
従って出国してから場所の選定をすることになり、事前に許可など取れぬわ。
それに、事前に許可をとるとヤラセになる。
あくまで力のある強い者に打ち勝つというのが目標なのじゃ。」
「いや、それにしたって巻き込まれた方はたまったもんじゃないぞ。」
ダンジョンが出来るということは魔族の襲来ということ。
いつダンジョンから魔族が出てきて数多の魔物を率いて街を滅ぼすかわからない。
そういう恐怖からギルドは大慌てで連絡の取れるAランク冒険者を探すのだ。
「だから迷惑料を払うじゃろ。」
「それがあの金か!」
おれは魔物を倒すと出てくる金を思い出す。
「迷惑料、場所代という意味もあるし、ダンジョンに挑戦するということは魔族の子供の成人を祝ってくれていると判断し、内祝いとして支払っている側面もある。」
「祝った覚えはないんだがな。」
「まあ、魔族の文化じゃ。人間には納得出来ぬ所も多々あるじゃろ。」
「と、いうか俺は今までいくつかのダンジョンを踏破してるんだが大丈夫なのか?」
「問題ない。
あくまで挑戦者に勝つのは目標であって必須ではない。」
「でも、踏破イコール魔族の死だよな。」
「死なぬよ?」
魔王は事もなげに言うが、いやいや俺殺したから!
「のう、ダンジョン内部の魔物の数を多いと思った事はないかの?」
「そんなの毎回おもってるわ」
「それはの、倒した魔物は一定時間後に復活しているからであって実際の魔物の数はそこまで多くはないのじゃよ。」
「なんだって!?」
俺は驚いた!
どうりで行きと同じペースで帰りも魔物を退治しないと地上に戻れないはずだ!
「下っ端の魔物が適時復活するのじゃ主役が復活しないとかありえないじゃろ。」
「まじか!?ってかそれ人間には適用されないのか!?」
「するわけなかろう。挑戦者は死んだら終わりじゃ。」
「不公平だ!」
「そんなこと言われても、挑戦者の命までは考えておらぬ儀式じゃし、詫び料は支払い済みじゃ。」
「なんでもかんでも金で解決しやがって…!」
「まあ、仕方あるまい。…それに危険は百も承知で踏破を目指すのじゃろ?」
「まあ、こっちは金欠だからな!
滅多にない金儲けの話に話乗らせて貰う。」
「まあ、頑張れ。」
「適当な応援だな。」
「そう言われてもわしを倒した勇者とようやく成人した子供じゃ結果は火を見るより明らかじゃ。」
「そういや、これって俺が勝ったら儀式失敗なのか?」
「いや?儀式はやることに意味があるからな。
たとえ挑戦者がダンジョンを踏破しても儀式は成功とみなされる。
まあ、勝てば上々じゃがの。」
「そういうものなのか…」
俺は天を仰いだ。
まさか存在が感知されれば大騒ぎのダンジョンが単なる成人式の一環てさ、誰が思うよ。
まあ、俺は金儲けが出来ればそれでいいんだけどね。
俺はまだ見ぬベルーガの双子に手を合わせる。
悪い、金だけがっつり貰って帰るわ!




